投資家の目線

投資家の目線831(三菱電機の不正検査)

 三菱電機で鉄道車両の空調設備やブレーキ用などの空気圧縮機で不正検査が発覚し、29日の株主総会で取締役に再任されたばかりの杉山社長は引責辞任するという(『三菱電機、杉山社長が引責辞任へ 検査「組織的不正」』 2021/7/3 日本経済新聞WEB版)。架空のデータを自動生成する専用プログラムまで作っていたというから(「三菱電機、プログラムで架空データ生成 不適切検査問題」 2021/7/1 日本経済新聞WEB版)、ミスなどというものではない。「不正検査は6月中旬に社内調査で発覚。三菱電機は経済産業省に25日に報告するなど、関係省庁や顧客への説明を進めていた。」(『三菱電機の不適切検査、京阪電鉄「具体的な説明ない」』 2021/6/30 日本経済新聞WEB版)と、29日の株主総会前に不正は分かっていた。日産自動車、東芝と企業経営に介入し、失態が続いている経済産業省は三菱電機にどういう指導をしたのだろう?同社の「第150回定時株主総会招集ご通知」には、『「倫理・遵法」については、近年発生した労務、情報セキュリティー、製品・サービス品質の問題の発生を厳粛に受け止め、再発防止を経営の最優先課題として各種取り組みを進めています。(中略)品質不適切行為に対しては、再発防止策として、抜本的な意識・体質改善に向けた教育の強化と関連法規・契約仕様の確実な遵守に向けた品質管理体制の強化を図ってまいります。』とあるが、その直後に不正が公表されるとは株主総会で批判が出るのを恐れたのだろうか?

 社長の説明と異なり取締役会は開かれなかったが、『同社は事実関係について「取締役には個別に説明した上で、執行役の判断で公表を控えた」(中略)総会での公表を控えた理由については「情報不足の中で説明することは望ましくないと判断した」ためとしている』(「三菱電機、不正公表見送りの経緯訂正 取締役会開かず」 2021/7/4 日本経済新聞WEB版)。しかし、6月14日には空調装置に検査不正があることを認識し、22日には1次関係者ヒアリングを開始、株主総会前日の28日には第2次ヒアリングに入っている(「当社 鉄道車両用空調装置等の不適切検査に関する件」 2021/7/2 三菱電機株式会社)。さらに、第2次ヒアリング開始前の25日には経済産業省に報告している。これで、本当に情報不足だったと言えるのだろうか?

 2000年の雪印乳業食中毒事件が発生したのも株主総会の頃だった。この事件は大阪市保健所への最初の届け出が株主総会前日の27日、保健所の立ち入り調査が翌28日だったので(『「雪印低脂肪乳」等による黄色ブドウ球菌食中毒の経緯』 厚生省生活衛生局 平成12年12月25日)、株主総会で公表されなかったことには同情の余地があるが、今回の三菱電機の事件は公表する時間はあったはずだ。また会社側の説明によると、取締役らは株主総会時に検査不正があったことを知りながら、株主総会では黙秘していたことになる。「社外弁護士を委員長とする調査委員会を設け、監査委員会と連携しながら、社外視点を入れた実態解明を行うとともに、」(「当社の品質風土改革に向けた取り組みについて」 2021/7/2 三菱電機株式会社)とされているが、株主総会で再任された取締役が関与して、真相解明がうまくいくのだろうか?

2021/7/25 追記
「NY地下鉄、三菱電機に不正検査で情報要求 2600両使用」(2021/7/8 日本経済新聞WEB版)←神戸製鋼所と同じパターン。同社は不正の後、米国で車材料の生産能力を倍増させる投資を行った。三菱電機も米国現地生産を増やせば、事件も沈静化するのでは?

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