本と映画の感想文

本と映画の感想文。ネタバレあり。

『カルト王』

2006年01月04日 | エッセイ

作者:唐沢俊一
出版:冬幻社文庫(2002/12/25)
初出:1997
ジャンル:エッセイ
評価:7/10


 いろんな知識が詰め込まれた書。孫の代まで語り継ぎたいので、いくつかピックアップして書き残しとこっと!

Ⅰ オカルトの章

  • 「ポリオ(小児麻痺)」(P.16)はポリオウィルスに感染し、それが脊髄に入り込んだ場合に手足の麻痺などを引き起こす病気のこと。その割合は数百人から千人に一人。日本では1960年に大流行となったが、予防接種の徹底によって現在は発生していない(厚生労働省のHPより)。第32代アメリカ大統領フランクリン・デラノ・ルーズベルトも39歳のときにポリオにかかり、常に車椅子を使ってたそうな(wikipediaより)。
  • オカルトというのは「会社か軍隊の組織のようなヒエラルキー世界として表現されている」(P.22)。
  • 「心霊家の人々は(中略)決して自分を責めない。『いいのよ、それでいいのよ』とささやいてくれる慈母のごとき神様だけと向き合って生きている」(P.30)とか、「自分への正当化の手段としてオカルトを使い、それを悪用している」(P.31)というのは、オカルトに限った話ではないね。人間だれでも自分を肯定したがるもの。「大人はみんなウソつきだ」というのも、「自分は家庭を第一に考えたいから」といって仕事の手を抜く人間だって同じ匂いがする。原子力発電所の制御装置の設計者が、早く家に帰りたいからと詳細を検討せずに適当な制御盤を作ってはいけないはずだ。で、しょうがないから家庭を犠牲にして働いているというのが日本のサラリーマン・・・だと思ってたんだけど、最近は違うのかな? いろいろ重大事故が起きてるところをみると、その分、家庭は円満になっているのでしょう。
  • 「どの業界にもゴロと呼ばれる人種はいる。芸能界、出版界、音楽界……ゴロにはゴロなりの人脈、情報網があって、彼らがいなければ業界自体も動きが鈍くなる面も確かにあり、必要悪としてその存在を認める連中も多い」(P.32) ・ 「暴力団新法施行を機に資金繰りに困り果てたヤクザたちが組組織を宗教法人に鞍替えさせようと暗躍していた時期」(P.40)・・・「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」平成3年成立(wikipediaより)。
  • 「郵便局員だった秋山眞人」(P.43)は超能力者らしいッス! よく知らんが(笑)。公式サイトはコチラ

Ⅱ クスリとカラダの章

  • 「エコロジー一派にとって、クスリは科学という悪魔が作り出したものであり人間の持つ自然治癒力を無視し、かえって弱めてしまうものでしかない」(P.73) 
  • 「原始時代から人間には本来、あらゆる病気をハネ返す自然のパワーが備わっており、それが文明の発達に伴い、自然状態から切り離された生活をしなければならなくなったことによってパワーが弱まり、今の人類総病気時代を招いたのだ」(P.74)
  • 「これらの意見は決して昨日今日のエコ・ブームに乗っかって言い出されたものではない。古くは17世紀ごろからヨーロッパで流行しだした思想であり、それから断続的に、文明の飛躍的な進歩があるたびにそのアンチテーゼとして浮上してきた。20世紀初頭にもこの一大ブームがあり、日本にも明治時代、すでに原始に帰れという運動がインテリ階級のあいだに広まっていた。その流れは大正モダニズム時代を経て、昭和は戦後になってまた現れてくる」(同)
  • 「世界にビタミン発見競争が巻き起こり、当然のことながら勇み足も続出した(たとえば不飽和脂肪酸にすぎなかったビタミンF、葉酸の発見で名前が消えたビタミンMなど)」(P.96)
  • 「ビタミンCは、人間にとっては必要不可欠である」。しかし、「ネコやイヌは、ビタミンCを体内で合成できる。したがって、犬用、猫用の飼料にビタミンCを含有させる必要性はまったくない」(P.97)
  • ビタミンなどを人体内部で作り出すことができないのは「たとえ必要不可欠なものであってもそれがきわめて微量なら、体内で合成するような複雑なメカニズムを進化させるより、その物質を含んだ生物を食用として摂取するほうがずっと効率がいいからである」(同)
  • 「人体が1日に必要とするビタミンCの摂取量は6~7ミリグラムとされている。これは、イチゴを生のまま1個食べれば十分に摂取できる量である。同様にビタミンAの1日2000IUはチキンレバーを一片食べるだけで摂取できる」(P.98)
  • 「ノーベル賞を2回も取っている」ライナス・ポーリング博士が、ビタミンを「大量に摂取したならば病気の治療に役立つのではないか、つまりビタミンに薬理的効果があるのではないか、と言い出した」(P.101)
  • 「19世紀の終わりには、ロシアの科学者ユーリ・メチニコフが、ブルガリア産のヨーグルトこそ健康と長寿の秘訣と考え」た。しかし、「後に、メチニコフがデータとした長寿村の人々の年齢報告には、かなりの誤りがあることがわかった」(P.102)
  • 「日本にドラッグ文化が育たなかった」のは、「日本人は自らの脳内で、麻薬とほとんど同じ成分で、しかもコカインなどよりはるかに強力な薬理作用を持つ物質を、欧米人の数倍もの量で作り出す能力を持っている」ため(P.107)。
  • エンドルフィンなどの「脳内快楽物質」は「脳へ痛みや不安などの緊張情報を送る神経の、SP (サブスタンスP)放出の働き」を抑制する。その結果、脳に送られる緊張情報の「量が減り、痛みが和らいだり、多幸状態になったりする」(P.109)
  • 「苦痛の果てに人格(あるいは能力)の向上があるという思想は、およそ人類に普通のものといえよう。そして、この思想をもたらしているのが、結局、苦痛の行き着くところにそれを数百倍の割合で上回る快楽が待っている、ということを人間が本能的に知っている」(P.112)
  • ドーパミンは「A10神経と呼ばれる快感を司る神経系での伝達を主な働きとしている」。(P.115)
  • 「A10神経の多くには、このドーパミンの分泌を抑制する働きの因子(「ギャバ」と呼ばれている)を分泌させる機能が」あり、「エンドルフィンなどの脳内快楽物質は、このギャバの働きを抑制することによってドーパミンの分泌を促し、それによって快楽を感じせしむる」。ところが、「A10神経のうち、人間の精神活動、殊に想像力を司る部分である大脳の前頭葉連合野を走るもの」は「ギャバが完全に抑制されている」(P.115)

Ⅲ セクシャリティーの章

  • ホモ雑誌の分類は「正統派の『薔薇族』、兄貴趣味の『さぶ』、美少年の『アドン』にマッチョの『バディ』、デブ専門の『サムソン』」(P.168)・・・憶えてどうするのかまったく不明だが、とりあえずメモ(笑)。
  • “やおい”の語源は「“山なし、落ちなし、意味なし”」(P.169)・・・コチラも上と同様。
  • 「オウム真理教という団体は、その悪趣味性ゆえに、すべての、日常に対し不満を持っている人間にとって、すさまじくオモシロイものであった。ここを押さえていないすべてのオウム論は、的はずれになることをまぬがれない」(P.180)

Ⅳ サブカルチャーの章

  • 「007映画のヒットの要因は、毒ガス噴射機つきのアタッシュケース、マシンガン装備のスポーツカーといったふうな、便利なようでいてどこかにオモチャ感覚のあるガジェットを、秘密兵器として主人公に持たせたところにある」。「自白剤や音波による精神攪乱機などといった仕掛けのよくわからない器具類は登場しない。そういうものは自らの肉体と直接につながらないからだ」(P.190)・・・『GO! GO! ガジェット』と『アイ・スパイ』を観た限りでは、「オモチャ感覚のあるガジェット」がたくさん登場するからといって映画が成功するわけではなさそうだ(笑)。
  • 「蒸気式サイボーグ、それこそ機械と人間の、もっとも幸福な合体のスタイルだと信ずるものである」(P.193)。すでに「スチームパンク」という言葉もあり、コチラはすっかり普及している模様。ウィリアム・ギブスンとブルース・スターリングによる『ディファレンス・エンジン』が代表作とのこと(wikipediaより)。アニメでは『名探偵ホームズ』があった。『ワイルド・ワイルド・ウエスト』(1999)という映画もあったが、「幸福な合体」をしたとしても、映画として成功するわけではなさそうだ(←手抜きコメント;笑)。
  • 「猟奇という言葉は、戦前は佐藤春夫が、そして戦後は江戸川乱歩が専売特許を取っている」(P.221)
  • 杉浦茂(『猿飛佐助』、『ドロンちび丸』など)は「絵の中のギャグ、情報量がやたらに多いのが特徴」(P.230)