ドイツのショルツ首相が中華人民共和国を訪問した。「訪中には自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)やビオンテックなど十数社の幹部らが同行した。」(『中国首相、ドイツ企業と交流 投資歓迎「公平」強調』 2022/11/5 日本経済新聞WEB版)という。エネルギーが不足しては生産設備を動かすことができない。ドイツ企業は、エネルギー不足のドイツ国内からエネルギー供給に不安のない中国に製造拠点を移すのではないだろうか?
ドイツのIfo経済研究所は「石油・ガス高騰により、2021~23年に実質所得がほぼ1100億ユーロ(約16兆1000億円)失われると予想。これは年間の経済生産の3.0%相当だとした」(「ドイツ経済、石油・ガス高騰が打撃に 3年で1100億ユーロ」 2022/11/9 ダウ・ジョーンズ配信)。Ifoの予測責任者、ティモ・ウォルマーシャウザー氏は、「足元の実質所得の落ち込みが数年間は続くと予想。サプライヤーとしてのロシアを失ったためエネルギー価格は長期にわたり高止まりしそうだが、ドイツは一夜にして輸入依存を解消することはできないと説明した」(同記事)。フランスのルノーが中国の吉利汽車と合弁企業を設立するのも(「ルノー、中国・吉利とエンジンの新会社 日産参加せず」 2022/11/8 日本経済新聞WEB版)、欧州のエネルギー不足に起因する製造拠点の移転に対応するものではないだろうか?
カタールで開催されるサッカーワールドカップの大会施設建設で外国人労働者に非人道的な扱いがなされたと欧州で抗議が広がっている(「カタールのサッカーワールドカップ、欧州で抗議広がる 人権侵害懸念」 2022/10/25 日本経済新聞WEB版)。建設すでに終わっているのに、非人道的な扱いが大会開催直前の今頃分かったのだろうか?欧州の思い通りに天然ガスを売ってくれないカタールに対する嫌がらせにしか見えない。
エネルギー不足の欧州には、ウクライナなどから大勢の難民が押し寄せている。この動きは定員いっぱいの救命ボートに大量の漂流者が乗り込もうとしている光景のように見える。定員を大幅に上回る人数が乗れば、ボートは沈没する。大勢の難民は訪れていないが、石油、天然ガス、濃縮ウランの生産で大きなシェアを握るロシアと対立する日本は、エネルギー供給に難がある点で欧州の状況は他人ごとではない。「是の故に軍に輜重なければ則ち亡び、糧食なければ則ち亡び、委積なければ則ち滅ぶ」(「こういうわけで、軍隊に輜重がなければ亡び、食糧がなければ亡び、貯えがなければ亡ぶ」)(「孫子」 町田三郎訳注 中公文庫 p47、48)というが、物資の輸送にも食糧生産にもエネルギーが必要だ。
米国の選挙結果はまだどうなるかわからない。裁判所が健康上の理由などでどうしても投票所に行けない人以外の郵便投票を認めない判決を出し、多くの郵便投票が無効になる可能性が出てきたためだ。一部の投票所では、本人確認をしないだけでなく、投票用紙がなくなったため、投票のために長時間並んでいた有権者が投票できなかったところもあるという。原則である投票所に行って投票しようとした人の票が結果に反映されずに、例外措置である郵便投票の票の方が反映されることなど有権者は許さない。マスコミはこんな状況を無視しても、地域社会を中心に口コミで広範囲に伝わる。地域社会を中心に当局を締め上げにかかるだろう。当局が話し合いに応じなければ裁判に訴えるか、より悪いケースとしては武器を手に「civil war」が発生することも考えられる。