ともあれ、休んだり、出社したりを繰り返していた「自殺者」も、やっと毎日会社に出てくるようになった。
そんなある日、また小さな異変が起きた。今度は、「歩兵」が会社を休み始めたのである。最初は休んだり、出社したりを繰り返していた。しかし、やがて何日経っても出てこなくなった。
「入ったばかりなのに、もう辞めるんかいな」と思っていると、ひょっこり出社してきた。どうしたのか聞いてみると、「ときどき、体がダルくて動かなくなるんだ・・・」（！）と言う。やはり、営業車を没収されてからの歩兵営業が、体にこたえてきたのだろうか・・・？
「最近の新入社員は、よく休む連中だなあ」と、ベテラン社員には評判が悪い。営業マンはもちろん、工事課や設計課の人達にいたるまで、評判が悪い。
５人も新人が入ったというのに、誰も契約が取れる気配はない。まったくの素人を大量採用して、やみくもに飛び込み営業をやらせるのが、この会社の営業手法だ。パチンコや麻雀と同じで、「ビギナーズラック」に対する信仰がある。何の先入観も持たず、サボり癖もついていない新人の頃ほど、契約がよく取れると言われているのである。
それなのに、今度の新人はみんな不調だ。他の課に配属された４９歳の新人は、ストレスのためか、顔がひきつってきているように感じる。言葉もドモっている。っていうか、もともと何を言ってるのかよく分からない、言語不明瞭な人物だ。これで営業が勤まるのだろうか・・・？
もっとも、契約が取れる気配もないのは当方も同じなので、他人をバカにしている余裕はない（笑）。