死刑か無期か…苦悩にじませる「当合議体」 耳かき殺人判決
産経新聞11月1日(月)21時3分
|
人の命を奪う究極の刑罰を科すべきか、回避すべきか−。量刑理由には、裁判官と裁判員を一体にした「当合議体」という“主語”が使われ、全員の思いがいかに揺れ、無期懲役を選ぶ結果になったのか、その過程がにじんだ。
まず、林貢二被告の犯行について、「冷酷な人格が表れていて、許し難い」と率直に述べた。そして、江尻美保さんの悔しさ、鈴木芳江さんの驚きや無念さなど、被害者2人の気持ちに「思いをめぐらせた」とした。
江尻さんの母親が精神的ショックから外出すら困難な状況になったことも検討した上で、「意見陳述した遺族らがこぞって極刑を望んでいるのは、全く当然で、当合議体もその思いには深く動かされた」と表現。死刑を念頭に置いていたことをあらわにした。
被告自身について、「本当の意味で反省していることにはならない」「犯行の最大の原因は相手の立場で物事を見ようとしない被告の人格・考え方にあるのに、公判の最後に至ってなお、そのことに気付かない、あるいは気付こうとしない言動は許し難い」と厳しく指弾した。
また、「法廷で遺族の声を直接聞いた被告の言動や態度には変化が見られる」と、法廷内でのやり取りを中心に判断する裁判員制度の狙いを体現。「被害者の無念さや遺族の思いを真剣に受け止め、考え方や行動の問題を強く意識し続けることに期待する」と、無期懲役の理由を説いた。
Copyright 2010 SANKEI DIGITAL INC