夜訪

2008-01-09 14:29:26 | アパート建築営業マン
  
このアパート建築会社では、「夜は8時まで営業する」という規則がある。  
夜こそ、訪問に適した時間帯なのだそうだ。

昼間に地主を訪問すると、お爺さんやお婆さんが農作業や、庭の草むしりをしている。確かに話をしやすい。しかも、土地は彼らの名義になっており、レッキとした所有者だ。だが、この世代は往々にして「土地オーナー」としての意識が乏しく、「農家」に徹している。
 
どうしても、「話は長男に聞いてくれ」ということになってしまう。「長男」その他は、サラリーマン世代だ。地方公務員をやっているケースが多い。夜間(もしくは休日)に訪問しないと、この世代とは面談できないのである。
 
だが、夜に訪問するというのは、言葉で言うほど簡単なことではない。夏は7時ごろまで明るいのだが、冬の夜など、寒くて真っ暗。郊外の田舎のことだ。6時半くらいでも、深夜の雰囲気がある。
  
こんな時間にまで建築営業課の全社員が飛び込み訪問しているとは。正直、「よくクレームが殺到して『お客様相談室』の電話回線がパンクしないもんだな?」と感じたものだ。
 
そんな疑問をヨソに、課長は「夜こそ勝負時だ!!」と勇ましい。「俺は、入社してから半年くらいは借金抱えて、血を吐く思いで営業していたものだ。いつも、夜の9時まで飛び込みしていたものだ。あるとき、9時になって、そろそろ帰ろうか・・・と思った。だが、そこで最後にもう一軒行こうと考え直して、その隣の地主宅の戸を叩いた。思えば、最初に契約が取れたのはそこだった・・・」と言う。