投資家の目線

投資家の目線832(スルガ銀行の投資用アパート・マンション融資)

 先月29日のスルガ銀行の株主総会で、『複数の株主が「(アパート・マンション融資で)不正融資による被害が出ている」と追及。(中略)アパート・マンション融資は「一棟収益ローン」と呼ばれ、今年3月末の残高は1兆960億円で全融資の47%を占める』(「スルガ銀の不正融資問題、投資マンションでも火種」 2021/6/29 日本経済新聞WEB版)という。

 2017年に発覚したシェアハウス問題では、「不動産業者は家賃明細表(レントロール)を偽造して物件の収益性を高く見せ、物件を相場より高額で販売。スルガ銀行に対しても、融資の承認を得るためにオーナーの銀行預金残高を水増し申請していた。スルガ銀もこうした業者の不正を知りつつ、オーナー1258人に対して総額約2035億円ものシェアハウス向け融資を行った」(『スルガ銀行、「かぼちゃ」の次は「アパマン」の試練 シェアハウス融資の“徳政令"を経て次なる難題 金融業界』 2021/6/2 東洋経済オンライン)。スルガ銀行株式会社監査役責任調査委員会が提出した「調査報告書 (公表版) 2018年11月14日」にも、通帳その他の自己資金確認資料・収入関係資料やレントロール等の資料、入居状況、売買契約書について改ざん・偽装(二重契約、減額覚書等)があり、シェアハウス融資に関わるパーソナル・バンクに所属する行員の多く、所属長、執行役員が改ざん・偽装を黙認、一部の者は自ら改ざん・偽装に積極的に関与していたと書かれている(p51~p53)。

 リーマンショックの後、ウェルズ・ファーゴに救済買収されたワコビアに関して、「同行の基本的な問題は、低品質の住宅ローンを大量に保有していたことだ」(「危機と決断 前FRB議長 ベン・バーナンキ回顧録 下」 ベン・バーナンキ著 小此木潔訳 角川書店p75)と書かれている。海外にはこのような前例があったにもかかわらず、スルガ銀行は低品質の住宅ローンを自ら作り出していたことになる。

 改ざん・偽装を黙認あるいはそれに積極的に関与して融資業務を行っているのなら、顧客の最善の利益の追求し、従業員に対する適切な動機づけの枠組み等の整備を求める「顧客本位の業務運営に関する原則」(2017年3月30日公表、金融庁)に違反していたことになる。スルガ銀行は静岡県沼津市に本店がある。同行の経営問題は地元の経済や社会に大きな影響を与えるであろう。一方、シェアハウス融資を例にとると、99%以上が首都圏の10店舗に集中していた(「調査報告書 (公表版) 2018年11月14日」 p23)。同行の地元ではない、よその土地でやりたい放題やっていたことになる。事件の被害者がスルガ銀行の地元社会や経済の影響を受けない場合、追及を徹底的に行うだろう。
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