洗い髪が芯まで冷えて

草津には
地元の人が管理して使っている
共同浴場がたくさんある。

場所によって、雰囲気も泉質も違う。

前回（一昨年かな）来て、
私たちのお気に入りになった、
『地蔵の湯』へ早速もらい湯をしに行った。

「じゃあ、３０分後ね」

そんな口約束したって、だいたい５分はずれるじゃない。
着替えをする場所自体、浴室の湯船の正面だし、（これは珍しいことではない）
時計なんて、あるほうが珍しいから。

ホクホクになって外に出ると、
相方もホクホクの顔をして待っていてくれた。

ごめん、待った？
いや、５分前に来たとこ。


この人は正直だから、
きっとほんとに５分前に来たんだろう。
それでも息も凍る晩秋の草津、
今度は湯から上がるときに隣の男湯に声をかけよう。

熟年の夫婦は、さっきそうしてたよね。

つるつるになれ

草津に来た。
もうずっと、来たかった。


ぼーっと
硫黄の匂いと湯けむりに包まれて
湯の花がフワフワしてるのをじーっと見る。
とろみのある濁り湯は
ちょっとピリリとする。


露天風呂では
秋の青空と紅葉が待ち受けていた。

白い湯にもみじの葉っぱがユラユラしてる。

肌のきれいなおばちゃんが、
もみじをお湯ごとすくって
ペイ、と石の上に置いた。

でも、
取っても取っても、
空からハラハラ降りてくる。


私はここぞとばかりに
お湯をすくって顔につける。何度も。

ストレス性だと言われたあごのニキビ。
突如出てきたザラザラともおさらばよ。

脱衣所に戻って
鏡に映ったあたしの顔は
まさにピカピカつるつる（笑）

言い過ぎだけど、
許して、うれしいから。

ポインセチア

真っ赤なポインセチア。

鋭くするりと伸びた
花と葉っぱ。

小さな起毛がびっしり生えそろっていて、
ビロードみたい。

水をあげると
丸い水玉が
八方に飛び散って、
キラキラ
ポロポロ。

家に帰ると、
ポインセチア。

クリスマスカラーのポインセチア。

コルテオる。

「チケット、ローソンで取れました！」

夜、仕事中に携帯メールチェックをすると、
ダンナの母（新宿の母みたいね）から連絡が入っていた。

おー、コルテオ！
あれね、ダイハツのやつね。
シルク・ドゥ・ソレイユがやってるやつね。

『シルク・ドゥ・ソレイユ』って、太陽のサーカスってフランス語らしい。
サーカスという言葉は
かなり小さい頃から知ってるのに、
行ったことは、、、あったかな？

とにかく、けっこう身近なようで、身近でないモノ。

観てきました。


いやー、まあすごいのなんの。

彼らは来る日も来る日も、練習して、
想像できないくらい努力してるんだろうな。
あの人たちはきっと、朝目覚めた瞬間
今日は身体の調子がいいとか悪いとか、分かるんじゃないかな。

それくらい、自分と対峙している気がする。


ショーは、
完璧に演出されて、
完璧な演技を繰り出して、
喝采のうちに幕を閉じた。


ちょっと、うるっとしました。

人間の身体と気持ちの強さに。

リンク

今日は夕方から
息が白くなった。

帰り道では
冬の透明なあまい匂いが
すこし、した。

寒いせいか
人通りも少なくて、
自分の足音がよく響く。


ああ、
北陸と似てるんだ、今日。


たいがい、帰り道は
とりとめもなく、様々なことを思いめぐらす。

リンゴ　ゴリラ　ラッパ

考える内容は、
しりとりのごとく繋がっていく。


パタパタと聞こえて、
ピンクのパジャマにガウンを羽織った女性が
小走りで横道に入っていった。


『ピンクのパジャマ』

小学校までのあたしのパジャマの色。
寝る時間は９時ちょい過ぎ。

電気が消されて、
両親は別室へ行き、
隣の兄ちゃんが眠ってしまうと、
途方もなく心細くなる。

泥棒のこととか、
幽霊のこととか、
いかにも子供が恐れる話を
いろいろと想像力たくましく、想像する。

そうやって怖くて寝られなくなったとき、
階段の下の洗面所から聞こえてくる
パチパチする音。
母が化粧水を顔につける音。

パチパチパチパチ。

あとはドライヤーで髪を乾かす音。

ブオーーーーーーー


これが、
本当に安心する。
これを聞くとすっと寝付ける。


ここまで考えて、
あたしのマンションの前まで着く。


たっぷり水気を含んだ空気と
晩秋の物悲しさと
ピンクのパジャマがリンクしたのかな。

おかあさんの気持ち

ママになった友達や、
ママになるであろう友達。

彼女たちからもらった誕生日メール。


「誕生日おめでとう！」


無事に生まれて、
すくすく育って、
今まで幸せに暮らしてこれて、おめでとう。

私も
我が子を
健やかに、幸せにします。


そんな風に言われた気がした。
「母」の決意を感じた。

すごいなあ。