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ロシア版ホームズの連作をDVD化しましたAlt-artsです。
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日本のいびつな映像ソフト市場

2010-01-14 10:16:39 | 日記
この2-3ヵ月間、大体1週間おきにアマゾン・ジャパンのDVD売上100位を検証している。

その間ずっと、マイケル・ジャクソンと深夜アニメを中心とする「アニメ・オタク」向け商品が上位100位の大半を占めていた。映画ではたまに「ハリーポッター」の新作や「トランスフォーマー」といったティーンエイジャー向け英語圏大作が発売日前後に入ってくる他は、大して注目すべき傾向はない。
日本製の「テレビ映画」(テレビドラマの続編や特別編でしかない、名前ばかりの「映画」)が入ることもあるが、せいぜい1、2本である。

数日前もそのような検証を行い、イギリスやアメリカのアマゾン(amazon.uk,amazon.usa)で同様の検証を行ったところ、日本の映像ソフト市場の異常さがますます鮮明になった。

日本が何につけ模倣してきたアメリカや、これから模倣しようとしているらしいイギリスでは、映像ソフト市場の上位100位はほとんどが実写のドラマやドキュメンタリーや映画で占められているのだ。確かに文化的に意義ある映画は少ないが、それは今や世界中で見られる傾向である。

映像ソフト市場は、映画の制作費回収においても重要な位置を占めている。それなのに、日本ではこの有様だ。国民が平均して1.3回(今ではおそらくもっと少ない)しか映画館を利用しない国で、ソフト市場がこのような状態であり続けるとしたら、これから映画はどうなるだろうか?

日本の映像ソフト市場は、このように世界的に見てもいびつな展開を遂げている上に、世界に通用しない(最初からそれを目標にしていない)「オタク」向け商品とミーハー的時流にのみ、頼っている。昨年のロカルノ映画祭で日本製アニメの特集上映とアニメ制作者達による円卓会議が開かれたが、そこで日本のアニメ作家の一人が、自分達の作っている商品は15歳の男の子向けだとはっきり述べていた。麻生(元)首相が読んでいる「マンガ」は、エロマンガなんですよ、という発言もあった。
日本の「コンテンツ研究者」その他諸々は、この会議の内容すら知るまい。私が知る限り、それは「映画芸術」というロシア語の映画専門誌にしか翻訳されていないからだ。

文化庁が推進した「メディア芸術振興」の「成果」はせいぜいこの程度のものなのであり、、日本の映像コンテンツ市場が世界第2位の規模だとかアメリカ並みに映画制作本数が増えたとか言っても、別に世界に通用するものが作られているわけでも消費されているわけでもない。

むしろ、そういう表面的な数値だけを重要視する、にわか研究者達の言説が若い世代にもたらした「マイナス・インパクト」の方が深刻なのである。最初に述べたアマゾン・ジャパンのDVDベストセラー内訳の検証は、そのことをはっきりと物語っていた。