結び目理論の前提である「切らず貼らずの同相」から一歩踏み出し、局所的に切断・再貼付を許すことで、
・結び目や3次元多様体を
・三角形(2単体)や四面体(3単体)の「かけら」に分割し、
・それらを貼り合わせ直す──
・三角形(2単体)や四面体(3単体)の「かけら」に分割し、
・それらを貼り合わせ直す──
という可算的で離散的な枠組みが得られます。これが可除去(切断・貼付)操作を許した一般化結び目理論の基盤です。
1. SIMPLICIAL COMPLEX(単体複体)とは
- 2次元:頂点(0単体)、辺(1単体)、三角形(2単体)で構成される複体
- 3次元:さらに四面体(3単体)を加えて、多様体を三角形や四面体の集合で近似
- 各単体は「標準単体(unit simplex)」と呼ばれ、これを“単位位相”とみなせる
この言い方なら「三角形の単位位相」は2-単体そのものを指します。
2. Pachner(バイステラル)移動による全般化同値
三角形・四面体を切り貼りする操作として、PL多様体の間を結ぶ「Pachner移動」があります。代表的なもの:
- 2-3移動:2つの四面体を共有面で貼り合わせ→3つの四面体に張り替え
- 1-4移動:1つの四面体を細分→4つの四面体に分割
- 逆操作(3-2・4-1移動)も含む
これらを有限回組み合わせれば、同じPL多様体の任意の二つの三角・四面体分割は遷移可能です。
→「切らず貼らずの同相」を離れ、切断・再貼付を許した同値の全体像を与えます。
→「切らず貼らずの同相」を離れ、切断・再貼付を許した同値の全体像を与えます。
このような操作は、正四面体構造を大きく変形させてしまいます。正四面体の変形を減らして安定した張り合わせをするには、移動をなくす必要があります。
3. 三角形単位位相の定義法
- 3次元空間(や結び目補空間)を三角形(面)と四面体(体積)の複体で近似
- 各三角形には頂点ラベルや向き、重み(群表現など)を割り当て
- Pachner移動に対応させて単体の切断・再貼付を行い、位相不変量を保持/更新
このとき「三角形=単位位相」は
- 2次元フェーズの最小セル(2-単体)
- トポロジカル場理論の状態素片(state‐sumモデルでの面)
として明確に機能します。
4. 応用例:Turaev–Viro 型モデル
- 三角形に量子群の表現ラベルを載せ、
- 四面体には6j記号(量子6jシンボル)を割り当てて
- Pachner移動不変な重み付き和を取る
→3次元多様体不変量を得るTuraev–Viroモデルはまさに三角形を「単位位相」とみなした実例です。
まとめ
- 「同相(ambient isotopy)」前提を外し、可除去操作を許した一般化結び目理論は
「単体複体+Pachner移動」の枠組みで構築できる。 - その最小構成要素が三角形(2-単体)であり、これを「単位位相」と定義できる。
- 量子トポロジカル場理論(Turaev–Viro、State‐Sumモデルなど)はこの発想を活かした代表例。