常念乗越より 御来光
松本平は雲海に包まれていた
当初の計画では小屋について荷物を置き
その日のうちに常念岳山頂を目指す予定だったが
ど素人二人には
小屋にたどり着くのが精一杯だった
何はともあれ
部屋の布団でひっくり返った
山小屋のせんべい布団はまさに極楽そのものだった
一休みをしてホールに降りると
みなビールなど片手に談笑していた
驚く事に年輩の方が多い
見知らぬ者同士が
その日の苦労や今までの山自慢などを語り合っていた
燕岳から縦走して来た人は尾根で落雷にあい
荷物を尾根に残し、激しい雨の中,
はい松の影に1時間ほど潜んでいたと云う
でもそんな話しも不思議と誇らしげだ
情念小屋の夕食
夕食の前、そんな人達にまぎれ
とりあえず日本酒を一合飲んだ
そして夕食を食べながらもう一合
二組の年輩のカップルと同席し
皆さんの山の話しに僕たちは相槌を打った
情念乗越より見た常念岳山頂
だと思っていたら
山頂は更にこの先だった
朝食を済ませ
僕らはのんびりと出発した
あとは山頂を目指し
前常念岳経由で三股に降りるだけだ
八合目より情念小屋を見下ろす
すでに僕たちはここまで登るのに1時間近くかかっている
この頃には
すでに登頂をし降りて来る人達と結構すれ違った
そして
ついに常念岳山頂が見えた
時折強い風が吹く
僕たちは岩陰を見つけては
休み休み登った
そして8時
僕らは常念岳山頂にたった
正確に云うのならば
僕たちは常念岳山頂の岩に
しがみついたと云うべきかもしれない(笑)
えらく細かい事を言えば
積み重ねられた石の左側にある岩が
この山のてっぺんだ~
なので恐らく
常念岳山頂に立った人はいないのかもしれないな(笑)
勇気があれば
この岩の上に立つのもいいが
転げ落ちる可能性は
かなり高い
頂上は岩だらけ
こんなふうに岩を積み上げたのは
きっと山の神様の仕業だな
と思うほどだ
ここから蝶ケ岳に行くか、あるいは小屋に戻り
燕岳に行くのが一般的なようだが
僕らど素人はいち早く下山をし
浅間温泉を目指すのでした
山頂より
三股への分岐点まで下り
前常念岳への尾根を歩く
岩にペンキで描かれた
○や→や×印だけを頼りに
歩いて行く
常念岳を振り返る
前常念岳山頂
ここからはひたすら下って行く
こんな岩場を・・・
これは下を見下ろした図だ~
尾根を歩いていた時
高度計をぶら下げ、短パン姿の若者とすれ違った
そして彼は常念岳に登り
ここでまた僕らを追い抜いて
走るようにこの岩場を駆け降りて行った
彼に聞くと2,300メートル辺りから樹林帯に入るので
この岩場はあと300メートルほど続くと
高度計を確かめながら教えてくれた
こんな岩場を降りて来た
突然きりに包まれたりもする
岩場を何とか抜け
はい松だらけの細い道を抜ける
腰掛けると頭だけが見える
水を飲んで一休みすると
10メートルほどの距離に生き物の気配がするが
それが何だかは判らない
おそらく雷鳥なのかもしれない
ま
熊ではないのは判る
岩場さえ抜ければ
と
思っていたら
やはり
ど素人の考えは甘いのだ~
ランボーが潜んでいそうな
こんな道が果てしなく続く事になる
思わず僕はえっちゃんに
これって楽しい?
と聞いた
当然意見は一致した
じゃ
もう帰ろうか~
なんて
とぼけた会話を楽しんだ
すでにお昼はだいぶ前に過ぎていたけど
ほとんど食べ物を食べていなかったのに気付き
軽く食事を採った
足下にはこんな花のようなものが咲いている
「さぁ行くぞ~!しゅっぱ~つ ローレン ローレン ロレ~ン♪」
山中に響くように大きな声で歩き出す
が5分もすると
「まだ~」なんてとぼけた会話に変わる
倒れた木の根
このまま持ち帰って
花展に出品したいくらいだ
しばらくして
沢の音が聞こえて来たときは嬉しかった
どこか辺りも幾分明るい
三股下山口に到着
もうダメ~
立ってるのがやっと~の図
早くおうちに帰ろ~
何で山に登るのかと考えると
そりゃ
家に帰るためだな
と
つくづく思うのでありました
帰りのタクシーは安曇野の田んぼの中を
心地よく走り
我が家へと向かうのでありました
振り返ると常念岳は雲の上に
ポッカリと浮かんでいました
えっちゃんはとなりで気持ち良さそうに
眠っていました