投資家の目線

投資家の目線949(電気自動車について)

 米国でハイブリッド車が売れている(”America’s High EV Costs Are Driving Buyers to Hybrids” 2023/10/4 Bloomberg)。一方、電気自動車(EV)は販売が落ちている(『フォード、人気車種「F150」のEVモデルの販売が46%減-7~9月』 2023/10/5 Bloomberg)。フォードはEVが経営の足を引っ張っている。『4-6月期(第2四半期)の「モデルe」事業は、「F-150ライトニング」と「マスタング・マッハE」の1台当たり10ドルの売り上げにつき6ドル近い赤字だった。』(「【コラム】米ビッグ3、賃上げよりEVが足かせに」 2023/10/2 ダウ・ジョーンズ配信)。フォード社は電池工場の建設も一時停止した(「フォード、米電池工場の建設中断 中国CATLが関与」 2023/9/26 日本経済新聞電子版)。

 

 テスラがEVの価格を値下げするのも売れていないからだと思われる(『テスラ、「モデル3」と「モデルY」値下げ-販売ペースの加速目指す』 2023/10/7 Bloomberg)。中国でも大量のEVが廃棄車両になっている(「まるでEVの墓場、中国都市部に大量の廃棄車両-急成長の負の遺産」 2023/8/22 Bloomberg)。欧州でEVの販売台数が増えているというニュースもあるが、「バーンスタインのアナリストらによると、バッテリー電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHV)の8月の世界販売台数は120万台に達し、前年同月比36%増、前月比では6%増となった。」(「【市場の声】欧州の電気自動車販売台数、8月は前年比40%増に」 2023/10/3 ダウ・ジョーンズ配信)とある通り、それはプラグインハイブリッド車を含んだものである。

 

 EVには、充電施設が普及していないという弱点がある。1つの都市圏内だけで走るならそれほど問題ないかもしれないが、施設が普及していない地方を走る場合には、それがネックになる。

 

 弱点にはバッテリー火災の問題もある。バッテリー火災は消化が難しい。バッテリー火災の対応に関する勧告は、「ホンダ、現代、三菱自動車、ポルシェ、フォルクスワーゲン(VW)、ボルボのほか、大型商用車メーカーのプロテラと、バスメーカーのバンホールの8社。同勧告は2021年1月にEVメーカー22社に提出されており、現在ゼネラルモーターズ(GM)、フォード、トヨタ、テスラなどを含む12社でも受け入れの検討を進めている。」(自動車メーカー8社、EVバッテリー火災への対応で米政府独立機関勧告を受け入れ(米国) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース - ジェトロ 2022/6/9)とされており、バッテリー火災はEVに共通の問題と言える。先日のオランダ沖で火災が発生した自動車運搬船には約500台のEVが搭載されていたという(「火災発生の自動車運搬船、電気自動車を約500台積載-消火活動に影響も」 2023/7/29Bloomberg)。電動二輪車でも発火事故は起きている(ワールドウオッチ:電動二輪の発火事故相次ぐ、成長市場に求められる安全性=久保亮子 | 週刊エコノミスト Online 2022/4/25)。

 

 主要部品を一体成型するメガキャストの問題もある。一体成型は製造工程を簡素化するため製造コストの削減効果は期待できる。しかし、故障や事故で修理が必要なときは一体成型部分が総取り換えとなり、メンテナンスコストは上昇するだろう。

 

 これらのことから、現在のEVは実用性に欠ける。少なくとも上記の問題が解決されない限り、EVの普及は難しいだろう。英国政府はガソリン車禁止の延期を決めた(『「脱炭素の旗手」英政権足踏み ガソリン車禁止を延期』 2023/10/5 日本経済新聞電子版)。「脱炭素社会」は曲がり角にある。

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