貧しい家に生まれ バイトでほとんど大学の講義に出なかったけれど、どうにか卒業できた昭和の時代。脱サラして、会社を立ち上げ、高度成長の波にのり、バブルを経験したが、なんとか、生き抜いて、早めにリタイヤ―して、海外旅行に出かけられる境遇になったのは 本当に幸運の一言だ。
葉山に小さな家を建て、20年がすぎた。
昨年から どこで調べたか M&Aのレターが舞い込むようになった。
長男が社長を務める会社は小規模ではあるが、業績はまずまずで、ボーナスも
公務員には負けていない。レターは会社にはよこさないで、親元にくる。
従業員の動揺を勘案してのことだろう。神経が細かい。
この話、資本提携と聞こえはよいが、時期を見て社長の座は追っ払われる。
建設機械の分野は借金がなければ倒産の心配はない。
機械をゼネコンにレンタルして、雨が降ろうが 雪で機械が止まろうが、
貸し料はいただくという、至極単純な業態だ。
ただここ数年 土木やゼネコンが余剰金の使い道として、レンタル会社を傘下におさめるケースが2つあった。
このM&A会社はそれをモデルにして、当社にやってきたのだろう。
勧誘の文面を見ると 資金的な面からの誘いではなく、後継者難を突いている。
本人は会社を売るのであれば、同業他社に売るという。
従業員ごと引き取ってもらい、自分は身を引く。
高校時代からやっているギターを仲間と弾ける店を買って、楽しみたい ようだ。
大学にはゆかず、私の会社で人1倍苦労を重ねた。
今 やっとその苦労が報われる時が来たのかもしれない、
自分は旅が好きで、暇と金があれば、毎年 アチコチと旅をして、楽しんできた。
人生 最後はどのくらい楽しく 好きなことをしてきたか、思い出がどのくらいできたかで、決まるように思える。
アテネの哲学者ソクラテスがいうではないか。
人の評判など、気にしなくてよい。と。