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徒然ウォッチング

エリアマネージャー日記。Q.O.L.がテーマです。

おさがわせウイルス

2007-07-12 | 自然科学
うーん、昨日今日の新聞は参院選と台風がトップニュースですね。

…そんな中、目に留まったのは

「東京工業大学の岡田典弘教授らは、ネズミに感染する天然痘ウイルスの一種がヘビに感染していたことを発見した。アフリカに生息するネズミに感染した天然痘ウイルスのDNA(デオキシリボ核酸)を解析。同じ地域に生息する毒ヘビのDNA配列が紛れ込んでいることを突き止めた。」

ていうニュース。

ありゃー。哺乳類のウイルスが爬虫類にもですか。
やっぱりこの世を制するのはウイルスなのかもしれないなぁ。
所詮免疫なんてウイルスの種類や変化を考えると、いくつついても焼け石に水だもんね。

免疫システムにはよく知られているように、自然免疫と獲得免疫のふたつがあって、自然免疫は持って生まれた免疫、獲得免疫は生まれてきてからマクロファージとヘルパーT細胞の、ウイルスとの戦いの記憶を戦術メソッドとして蓄積した免疫のこと。母乳で育った赤ちゃんはお母さんの体にある「祖先のウイルスとの戦争履歴」を教えてもらっているのだよね。私が今までウイルス性疾患で倒れることが殆どなかったのは、電車に乗らない、人ごみが苦手、というライフスタイルがゆえ…だけではなくて、お母さんから譲り受けた抗体のおかげかもしれない。

ちなみにこのウイルスとの戦歴を記憶しているのはその名も「メモリーB細胞」っていうんだけど、実際に戦地(細胞膜の表面)で戦うのは、キラーT細胞なのね。そしてキラーT細胞を非常事態に際してターボな増殖をさせるのがインターロイキン2っていうタンパク。

私たちが一般的に「免疫がある」と表現する状態は、この「敵(ウイルス)を世代にわたって記憶している能力」と、「出くわした敵の顔を記憶する能力」そして「T細胞の、ウイルスの殺傷能力」と、あと罹っちゃったあとに重篤になるか軽微ですむかの分かれ道、「インターロイキン2がキラーT細胞をどれくらいの速さで増殖できるか」っていう能力、この四つの能力を総合して「免疫力」っていうわけだけど、とりわけ最近世の中を騒がしている変貌タイプのウイルスへの対抗力は、最後の「キラーT細胞の生成」の能力に左右されるみたいよ。 …なぜならA型インフルエンザのように変化しやすい厄介系のハイパーウイルスは、自分自身をちょこちょこ変化させていて、「敵の顔を記憶」してても殆ど役に立たないのよね。正確には抗原シフト、抗原ドリフトって言うのだけど、ドリフトしたウイルスはたとえて言えば美容整形を受けた程度の変わりようなので「怪しいぞこいつ」くらいのことはB細胞が気づいたりする場合もあるんだけど、抗原シフトした細胞は、そのご面相をシャッフルしちゃってるので、見た目まるきり新参者でさっぱりわからない。しっかり細胞壁を突き破られてから「わ!ウイルスだ!」って免疫システム全員で大慌てする場合もある。最近のハイパーウイルスはこのタイプがやたらと多いそうですよ~。

HIVのように宿主に完全侵入してからも変化を続ける厄介なのもいますしね。 そう考えると鳥のウイルスがヒトに、ネズミのが爬虫類に寄生しても不思議ではないですよね。 タミフルやリレンザといった、Aインフルエンザウイルス表面のノイラミニダーゼという酵素を阻害するお薬は、インフルエンザの発症が認識しやすいのと、症例が多くてビジネスになるっていう背景が市場の開発促進を助けたかもしれないけど、「罹患初期」を特定しにくいマイナー系ウイルス疾患には酵素阻害薬の出現を期待しても…うーん、難しいかもですね。最初のニュースの天然痘なんて、ヒトがかかるタイプのは撲滅されたことになっているけど、そのうちまたゾンビのようにやってくるかも!



…で、またまた関係ない写真館。写真右は、左のお母さん猫から免疫ミルクを貰っている、生後二週間のにゃんこちゃんたち。先週、我が家のPSの扉の横で、青猫BJがフガフガ言うので「にゃんだ?」とあけてみると、なんと四匹の子猫が!

殺気を感じて脇を見ると、お母さん猫が御覧の通りのすごい形相で(表情まではわかんないか…^^;)睨んでました。はひー。
こ…この顛末は、また追って。

メタンハイドレート CH4・5.75 H2O

2006-02-20 | 自然科学
メタンハイドレート。
この物質は、10年ほど前から、エネルギー資源として注目されていました。
私も何度かインターネットや新聞紙上で目にした事のある言葉です。
この物質の資源利用としての本格化が昨日新聞記事になっていました。

化学式から判断できるように、メタンハイドレートは、メタンガス分子と水分子から構成されていて、わずか1㎥のメタンハイドレートの分解で、水:0.8㎥に対しメタンガス:172㎥(大気圧下摂氏0℃として)のメタンガスを得ることが出来るといわれています。

単純にメタンガス分子と水分子から構成されているため、燃焼しても硫黄酸化物等の有害物質はほとんど発生しませんし、熱量に比してのコンパクトさから移動の容易さが注目されているんです。燃え方はこんなかんじ…氷だから冷たいのね。不思議♪

この写真はアメリカの中学生向け科学サイトespereのページから。

…でも、良いことばかりではありません。

メタンハイドレートはそもそもメタンガスの加圧と冷却によって生成されたもので、一定の温度と圧力の範囲なら安定するものの、そのまま気圧を低下させたり暖めたりすると融解します。これが直接気温条件が満たされない大気中に放出されたら、酸素との反応で大量の二酸化炭素が発生します。
また、「燃える氷」の別名を持ち、比較的小さな固体として地中にばらばらに存在するため、採取が困難なことと、採取できたとしても地中奥深く加圧の状態でこそこの態様を保っているため、採取過程において圧力や気温などの環境が変ると酸素との反応により危険な状態にもなりえます。
また、地質上脆い地域に存在するため、採取の後は何か補填剤を注入しないと深海地滑りやマントル対流の変化などが起こる可能性が高く、現在はゲル状CO2などの地中への代替注入が考えられているそうです。

メタンハイドレートは海底大陸棚のふもとのさらに深層部分(大陸棚プレートのマントル対流の沈み領域)にその層が多数確認されています。シベリア、アラスカ、ノルウェー近海…。日本では南海トラフや四国沖に埋蔵されているそうですが、氷点下以下でのみこの態様を保つこの物質は、今のところ北半球の採掘可能な場所という意味では、日本のこれらが南限のようです。融点や存在地域、構造式についてはこちらのサイトがとても詳しいので興味のある方は是非ご覧下さい。(フランス語なのでワタシも探すの苦労しました…フランス語にあまり覚えのない方は、翻訳ツールを駆使してね!^^)v内容濃し!)

日本近海での採取の研究・実験は新エネルギーとして旧通産省の時代から積極的に行われてきて、経済産業省資源エネルギー庁が今「自国で掘削できる有望な新エネルギー」として、実用化に力を入れています。愛知万博でも披露されたようですね。ちょっと楽観な記事ですけど、asahi.comの記事と写真もどうぞ。

…けれども、地震国に住む身としては、その足元の地中を掘削することって、なんだかあまり気持ちのいいものに聞こえないんですけどねぇ…どう思う?

鯨の死因

2005-10-21 | 自然科学
朝日新聞は昨20日14時、 天然資源保護協会サンタモニカ事務所が19日、海軍にソナーの使用制限を求める訴えをロサンゼルス連邦地裁に起こしたと報じました。

記事を見ると「訴状によると、海軍が使用する中周波のソナーが水面下では大音響として伝わり、鯨やイルカが内部器官に変調をきたして浜辺に打ち上げられるなど、死亡やけがの原因になっていると主張している」、と記載しています。

そしてそれを「危険なレベルの騒音公害」としているのですが、事は「騒音公害」では括れない、海洋生物全般の死活に掛かっていることを、この記事を書いた方は把握していません。死因は音そのものではないのです。

米海軍が使用している何種類かのうちのアクティブソナーのうち中周波アクティブソナーは3kHz-5kHz、また、比較的新しい低周波アクティブソナーは100Hz-500Hzの音を発しますが、このうち特に中周波では鯨の聴覚感度のよい周波数帯域に合致します。アクティブソナーはかなり遠くまで音波の減衰がなくしかも程度が損なわれず到達するので、その反射エコーを拾って物体や生物などの存在を確認するのですが、このしくみは鯨や亀など海洋生物が周辺状況を感知するシステムそのもの。

こうした海の生き物にとってこの周波が単に騒音であるということが直接の死の引き金なのではありません。この鯨たちにとって日常では考えられないレベルの周波数環境の発生が、鯨を緊急・逼迫といった極限の精神状態に陥れ、ひいては通常ありえない程の速さでの水面への急浮上を誘引すること(急減圧)、が、直接の死因なのではといわれています。周波を手がかりに日常生活の殆どの判断を行う鯨たち海洋生物にとっては、それはどれほどの恐怖的な音に聞こえるのでしょうか。

固体が急浮上しますと、当然内臓器官への急減圧ということが起こり、特に内耳の破壊、ウキブクロの破裂が見られるとの事。(海洋生物のウキブクロは浮力調節だけでなく受音器官でもあるのです…)また過去の報告では、血管中に大量の気泡が生じていることも報告されています。(この気泡がウキブクロからの逆流であるのか、それとも減圧そのものが引き起こすものかは調査の段階のようです)

鯨ばかりが取りざたされていますが、小さな海洋生物にこうした周波数を浴びたことによる死がそれほど確認されていない理由は、おそらく海表への浮上スピードの問題で、(早く上がろうとしても小さい身体では限度がありますから…)エコーから受ける精神的ダメージは同様のものであろうとも一部で言われています。

困ったことに、実は米海軍は2003年にも同様の提訴を受けており、そのときは和解。軍はアジア東部(げ・日本の近く?)でのみソナーを使用し、その他では使用しないことになったというのですけど、今回の訴えはそれが守られていないということで二度目になるようです。

…そういえば日本近海で、最近何頭かの鯨がぐったりとした姿で打ち上げられたというニュースが何カ月おきくらいのペースで報じられているのをみますが、これって、…そうなのかしら。(そのたびにニュースでは「はぐれた」とか「病気」とかって報じているけど、遺体の撤去でなんとか町の費用負担が大変とか、久々の鯨肉を食べたとか報道はそういう扱い方しかしてない気がする…。関係省庁は減圧の兆候とか、司法解剖になぜ乗り出さないのだ?ソナーのことは知っているのでしょう?)

鯨に感じられる音の大きさは(音というのは必ずしも適切な表現ではないのだけど)、デシベル(dB)で表されますよね。鯨にとっての日常的雑音レベル100dBにくらべ、中周波ソナーが発する180dBという値は、10の4乗倍…つまり1万倍大きいということだと、NPO法人、水産総合研究センター水産工学研究所は発表しています。全く鯨にしてみれば「なにすんねん」といったところでしょう。

こちらは2003年10月のUSフロントラインの記事。ちょっと古くて申し訳ないけど、過去の文献あたっていて最初の訴訟のきっかけになった記事をみつけましたので、ちとリンク。

水産庁さん、こんど鯨が日本近海で打ち上げられたら、ちゃんと解剖して減圧の有無をたしかめてくださいね…(米軍にいちゃもん付けたくないのはわかるけど…)
写真は…悲惨でごめんなさい。打ち上げられた鯨…



大陸プレートのせめぎ合う場所

2005-10-16 | 自然科学

被災から一週間。パキスタン北部は漸く支援物資の陸路も一部開通し、外部者の救助活動も可能になりつつあるようです。
日本からも自衛隊の第一陣が到着し、米国もカトリーナでの動きの鈍さの轍を踏まじと、比較的早い時期に5千万ドル支援(日本は2千万ドル…(約23億円))と救助隊員や緊急支援ヘリの派遣を決めました。そして、懸念されていたインドも支援活動に乗り出し、世界の人々を安堵させているようですが、殆ど人的救援が出来なかった一週間のことを思うと…複雑です。この時期でも助かっている人がいるというのに、もう少し早ければね…。

支援活動での交流をきっかけに、印パの関係改善のきっかけになりそうであることがせめてもの救いですが、とはいえカシミール停戦ラインをまたいだインド側からの医療救援部隊の投入提案には、パキスタンが合同救援活動を拒否するなど、しこりはまだ残っているようです。…いくら被災といってもインドの軍が停戦ラインをまたいで活動するのは沽券に関わるという主張?…「折れ合うチャンス」はこのまま過ぎていくのでしょうか…。気になるところ。)

さて、地震についてリスキーな場所というのは世界中どこにでもあるものですが、この地域での地震も決して予想外の場所ではありませんでした。
2001年1月にはインド西部大地震(文部科学省のページから)がここのすぐ南側の地域で起き、インドのグジャラート州ではマグニチュード7.8の大震災となりました。死者は17,000人を超え,負傷者もその10倍といわれたこの地震も内陸型地震であり、今回のパキスタン北部地震と同様に、プレートのずれが原因です。

そのプレートとはいずれもユーラシアプレート、インド・オーストラリアプレート、アラビアプレートの三つ。インド西部からパキスタン東北部にかけては、これらのプレートがせめぎあう場所で、決して地震が珍しい場所ではないのです。先日の仙台沖地震とおなじく、(宮城県沖地震はM7.2。ユーラシアプレート、北米プレート、フィリピンプレートのせめぎあう場所でした。)いくつかのプレートが地殻変動により衝突して起こるタイプの地震ですが、プレートの境界って、本当に何が起こってもおかしくないわけですね。
海洋プレートの境目あたりはいい漁場になっていることが多いので、近くの岸には…昔から人は住んでしまいますし、また内陸部ではプレートのずれにより起伏が出来やすいので、河川の形成につながり、やはり人が居住しやすい場所になってしまうわけで、こうした地域は人が生活しやすかったり生活の糧を求めやすい場所でもあります…。住む場所もハイリスクはハイリターンなりといったところでしょうか・・・。

ところで…たくさん書きたいことがあるのに、相変わらず平日は時間が全く無くてだめですねぇ…。予定では再来週あたりは少し時間が出来そうな感じなんだけど。…てなわけで、しばらく猫に更新頼んじゃいました。キャベツのみじん切りサラダと交換に。





情報不足

2005-10-09 | 自然科学
カシミール地方の地震は、インドとパキスタンの領有権紛争の火種となっている地域で発生しました。ジャムー・カシミール州は国際法上ではインドの州ですが、パキスタンも領有を主張しているばかりでなく宗教的にもイスラム教徒が多いなどの理由でこの47年間ずっと紛争が続いています。


両国の軍が停戦ライン近辺を管理しているので、今回のような自然災害が起こった場合、本来なら軍が災害対策として動くことは距離的には非常に容易なのですが、このエリアに関してはそんな訳でスムースにとはいっていないようです。もちろん自国側の被害についてはパキスタン軍も真っ先に行動をとる事が出来たことでしょうけれど、軍の被害も甚大だったようです。
(ロイター通信によると9日時点でパキスタン軍兵士215人が死亡、PTI通信によるとインド側でも陸軍兵士、国境警備隊員計約40人が死亡とのこと)
けれども今年二月、この地域のインド側で起こった雪崩に対し、パキスタン側が災害救助の申し入れを政府レベルで行わなかったかったこともあり(この雪崩での死者は300人程)、今回の災害に対しインドがどう出るかに世界中がやきもきしています。答えはほどなく出るとは思いますが、関係改善のきっかけにもなることなので、是非インド側の高配が期待されるところです。

さて、災害対策どころか、軍の管理地域ということもあり、プレス関係者さえもエリアに入ることを制限されているため、死者2万人ともそれ以上とも言われているにもかかわらず、その映像が殆ど入手できません。映像メディアに慣れっこになり、9.11やカトリーナ被害はつぶさに茶の間で目の当たりにしてきたわたしたちですが、カシミール地方の災害状況はその甚大な被害実態に比して、私たちの日常の中で現実感が希薄になっている気がします。もちろん映像がなければニュースも作りにくいわけですが、そこをマスコミ各社様には是非工夫し、頑張って欲しいものです。

道路が寸断され物資や薬品、人が往来できなくなっている上、空路は軍の管轄で軍関係のヘリの輸送力には限界が指摘されていますが、この映像メディアという手段に頼ることなく、また踊らされず、国際協力がどのような形で出来るのかを個人レベルで認識する努力をしていたいと強く思う次第…。

殆ど具体的な情報がまだないので正確ではありませんが、かの地の地震が起きた具体的な場所もよくわからないということもあると思いましたので、一応地図を加工…。大体情報を総合すると赤丸の地域が被災地のようです。上記理由で国境が明確ではないので、中国新聞(広島)から、カシミールの紛争地区の地図も付けました。

写真右にくっついている小さい地図は中国新聞(広島)から引用。カシミール紛争エリア。