漢検道

あおむしのヨチヨチ漢字道。

易経

2009-03-01 02:18:20 | Weblog
 では四字熟語出典紹介第2回。

今日は「易経」。

儒教の五経の一つ。 占筮の書であるとともに、宇宙論・処世哲学の書の一つでもある。 上下の経文とその解説とから成る。 経の部分は陰と陽の組み合わせで八卦、これ重ねて万物の象徴する六十四卦、卦全体の説明をした卦辞と、卦を構成するこうを説明したこう辞とからなる。 しかし、文章はきわめて象徴的で難解であるため、経の解釈として十翼がある。 八卦は伏羲、六十四卦は神農、卦辞は文王、こう辞は周公、十翼は孔子の作と伝えられるが定かではない。 陰陽の観念は中国自然哲学には普遍的であるが、「易経」はそれを宇宙論にまで高め、宇宙万物の法則性を人間社会の変化と関連づけた。 「易」「周易」ともいう。

 この「易経」出典の漢検1級配当四字熟語を簡単に列挙しておきます。

・遏悪揚善(あつあくようぜん)

 悪事をとどめて、善事をすすめる。「悪を遏(とど/や)め善を揚(あ)ぐ」と訓読します。 類義語は勧善懲悪ですね。 まだ本試験での出題はありませんが、そろそろ出てきてもいいかなぁと思います。
出典は<大有>

・一闔一闢(いっこういちびゃく)

あるいは閉じ、あるいは開くこと。 陰と陽が消長するさま。 闔は閉じる。闢は開く。
出典は<繋辞・上>

・誨盗誨淫(かいとうかいいん)

 悪事を人に教えること。 誨は教える。 誨淫誨盗ともいう。
出典は<繋辞・上>

・仰観俯察(ぎょうかんふさつ)

 仰いで天文を見、うつむいて地理を知る。 俯察仰観とも。
出典<繋辞・上>

・蹇蹇匪躬(けんけんひきゅう)

 9-2,18-1で出題。 自分のことは二の次にして主人に尽くすこと。 蹇蹇は身を苦しめても忠義を尽くすこと。 匪躬は自分の功名や富を捨て去ること。
出典<蹇>

・亢竜有悔(こうりょうゆうかい)

 きわめて高い地位にある者、栄達をきわめた者は、失敗をするおそれがあることを戒める言葉。 亢竜はのぼりつめて得意な竜のこと。 
出典<乾>

・虎視眈眈(こしたんたん)

 すきがあればつけこもうと、じっと機会をねらうこと。 眈眈は睥むこと。 虎が獲物を狙ってするどい目つきでにらんでいる様子。
出典<頤>

・井渫不食(せいせつふしょく)

 20-1で出題。 賢者が登用されないままでいること。 「井(せい)渫(さら)えども食われず」と訓読する。
出典<井>

・積悪余殃(せきあくのよおう)

 13-3で出題。 悪事をかさねた報いが子孫まで及ぶこと。
出典<坤・文言伝>


こんなもんでしょうか。 それでも3つも過去問で出題されてるなぁ。

ついでに上記の四字熟語に使われた一級配当字を確認しておくと語彙力増強に繋がるわな。

遏悪揚善では「遏」(アツ)遏める(とど・める)、熟語は遏雲(アツウン)、遏絶(アツゼツ)、下つきは禁遏(キンアツ)、防遏(ボウアツ)、擁遏(ヨウアツ)、抑遏(ヨクアツ)。 「遏雲の曲」は雲をとどめるほど素晴らしい音楽・歌声<列子>

一闔一闢では「闔」(コウ) 闔じる(と・じる) 闔(とびら) 熟語は闔扇(コウセン)、闔境(コウキョウ)、下つきで開闔(カイコウ)を押さえておこう。 「闢」(ビャク・ヘキ) 闢く(ひら・く) 熟語は開闢(カイビャク)7-1,14-217-1書き取りで出題、闢邪(ヘキジャ)

誨盗誨淫では「誨」(カイ) 誨える(おし・える) 熟語は誨育(カイイク)、誨言(カイゲン)、誨授(カイジュ)、下つきで誡誨(カイカイ)、教誨(キョウカイ)、訓誨(クンカイ)、慈誨(ジカイ)

仰観俯察では「俯」(フ) 俯せる(ふ・せる) 俯く(うつむ・く) 俯す(うつぶ・す) 熟語は俯瞰(フカン)16-2書き取りで出題、俯角(フカク)、俯伏(フフク)、下つきで畏俯(イフ)、陰俯(インプ)、「俯仰の間」は束の間、わずかなあいだ。 「俯仰天地に愧じず」は、自分の心や行動は公明正大で、天に対しても世間に対しても全く疚しいところがない。<孟子> ・・・絶対あおむしはこんなこと言えません。

蹇蹇匪躬では、先ず「蹇」(ケン)、 蹇む(なや・む) 物事が思うように進まなくて苦しむ ・・・あおむしのブログのこと。 また、足が自由に動かないこと。 足は別に不自由ではありません。 閑話休題、熟語は蹇歩(ケンポ)、蹇滞(ケンタイ)、蹇諤(ケンガク)、下つきでは屯蹇(チュンケン)、偃蹇(エンケン)13-1,17-2読みで出題、跛蹇(ハケン)。  「躬」(キュウ)、躬(み)、躬ら(みずか・ら)、熟語は躬化(キュウカ)、躬耕(キュウコウ)、躬行(キュウコウ)11-3で出題。
 下つきでは鞠躬(キッキュウ)、聖躬(セイキュウ)、直躬(チョッキュウ)

亢竜有悔では「亢」(コウ)、亢(のど)、亢る(たかぶ・る)、亢奮(コウフン・4-1読みで出題)=興奮。 亢進(コウシン)心悸亢進。=昂進、高進。

虎視眈眈では当然「眈」(タン)、眈む(にら・む) 眈むは他に「睨む」が8-1で出題された。

井渫不食では「渫」(セツ)、渫う(さら・う)、浚渫(シュンセツ)は8-2,14-3,16-2の書き取りで出題あり。

積悪余殃では「殃」(オウ)、殃い(わざわ・い)9-2読み出題。 熟語は殃禍(オウカ)、下つきで禍殃(カオウ)、余殃(ヨオウ)、咎殃(キュウオウ)。 「殃い池魚に及ぶ」は関係のない人がまきぞえになって思いがけない災難にあうこと。<呂氏春秋>


 そういえば「晏子春秋」出典の1級配当四字熟語書いてなかったなぁ。 それはまた次回ということで。