本と映画の感想文

本と映画の感想文。ネタバレあり。

『半落ち』

2005年06月03日 | ミステリ
作者:横山秀夫
出版:講談社(2002/9/5)
初出:2001
ジャンル:ミステリ
評価:7/10

 梶警部の澄んだ瞳と非現実的ともいえるその生きる目的。対して、彼の空白の2日間を知ろうとする人間たちは、たとえ純粋な正義感をもっていたとしても、所属する組織の中で生きていくため、あるいは成功を手に入れるため、ゆがんだ行動をとらざるを得ない。犯罪者とそれ以外の人間のどちらが純粋で、どちらが不純なのか?・・・みたいな小説。よくできてるとおもう。

『R.P.G.』

2005年06月02日 | ミステリ
作者:宮部みゆき
出版:集英社文庫(2001/8/25)
初出:2001
ジャンル:ミステリ
評価:5/10

 現在の世相を見事に切り取った小説、ということになるんだろうが、びみょーにどーでもいい感じ。ネット家族の描き方があまりにも類型的で、小利口な解説者がしゃべるところのネットユーザみたいに見える。仮想家族の実年齢が、演じていた家族の年齢とほとんど変わらないのもヒネリがないし。性別だって変えてしまえ!って感じだが、そこまでやると発散して2時間ドラマに収まらない、みたいな計算があったりして。

 ところで、仮想家族“カズミ”のいう「本当の自分」みたいなセリフ、80、90年代の自己開発セミナーやカルトにハマッてたヤツラのセリフとおんなじなんじゃなかろうか。そう考えると、いつの時代もヒトが求めるものは同じというか、道具は替わってもやってることは変わらないというか。ま、どうでもいいか。

『検死官』

2005年06月01日 | ミステリ
作者:パトリシア・コーンウェル
出版:講談社文庫(1992/1/15)
初出:1990
ジャンル:ミステリ
評価:4/10

 連続殺人事件を調べる検屍官の話だが、検屍官という仕事についてはもちろん、これについて回る政治的策謀や、男たちの中で仕事をする女性への風当たりの強さや、コンピュータ/データベースのおもいっきり細かいことや、親に相手にされない子供や・・・、とにかくナンでもカンでもつめ込まれた小説。

 殺人事件の部分だけをひろうと、「アイツがあやしい」と思わせる引っ掛けがポツポツあって、犯人を罠にかけようとして自分が狙われて、最後は危機一髪で助かるという、どことなくハリウッド的ありがちなストーリー。

 これが処女作の作者が書きたいことを思いっきり書きました~、といったところか。しかし、読むほうとしては、これが「重い」。平たくいうと読みづらい。たぶん、2作め以降はよくなってるんだろう。