札幌市中央区のホテル(今年6月閉館)で約40年間、設備係として働いた男性がアスベスト(石綿)粉じん吸引による悪性中皮腫で死亡したのは職場の対策が不十分だったためだとして、遺族がホテル経営会社に約4100万円の損害賠償を求めた訴訟で札幌高裁(末永進裁判長)は29日、請求を棄却した1審・札幌地裁判決(07年3月)を取り消し、会社側に約3200万円の支払いを命じた。会社の安全配慮義務違反を認めた逆転勝訴判決。原告側によると、工場など石綿を日常的に扱う職種以外で雇用企業の責任を認めたのは全国で初めて。
末永裁判長は、ホテル経営会社が石綿を扱う労働者の被害予防を具体的に義務付けた72年改正の旧労働省令「特定化学物質等障害予防規則」(特化則)上の「使用者」や「事業者」に当たると判断。「法令上要求される措置を講じていたと認められない」と述べた。
訴えていたのは、02年4月に60歳で死亡した札幌市の一宮次男(つぎお)さんの妻美恵子さん(59)と長女貴子さん(29)。次男さんは1964年に札幌ロイヤルホテルを経営する「札幌国際観光」に入社し、ホテルの機械室やボイラー室で勤務。01年6月に悪性中皮腫と診断され11月、札幌中央労働基準監督署に石綿による労災と認定された。
1審判決は「潜伏期間を考慮すると85年ごろまでに吸引した石綿が原因」と因果関係を認めたが「一企業に安全配慮義務違反を認めることはできない」として請求を棄却した。【芳賀竜也】
2008年8月30日 毎日新聞
末永裁判長は、ホテル経営会社が石綿を扱う労働者の被害予防を具体的に義務付けた72年改正の旧労働省令「特定化学物質等障害予防規則」(特化則)上の「使用者」や「事業者」に当たると判断。「法令上要求される措置を講じていたと認められない」と述べた。
訴えていたのは、02年4月に60歳で死亡した札幌市の一宮次男(つぎお)さんの妻美恵子さん(59)と長女貴子さん(29)。次男さんは1964年に札幌ロイヤルホテルを経営する「札幌国際観光」に入社し、ホテルの機械室やボイラー室で勤務。01年6月に悪性中皮腫と診断され11月、札幌中央労働基準監督署に石綿による労災と認定された。
1審判決は「潜伏期間を考慮すると85年ごろまでに吸引した石綿が原因」と因果関係を認めたが「一企業に安全配慮義務違反を認めることはできない」として請求を棄却した。【芳賀竜也】
2008年8月30日 毎日新聞