発表によると、田中容疑者は今年4月、自宅近くの畑で、アスベスト(石綿)が含まれる建設廃材などの産業廃棄物約3・7トンを埋めた疑い。
県や県警によると、埋められた建設廃材は、田中容疑者が2007年5月、高崎市八幡町の「八幡八幡宮」の敷地内にある建物の解体工事を行った際、屋根裏から出たもので、田中容疑者は、解体作業中にアスベストが含まれていることに気づき、廃材をビニール袋に包み、自宅に運んだという。解体作業には複数の人がかかわっていたとみられている。県警の調べに対し、田中容疑者は「邪魔になって埋めてしまった」と容疑を認めているという。
不法投棄については、県廃棄物政策課が今年6月、情報を入手、7月に県警に通報。県警が同月、廃棄場所から廃棄物を掘り出すなどして捜査を進めていた。
県廃棄物政策課によると、アスベストは発がん性が指摘されている特別管理産業廃棄物で、通常は溶融して無害にしたり、コンクリートで固めるなどした後に耐水性の袋に二重に包んで埋め立て処理をしたりすることが義務づけられているほか、処理や運搬作業などは許可を得た業者しかできないという。
同課の調査によると、アスベストを含む産業廃棄物が見つかった場所からは、大気中のアスベスト濃度は法で定めた基準を下回り、人体などへの影響はないという。
今回のケースでは、県環境保全課が、県廃棄物政策課から、アスベストが含まれる建物の解体作業が行われたとの情報を得て、所管の高崎市にもそうした情報を伝えながら、同市に情報が正確に伝わっていなかったことがわかった。結果的に、高崎市は今回の逮捕でアスベストが含まれる建物の解体があったことを知ったといい、作業にかかわった人や近隣住民の健康被害への対応はこれからの状態となっている。
県環境保全課によると、アスベストが使われていると思われる建物の解体では、作業者に大気汚染防止法に基づく届け出や環境測定などが義務づけられている。この事務を所管するのは、通常は県だが、高崎市の場合は、特例市であることから、その事務を所管している。同課は、高崎市から、大気汚染防止法に基づく昨年度の届け出分について情報を得ていた。一方で、県廃棄物政策課から、アスベストが使われていると思われる建物の解体が昨年5月、高崎市内で行われたとの情報が寄せられ、矛盾することから、担当者が6月に電話で「確認をしてほしい」と伝えたという。その後、同市からは連絡はなく、再度の確認もしないままそのままにしていたという。
県環境保全課の担当者は「だれに伝えたかは覚えていないが、伝えたのは事実。結果的に情報が伝わっておらず、申し訳ない」としている。これに対し、同市環境政策課の担当者は、「課長を含め、だれも聞いていない。初めて知った」と話している。
県は、今後の健康被害などについて、所管する高崎市に調べてもらうというが、高崎市環境政策課は、「業者への聞き取りが可能かどうかも含め、どんな調査をするかどうか検討中」としている。
一方、八幡八幡宮周辺の住民は、アスベストが使われた建物の解体作業が行われていたことに驚き、不安の声を漏らした。
近くの50代の女性は、「去年の5月ごろに古い結婚式場を取り壊していたのは知っているが、アスベストが出たとは全く知らなかった。もし飛んできていたとしたら怖い。県や市から、アスベストに関する通知はなかった」と話し、近くの主婦(68)は、「近所でアスベストのことを知っている人は誰もいないと思う。県や市が知ってて黙っていたとしたら、住民の健康にとってひどいことをしたと思う」と話していた。
八幡八幡宮の神主は、「工事の際には、アスベストについて全く知らなかった」と語った。
2008年9月30日【読売新聞】