ファンタジーオンアイス2015 神戸公演レビュー・2 SEIMEI

結弦君のSEIMEI。ドリームオンアイスの映像はテレビで観たけれど・・・。
もちろん生で観るのは今回が初めて。
そのプログラムが始めるまでに、すでにキラ星のような素敵なプロスケーターたちの華麗な演技を楽しみ、涙まで流していたというのに。

まだ暗いリンクに笛の音が響く。それまでの雰囲気が一変する。
一陣の風が巻き起こり、リンクが幽玄の空間へと姿を変える。一瞬の出来事。
なにしろテレビで観るのとはちがって音がいい。天から降り注いで来るようだ。
照明が白く輝く狩衣姿の結弦君をとらえ、彼は最初のポーズからゆったりと舞い始める。
なんという研ぎ澄まされた姿なんだろう。
ひとつの隙もみつからないくらい張りつめた空気を身に纏った彼は、一気に私たちを平安の光と闇の中へ連れ去ってしまった。
息を止めて華麗な4Sと4Tを見届ける。美しかった。

プロたちのプロたる美しさとはまた別物。
現役の選手だからこそ、若いからこそ表現できるものもあるのだ。
宇宙とさえも融合していただろう安倍晴明。その神秘的な雰囲気をこの若い晴明はすでに自分のものにしているんだなぁと感じさせてくれる。
ゆったりとした優雅な振りの「静」と、激しく情熱的なステップの「動」のメリハリが素晴らしい。
後半の4Tはお手付きしてしまったけれど最小限で、そのあとの3A-3Tも見事。
スピンも速く綺麗で、ハイドロやイナバウアーもしみじみと美しかった。
最後のドンっという音に、はっと夢から覚める。そんな感じ。
なんだかすごいものを観てしまった・・・。本気でそう思った。
触れたら手がキレそうな・・・背筋がゾクゾクするような、そんな「美」だったね。

これが競技用プログラムとは忘れていた！
ただ、試合の時はライティングはなしなので、幽玄の雰囲気は伝わるだろうか。
ショーナンバーとしての方が表現しやすいだろうなぁ。
でもまだ私たちは本当のフリープログラムは観ていない。
これが5分の作品になった時は、どんな風に変化するのだろう。
秋のシーズンインが本当に楽しみ。