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資料室B3F

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の移籍版。

補論03 BIS規制

2014-01-20 16:25:46 | CMBS論集用小ネタ
〔補論03 BIS規制〕

 自己資本比率規制(BIS規制)とは、バランス・シートの総資本の内、他人から借りた資金はいずれ返済する必要がある為、負債として区別される他人資本の、残りの返済の必要のない資本を自己資本(株主から出資された出資金、剰余金、準備金、自己株式等から構成される)と言うが、その比率である。自己資本比率は以下の式で示される。

自己資本比率=((総資本?他人資本)/総資産)×100

 過度の外部負債に依り、総資産を膨らませる事は、企業経営上リスクが大きく、自己資本の割合が、企業のリスク耐性に対する一つの指標となる為、これを基に資金提供に関する判断をするのが通例であるが、この自己資本比率に一定上のデッドラインを設けたのがBIS規制である。
 借り手となる一般企業は、極端に自己資本比率を下げようとしても、貸し手となる金融機関の拒否乃至リスク相応の高レートの要求に遭うだけである。対照的に貸し手は、リスク判断に関係なくバランス・シート上は負債と資産を同時に増加させる事が可能である為、自己資本比率を下げ、貸出を拡大するインセンティブが存在する。
 金融市場に於いて、個々の銀行の預金に関するリスクが意識される事は、通常時にはあまり無いが、個別の銀行のリスクが預金金利に反映される事も、又あまり無い。然も、銀行取付防止等の観点からの信用秩序維持により、預金に一定の保険(預金保険制度等)が付与されるのが通例である。そうしたインセンティブに依存する行動を防止する為にBIS規制が要される。
 中には、銀行の抱えるリスクは総資産で測れるか、と言う問いもある。確かに、信用リスク観点では、借り手のクレディビリティや、貸出の性質(担保の有無)等に依っても異なる。しかし、銀行が内包するリスクのコンポーネントは、信用リスクだけで構成されている訳ではない。
 BIS規制は、自己資本を内包するリスク総量(リスクアセット)で除算したものとして認識出来るが、これをどう測るかが問われる。預金以外の負債の中には、資本性の強いデット(劣後債等)も存在する。また、時価変動による資産増加を全て自己資本に組み込んで良いのか、という問題も残る。
 BIS規制のBISは、“Bank for International Settlements”、即ち国際決済銀行の事であるが、なぜバーゼルにあるBISが自己資本比率を国際的に決定しているのだろうか。グローバル化の影響で、当然国際取引上はベースメントとなる競争条件を国際的に均しておく必要があるが、銀行監督規制の強さの大小でも競争力に差が付いて、規制による銀行のポジティブ・フィードバックが発生してしまう故に、銀行間の国際協調が要される為である。
国際協調を実現する場としてのバーゼル銀行監督委員会を設置し、銀行の自己資本比率に関する統一的規制である、バーゼル自己資本比率規制を施行している。
 但し、このBIS規制も曲者(Suspicious thing)である。不況下で自己資本比率を取り戻す為には、当然分母に入る貸出を減らすので、余計に貸し渋りや貸し剥がし(ロールオーバーを認めない)が発生し、不況が促進する。仮に好況下なら逆を考えればよいので、要は循環の増幅作用があり、銀行が合理的に行動しようが、外部不経済は発生する可能性は十分ある、と留意されたい。
 但し、この数字をバーゼル銀行監督委員会が定める事が、合理的かどうかと言われると、話がまた違ってくる。そもそも、BIS規制の根幹は3つに集約される。
①リスクの計測と、クッションとしての自己資本の位置付けによる健全な経営
②(民間銀行の場合)ペイオフの為の破綻処理財源(要は糊代である)
③監督当局の介入の際のベンチマーク(水準点)としての健全性の指標
日銀の場合は、①と③が中心となる。日銀と他金融機関の抱えるリスクの大きさは違ってくるが故に、必要水準もまた変わってくる。バーゼル銀行監督委員会の提言(2009.01)によれば、これは「経済資本」にあたる(リスクバッファ)。③の場合は、民間なら、規律付け権限が株主から監督当局に移るわけであるから(日銀には株主はいないから国から監督当局に移る、と解釈する)、その場合の最低基準値が適切なのか、という話も出てくる。

〔参考文献〕

翁百合『情報開示と日本の金融システム』(東洋経済新報社、1998)

田中隆之「金融の監督・規制をどう再構築するか」(櫻井宏二郎、宮本光晴、西岡幸一、田中隆之著『日本経済 未踏域へ 「失われた20年」を超えて』(創成社、2011.04)所収、pp.180-241)

マティアス・フランシス・ドゥワトリポン、ジャン・マルセル・ティロール著、北村行伸、渡辺努訳『銀行規制の新潮流』(東洋経済新報社、1996)
(原著) Mathias Francois Dewatripont, Jean Marcel Tirole, “The Prudential Regulation of Banks”, expanded English version of La Reglementation Prudentielle des Banques, MIT Press, Cambridge, c1994.




補論01 CMBSの2010年問題(Complete)

2014-01-15 11:44:46 | CMBS論集用小ネタ
〔補論01 CMBSの2010年問題〕

 裏付けローンとなるノンリコースローンの多くは、ローンの返済期限(満期)を約3年のタームに設定し、契約している。例えば、2011年4月1日にノンリコースローンを3年のタームで組んだ場合、返済期限は2014年3月31日となる。
 問題は、ノンリコースローンの発行額が契約年に増えれば増えるだけ、返済必要件数も数年後に増える事になるので、債務者がデフォルトを起こすリスクが高まる。
 リファイナンスする場合、金融機関がその地に止まっている事が、当たり前のようだが必須条件である。しかし、リーマン・ショックの余波で環境が一変し、外資系金融機関は日本国内から相次ぎ撤退した。他にリファイナンスを行う金融機関が見つかれば別に問題はない訳だが、その金融機関が見つからないからこそ問題となった。
 金融機関が見つからない要因として、当時(2007年頃迄)、CMBSのローンに、収益性の低い中・小型のビルや地方商業施設等を大量に組み込んだものを、高利回りの確保を目的に、当時の金融機関が出回らせた事にある。リーマン・ショックで「夢から覚めた(Awaked from an illusion)」金融機関は、「リファイナンスしたところで時間稼ぎにもならない様な物件(リファイナンスして、その3年で潰れる蓋然性が高いような物件)」が混じっていた場合、リファイナンスの要請を拒絶する。その事由が大きくリファイナンスの件数を減少させたと言えよう。
 リファイナンスの道が閉ざされた場合、残された道は2つある。一括で返済する資金を用意するか、デフォルトするか、である。デフォルトが発生した場合、ローンの発行体である金融機関やファンドは不良債権を抱え、CMBSの保有者である機関投資家や銀行も損失を被る事になる。
 2010年問題は、返済期限を迎えるローン残高が、約1兆2,000億円(注01)と飛び抜けて高い数字となった事からついた呼称である。だからと言って、その後が危機的な水準でなかったかと言われれば、そうではない。
 確かに急激に裏付けローン残高は減少しているものの、2010年から2012年に掛けて、ローン残高の合計額は約2兆7,000億円(2010年を抜いた場合約1兆5,000億円)に及ぶ。2013年、2014年以降のローン残高はそれぞれ約2,000億円、約1,000億円と激減しているのでそう問題になるとは考えにくい。約2兆7,000億円という数字が大きすぎてピンと来ない方もいるだろうが、これは三菱地所の年間ビル賃貸収入(約3,375億円)の約8年分である。
 まず、ローン債権がデフォルトとなった場合のシナリオを押さえておくと、専門の債権回収会社や弁護士が「スペシャル・サービサー(注02)」となり、担保に設定された不動産の状況を把握し、投資家(CMBS購入者)の資金回収に着手する事になる。
 その回収手段だが、主に3種類の選択肢がある。①ローンのリファイナンスの再申請②ローン債権そのものを売却してしまう③担保不動産の売却、となる。
 ①は原理的には可能だが、不動産価格が上昇(回復)しない限り担当者は首を横に振る(Decline the offer)だけだろう(注03)。②の場合、これは金融市場の趨勢にも拠る部分があるが、現在ではローン債権自体を売却するよりも担保不動産を売却した方が高く売れるケースが多い為、選択されにくい(勿論、金融市況が逆転すれば、話は変わってくる)。選択肢は自ずと③、つまりCMBSに指定された物件の売却と言う事になってくる訳だが、これも多少手間が掛かってくる。
 先程のリファイナンスされない事由に挙げた様に、CMBSは基本的には、「複数の不動産」を担保としたローン債権を複数用意して、それらを再び束ね、分割する手順を踏んでいる。ややこしい様だが、簡単に言うならば、「木の葉を隠すなら森の中(Where does a wise man hide a leaf? In the forest.)」(注04)である。
 例えば、A、B、Cの三種類の担保不動産があるとしよう。これらを一つに纏め、ローン債権αを作り出す。アルファベットが若い順に信用度の高い(クレディブルな)良好物件であると言う仮定を置く。同様に、D、E、Fの担保不動産でローン債権βを作り、G、H、Iの担保不動産でローン債権γを作る。ローン債権α、β、γを束ね、CMBS(ここではδと称する)を作る。CMBSδを切り餅(パイでもよい)の様に分割する(今回は、9つの担保不動産を使ったので、9つに分割する事とする)訳だが、クレディブルな物件とインクレディブルな物件が混ざると、クレディブルな物件を引き当てる確率もインクレディブルな物件を引き当てる確率も1/9(約11%)となる(注05)。リーマン・ショックで問題になったのは、この不透明性の強化で、どの切り餅に毒が入っているのかが分からなくなってしまった事に起因する訳である(注06)。
 ここで話を元に戻すが、重要な事は、CMBSを一つ紐解くと、大量の担保不動産に行き着くと言う事である。先程も書いた様に、物件はクレディブルな物件とインクレディブルな物件に分類出来る訳であり、クレディブルな物件(例えば東京都都心のオフィスビル)ならば、需要がそれなりに有るので買い手もそれなりにつくだろう。
 しかし、問題はインクレディブルな物件(例えば、地方郊外のオフィスビル)である。需要が薄く、買い手がなかなかつかないので、売却確定迄のタームが長くなる事は予想の範疇となるだろうが、現実では、事態の長期化が予想された場合、全物件の売却から回収額確定迄に1~2年のタームを要するとされている。
 このCMBS自体も、内部でランク付けが行われている事も押さえておきたい。鮪(tuna)の部位毎に名前や味、価格が違う(例えば一般に大トロと呼ばれる部位は美味しく、値段もそれなりに高い)様に、CMBSも投資リスクに依って階層を分ける事が出来る。
 これは、「信用補完」と言う措置によるもの(一般投資家に販売される証券化商品について、債務の弁済を担保し、商品の信用を高める為の措置)である。内部信用補完の、優先劣後構造と言うシステムが該当する。
 優先劣後構造とは、証券化商品を優先部分と劣後部分に分け、優先部分を保有する投資家は、劣後部分を保有する投資家より優先的に配当等を受け取る権利を持つ仕組みを指す。予測どおりに収益が生じなかった場合のリスクを劣後部分が吸収し、優先部分への配当等の確実性を高める。結果的には、優先部分は劣後部分に比べてリターンは低くなるものの、安定性が高く、劣後部分はハイリスク・ハイリターンとなる。ここで、優先劣後構造を設ける事を、トランチング(Tranching)と称し、各部分をトランシェ(Tranche)と称する。
 CMBSは主に、「シニア」、「メザニン」、「エクイティ(劣後)」に分類される。シニアに近づくほど、資金回収の優先度が高く、利回り(利息収入)は低い(資金回収優先度と利息収入がトレード・オフ関係にある)事になる(エクイティはシニアの対極であり、メザニンは中間の位置付けとなる)。
 「シニア(Senior)」は、通常の貸付と同じようなものであり、金銭商品貸借契約に従って、『いつ・いくら支払う』というものが契約上定められていて、 その契約上の取決めを破ると、債務不履行(デフォルト)になる。「メザニン(Mezzanine)」は「中二階」という意味だが、「シニア」と「エクイティ」の間にある事に由来する。このうち、劣後ローンは調達先から見れば「負債」だが、 通常はシニアの返済が問題ない水準でなければ、 劣後ローン等を返済不可能となるような契約となっているのが通例である。
 よく見かけるケースとしての例は、①シニアとメザニンにおける関係者間合意書(Inter Creditor Agreement)が締結され、 契約によって劣後の扱いを受けることを合意させる②償還期限がシニアよりも長く設定されている(期間劣後)③残余財産分配権に関する劣後条項(返済に関する劣後)④一定の財務比率をクリアしなければ、強制的に弁済が繰り延べられる条項⑤一定水準以上の現預金が存在する場合の、シニアの強制期限前弁済条項⑥優先株式(エクイティ)の場合は、法的な債務では無いため、法的債務(デット)にそもそも劣後する、等といった条項を契約に入れる事によって、シニアよりも返済順位を劣後させる事になる。返済条件等に関する優先順位(リスク)については、上述の通りだが、 経済条件(リターン)については、リスクが高いほど高くなるので(ハイリスク・ハイリターン)、 エクイティが最も高いリターンを要求する事になる(例えば、シニア:~5%、メザニン:5~15%、エクイティ:20%~、と設定する)。
 ここで話を戻すが、リスクが低く優先的に資金を回収可能であるシニアレイヤーの機関投資家は、スペシャル・サービサーに物件売却を急がせる戦術を採用するだろう(多少割安な売却価格でも、自身が投資した金額を全額回収出来る可能性がある為)。対照的に、メザニン以下のシニアレイヤーに劣後するレイヤーの場合、思惑が変化してくる。回収率を少しでも高める為に「待ち」の戦略を採用する事で、延長期間の利息収入を受領しつつより高値で売却する戦術を好む。
 しかし、スペシャル・サービサーは投資家の採用する戦術で動く為、両者の利害調整に時間を割くケースもある。基本的には、関係者間合意書内にシニアレイヤーの意向優先の契約条文が含まれている事が多いが、それが含まれていなかった場合に先程の状況に陥るケースが多い。
 基礎を押さえたところで本題に話を移すが、2010年問題で、苦境の様相をまず世に知らしめたのは、強気の価格付けで有名となった 「パシフィック・センチュリー・プレイス丸の内」の保有者である、「ダヴィンチ・ホールディングス」である。
 株式会社ダヴィンチ・ホールディングスは、東京都港区に本社を置く持株会社であり、傘下に不動産投資顧問事業や投資事業など を行う子会社を持っている企業である。設立も1998年と若く、新興不動産企業の中でも飛び抜けて運用資産が多く、1兆円以上の不動産を運用していた企業である。しかし、2010年6月に株価基準が上場基準を満たさなくなり、上場が廃止された経緯を持つ。他にも、同業者であったパシフィック・ホールディングスは2009年3月に経営破綻し、既に倒産している(注07)。
 ダヴィンチ・ホールディングス社は、2008年12月期決算期、金融収縮と不動産市況悪化の煽りを受け、179億円の巨額な純損失を出し、赤字に転落した。リファイナンスも上手く行かなくなり、監査法人から「継続疑義」(有価証券報告書等の決算書内にある「継続企業の前提に関する注記」の項目に「重大な疑義」という注意書きがある状態を指す。要するに「この会社は危ない」と監査法人が注意喚起している状況である)の注記が付される程に経営が暗礁に乗り上げている状況であった。179億円の赤字の中、当時連結ベース(運用している私募ファンドも含めた)の、ノンリコースローン返済額は3,888億円(三菱地所の年間ビル賃貸収入(約3,375億円)よりも多い)であった。
 なりふり構っていられなくなったのか、同社が保有する50件弱存在したオフィスビルの「全物件を売却する」と言う噂が立った。その噂を裏付けたのは、表に出てこない為、やや怪しさの残るものではあるが、「物件売却リスト」(〈資料 物件売却リスト〉)が出回ったのである。資料から、おおよそのリストに載っている、ダヴィンチ社が取得した当時の価格と実際の売却価格は分かると思われるが、大分乖離している。
 例えば、最高額の取得価格で有名となったダヴィンチ芝パークビル(通称:軍艦ビル(注08))は、ダヴィンチの運用する子会社であるカドベ社が1,430億円で落札した訳だが、後の市場価値は600億から800億円(2009年時点)程度とされており、取得時の約半分である。ちなみに金融機関(中央三井トラスト・ホールディングスやメリルリンチ等)は、この買収に対し、約1,150億円の融資を行い、一部は証券化されている。売却リストに上がったはいいが、結論としてはこの物件は売れなかった(と言うよりは、売らせなかった、と言うべきだろう)。
 ダヴィンチ社の金子修社長は、2009年の決算説明会で、物件の評価額が借入金に届かなかった場合の対応について、「デフォルトしかないだろう」と述べている。堂々と言ってのけられるのも、そもそものローンの仕組みにある。ノンリコースローンは、担保不動産を融資担当の金融機関に差し出せばそれ以上の返済は不要となる為、物件価値が大きく毀損した物件を売却し、赤字清算するよりかは、物件を手渡して清算する方が得策である事は確かである。
 だが、それはあくまでもダヴィンチ(カドベ)側の論理であり、金融機関の論理は異なる。1,150億円を融資し、抵当流しが行われた場合、抵当物件を売却しても600~800億程度しか残らない(550~350億円の損失)。そうなれば、金融機関のバランス・シートに傷が付いてしまい、不動産市況を悪化させてしまう為、余りにも影響が甚大である(「Too Big, to fail」の論理(注09))として、金融機関は「先延ばし」を適用した訳である(銀行が、無益に近いリファイナンスを受け入れた)(注10)。
 パシフィック・センチュリー・プレイスに関しては、デフォルトを宣告してしまった為、債権者に明け渡され、外資系不動産ファンド会社であるセキュアード・キャピタル・ジャパンが買収した(注11)。しかし、 これは内外の金融機関による「損失飛ばし(簿外にする)」の疑いがある。セキュアード社の買い値は1,400億円と、市場価格に合わない価格付けからも、やや怪しさの残る処理であった(注12)。ファンドによっては、現在の価格が下落していても、将来に値上がりする事を見越して、追加出資によるリファイナンスを選択する場合もあるが、ダヴィンチ社はその様な選択をする余裕はなかった、と推察される。
 株式会社ダヴィンチ・ホールディングスを含む、当時の主要な新興不動産ファンド運用会社は5社存在し、残る4社は「アーバンコーポレイション」、「パシフィックホールディングス」、「ケネディクス」、「アセット・マネジャーズ・ホールディングス」であった。アーバンコーポレイションとパシフィックホールディングスは破綻し倒産したが、ケネディクスは当時継続疑義が付されていた(注13、14)。唯一、アセット・マネジャーズ・ホールディングスのみが継続疑義を付されていなかった(現在も付されていない)。
 当時のケネディクスの課題は、2008年に竣工した、自己勘定による開発オフィスビルこと「KDX豊洲グランスクエア」(東京都江東区)であった。延べ面積が63,661平方メートルという巨大ビルであるものの、立地条件があまり良くない(注15)。希望売却価格は200~300億円とされていたが、テナントの占める面積が過大である故にハイリスクな物件であるとされ、現在も売却されていない。しかし、この件に関して本投資政策銀行等をアレンジャーとするブリッジファンドを組成し、短期借入金280億円に対する猶予を2年間得ている(注16)。恐らく、ブリッジファンドの猶予は未だ更新されているものと推測される。
 アセット・マネジャーズ・ホールディングスの場合、こちらは物件と言うよりは転換社債が焦点となっていた。2009年3月、社債繰り上げ償還が130億円とされていたが、同社のスポンサーの立ち位置である、アメリカの投資ファンド、「いちごアセットトラスト」(欧米の年金等を運用する、ユニットトラスト。後に「いちごグループホールディングス」に社名変更している)が、市場でアセット社の転換社債を65%買い取り、社債債権者集会の場で債権カット等を引き出す力業(Feat of strength)を見せ付けた(注17)。同社は、「簿価切り下げにより追加損失の発生する可能性は極めて低い」とし、「今後は攻めのステージに入る」と宣言していた。
 巨大過ぎるが故に潰せないと言う事情から、本来なら価格調整が行われ、下がった相場が次の投資を生むと言う正常な循環を、先送りと言う形で阻害した、と言う事件であると纏める事が出来よう。

〈補論01 脚注〉

注01)原典はムーディーズ・ジャパンによる。出所は「“CMBS爆弾”の恐怖 デフォルト続出で価格暴落も 不動産金融の『2010年問題』」(『週刊ダイヤモンド』、2009.06.06号、P75)。

注02)単純にサービサー(Servicer)とも言う。

資産の流動化・証券化に関するものと、債権管理回収業法(サービサー法。債権管理回収業に関する特別措置法 (平成十年十月十六日法律第百二十六号))上に基づくものの2つが存在するが、本件は後者を指している。
1999年2月に施行された、「債権管理回収業法」で法務省許可を受けたものが後者である。

以前は、事件性のある金銭債権の管理回収は、弁護士以外の者が取扱うことが禁じられていた(弁護士法72条、73条)。

しかし、弁護士法(昭和二十四年六月十日法律第二百五号)72条に記載されている様に、「別段の定め」となる、債権管理回収業法でその制約が解除され、許可を受けた会社には事件性のある金銭債権の取扱いが認められた。

2001年9月に業務範囲を拡大する改正法が施行され、取り扱えるノンバンク債権の範囲が拡大され、証券化に関連した金銭債権の扱いも可能となったが、本件で取り扱う事になる事例の時期は同法の改正後から、と言う事になる。

〔本稿で扱った法律の条文〕
【(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
「弁護士法第七十二条」
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。
ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。】

【(譲り受けた権利の実行を業とすることの禁止)
「第七十三条」
何人も、他人の権利を譲り受けて、訴訟、調停、和解その他の手段によつて、その権利の実行をすることを業とすることができない。】

(債権管理回収業法)
【第一条(目的)
この法律は、特定金銭債権の処理が喫緊の課題となっている状況にかんがみ、許可制度を実施することにより弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)の特例として債権回収会社が業として特定金銭債権の管理及び回収を行うことができるようにするとともに、債権回収会社について必要な規制を行うことによりその業務の適正な運営の確保を図り、もって国民経済の健全な発展に資することを目的とする。】

〈参考〉
「サービサー(証券投資用語辞典)」
http://secwords.com/%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%93%E3%82%B5%E3%83%BC.html

「弁護士法」
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S24/S24HO205.html#1000000000008000000004000000000000000000000000000000000000000000000000000000000

「債権管理回収業に関する特別措置法」
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H10/H10HO126.html

注03)しかし、後述する③の選択肢をスペシャル・サービサーが選択した場合、物件の叩き売り(Selling objects at discount prices)が発生しやすい。これが金融機関にとっては痛手となってしまう(担保物件価値も同時に押し下げる事になる為に、結果として金融機関自体の業績下押し要因となる)事から、やむなく自社のバランス・シートが棄損しない程度に、物件の選別を図りつつ、リファイナンスに応じる金融機関が多いそうである。頭の痛いところではあるが、リファイナンスも、先が改善しない限りは、問題の先送り(Postpone dealing with a problem)でしかなくなってしまうのである。

注04)「木の葉を隠すなら森の中(Where does a wise man hide a leaf? In the forest.)」とは、ギルバート・ケイス・チェスタトン(Gilbert Keith Chesterton)の推理小説である『ブラウン神父の童心(The Innocence of Father Brown)』の中の「折れた剣(The Sign of the Broken Sword)」に登場する名言である。しかし、実際には先の英文の和訳が変形し今の慣用句に変わったわけであるから、「The best place to hide a leaf is in a forest.」とした方が良いだろう。

注05)CMBSやRMBSはこの方式を採用する事で、大数の法則による統計信用度の上昇を図っている。大数の法則とは、「経験的確率と理論的確率が一致する」と言う、素朴な意味での確率を意味付け、定義付ける法則であるが、本件での厳密的な法則は、ヤコブ・ベルヌーイ(Jakob Bernoulli)に依る大数の弱法則である。

注06)この問題は、トランプゲームのハーツに例える事が出来る。仕組み債(CMBS)に、「スペードのクイーン(12)」(ハーツでは、このカードを持っていると罰則点が一番大きい)が入っていると考えれば宜しいだろう。
 大数の法則を働かせる意味は、仕組み債が現債権ポートフォリオの数倍から数十倍迄、「バランス・シートに現れない形でレバレッジを拡大させる」作用を持っている為だ。リーマン・ショック以前にも誰がスペードのクイーンを持っているのか分からない状況で、リーマン・ショックが発生した状況下では、真相は闇の中と片付けられても何ら不思議ではない。
 その銀行のバランス・シートに関し、アンナ・シュウォーツの名言がある。

「FRBは危機の原因が流動性不足にあると考えているようだ。だが根本的な問題は、それではない。市場にとっての根本的な問題は、金融機関のバランスシートを信用してよいのか、不確実になったことである」

〈参考〉
Committee on the Global Finance System, “The Role of Valuation and Leverage in Procylicality”, Vox EU.org, c2009, April.
アンナ・シュウォーツ「ウォールストリート・ジャーナル紙の取材に応えて」(2008.10.18-19)

注07)「クローズアップ株式:パシフィックホールディングス、会社更生法申請(倒産)で上場廃止」
http://kabushiki-blog.com/s/article/115432157.html
上記のウェブサイトが引用した帝国データバンクの記事が参考になる(現在の帝国データバンクの本リンクは消滅して閲覧不可能)。

【私募不動産ファンド運用の持ち株会社 東証1部上場 パシフィックホールディングス株式会社など3社 会社更生法の適用を申請 負債3265億2200万円

「東京」 パシフィックホールディングス(株) (資本金196億3947万4550円、千代田区永田町2-11-1、代表織井渉氏ほか1名、 従業員171名)と子会社のパシフィックリアルティ (株)(資本金1億円、同所、代表秋澤昭一氏)、(有)パシフィック・プロパティーズ・インベストメント(資本金300万円、同所、秋澤昭一氏)の3社は、 3月10日に東京地裁へ会社更生法の適用を申請し、同日保全命令を受けた。】

【(中略)サブプライムローン問題に端を発した金融機関の融資姿勢の厳格化および不動産市況の急速の悪化に伴い保有不動産の売却が進まず資金繰りが悪化。また物件購入見合わせによる違約金の発生や物件売却に伴う損失計上を見込み、 2008年11月期では当期純損失約180億円に業績を下方修正。(中略)11月には第三者割当増資による資金調達を発表したが、優先株式による調達資金約468億円のうち、現物出資を予定していた社債約270億円の払い込みはなされなかった。その後、新たに470億円の優先株式発行による増資交渉を進めていたものの、2008年11月期に大幅な赤字決算となり債務超過に転落したことから、金融機関からの借り入れに関し財務制限条項に抵触、継続企業の前提に関する注記がなされるなどしたことでその後も増資交渉が難航。監査法人からは意見不表明を受けるなど動向が注目されていた。】


注08)ダヴィンチ芝パークビルは、延べ床面積が10.3万平米で、全長140メートル、奥行き 50メートルと言う威容さから、「軍艦ビル」と称されていた。

注09)「破綻させると経済が大混乱に陥るから、救済せざるを得ない」というのが、本来の救済に対する論理である。換言するならば、「これらの会社は破綻させるには大きすぎる」(「Too big to fail」)となる。元々は、リーマン・ショックに於ける、欧米の銀行に政府資金が注入されたという話でよく聞かれるようになったワードである。

参考
片瀬恵次郎「蔓延する「Too big to fail」」(2009.07.29)
http://www.dir.co.jp/library/column/090729.html

注10)「金融界に 「ダヴィンチ・ショック」の警戒警報」(『FACTA』2010.04)
http://facta.co.jp/article/201004018.html
に依れば、「ダヴィンチ・ショックはパンドラの箱を開けることになる」(金融関係者)として、「法的整理のような明確な破綻は避けるべき」との声が金融当局の周辺から上がった。ダヴィンチ関連の融資返済期限の延長にできる限り応じて、塩漬けの形で問題を先送りにする動きに結びついている、と言うものである。

注11)パシフィック・センチュリー・プレイスのダヴィンチ社による当時の買収価格は2,000億円とされ、新生銀行とメリルリンチ等が1,700億円の融資を行っているが、市場価格は900~1,200億円程度しかなかったとされている。

注12)「新生銀行『焼け石に水』の弥縫策」(『FACTA』2010.02)
https://facta.co.jp/article/201002004.html

注13)「継続企業の前提に関する事項の注記に関するお知らせ」(2009.02.13)
http://www.kenedix.com/cms/whats/20090528_174508PzJw.pdf
注14)後に継続疑義が解消されている。

【11日大引け後に、「8月11日に発表した2009年12月期第2四半期決算短信において、『継続疑義の前提に関する注記』の記載を解消した」と発表したことが安心感を誘った。】

参考
「ケネディクス(4321)が継続疑義注記解消しストップ高で配分」(『サーチナ』、2009.08.12)
http://m.searchina.ne.jp/news/disp.cgi?y=2009&d=0812&f=business_0812_054.shtml

注15)豊洲駅や東雲駅から徒歩12分の為、都営バスや無料送迎バスを利用する客も多い。主観では、徒歩12分は遠いうちに入らないのだが、どうやら問題はその無料送迎バスの本数に因るもので、何らかの対策が為されれば、幾分ハンディが解消される可能性はある。

参考
「KDX豊洲グランスクエア」(Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/KDX%E8%B1%8A%E6%B4%B2%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%82%A8%E3%82%A2

注16)注13と同じ。

注17)繰り上げ償還時期を4ヶ月繰り下げて、債権カットを行った為繰り上げ償還のみの価格が65億円に圧縮された。満期償還のみの場合でも、当時の転換社債の満期が2011年3月であったものを1年延長し、債権カットにより117億円の償還となった。

〔補論01資料 物件売却リスト〕

〈出典〉
「特集 ゼネコン 不動産 崖っ縁決算 不動産編 PART6」(『週刊ダイヤモンド』2009.06.06、P73)

「日経BP社プレスリリース」(2007.10.24)
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/NFM/NikkeiRealEstate1024Japanese1.pdf

〔当時出回ったダヴィンチ・ホールディングスの主な不動産と同社の希望売却価格〕

※印が付記された物件は、DAオフィス投資法人が保有している物件であり、価格は取得価格を示している。
Not Availableは不詳の内容。

パシフィックセンチュリープレイス(オフィス部分)(東京都千代田区)
占有面積:38,788平方メートル
希望売却価格:2,066億円
当社購入額:2,000億円(注1)
確定売却額:1,400億円(注2)
現在の所有者:セキュアード・キャピタル・ジャパン、東日本旅客鉄道(JR東日本)

ダヴィンチ芝パークビル(東京都港区)
占有面積:83,509平方メートル
希望売却価格:1,664億円
当社購入額:1,430億円(注3)
確定売却額:未売却
現在の所有者:ダヴィンチ・アドバイザーズ(ダヴィンチ・ホールディングス)

新宿マインズタワー(東京都渋谷区)
占有面積:97,979平方メートル
希望売却価格:1,338億円(※)
当社購入額:651億円(注4)
確定売却額:1,338億円(注5)
現在の所有者:大和証券オフィス投資法人

国際赤坂ビル(東京都港区)
占有面積:36,312平方メートル
希望売却価格:882億円
当社購入額:1,000億円(注6)
確定売却額:Not Available.
現在の所有者:ローン・スター・ファンド

カナルサイドビル(東京都品川区)
占有面積:24,042平方メートル
希望売却価格:222億円
当社購入額:222億円(注7)
確定売却額:Not Available.
現在の所有者:日本GE(ゼネラル・エレクトリック)(注8)

グラスシティ渋谷(東京都渋谷区)
占有面積:8,552平方メートル
希望売却価格:188億円
当社購入額:Not Available.
確定売却額:Not Available.
現在の所有者:Aviva Investors、セキュアード・キャピタル・インベストメント・マネジメント(注9)

ダヴィンチ銀座(現Daiwa銀座ビル)(東京都中央区)
占有面積:12,660平方メートル
希望売却価格:141億円(※)
当社購入額:141億円(注10)
確定売却額:141億円(注11)
現在の所有者:大和証券オフィス投資法人

ダヴィンチ御成門(現Daiwa御成門ビル)(東京都港区)
占有面積:13,805平方メートル
希望売却価格:138億円(※)
当社購入額:138億6,000万円(注10)
確定売却額:138億6,000万円(注11)
現在の所有者:大和証券オフィス投資法人

芝公園三丁目ビル(旧:ダヴィンチ芝公園)(東京都港区)
占有面積:7,687平方メートル
希望売却価格:134億円
当社購入額:Not Available.
確定売却額:Not Available.
現在の所有者:Not Available.

東京パークサイドビル(東京都江東区)
占有面積:12,878平方メートル
希望売却価格:133億円
当社購入額:Not Available.
確定売却額:Not Available.
現在の所有者:Not Available.

新堀留ビル(東京都中央区)
占有面積:8,557平方メートル
希望売却価格:112億円
当社購入額:Not Available.
確定売却額:56億円(注12)
現在の所有者:常和不動産株式会社(常和ホールディングス株式会社)(注12)


注1)「「不動産ローン破綻」が呼ぶ二番底」(『FACTA』2009年11月号)
http://www10.plala.or.jp/tika-infre/tore-09-11.html

注2)「米系不動産ファンド、東京駅近接のビルを1400億円で買収」(『日本経済新聞』2009 年12月15日)

注3)『日本経済新聞』2006年7月4日

注4)「DAオフィス投資法人が投資口の追加発行、物件取得及び売却、業績予想修正を発表」(2007.06.15)
http://morningstar.japan-reit.com/news/00396.html

注5)「J-REIT銘柄情報 8976 大和証券オフィス投資法人」
http://www.japan-reit.com/meigara/8976/portfolio/
注6)「ダヴィンチ、都内の大型オフィスビル3棟を売却へ=関係筋」(『Reuter』2009.03.03)
http://jp.reuters.com/article/fundsNews/idJPJAPAN-36776320090303
の数字から推定したもの。

注7)「J-REIT情報 モーニングスタージェイリート投資法人/ポートフォリオ」
http://morningstar.japan-reit.com/page/port3253.html

注8)松村徹「ニッセイ基礎研究所不動産投資レポート 不動産クォータリー・レビュー 2011年第3四半期 ようやく下げ止まった東京都心のオフィス賃料」(2011.10.28)
http://www.nli-research.co.jp/report/real_estate_report/2011/fudo111028.pdf

注9)「【売買】グラスシティ渋谷を取得、英Avivaとセキュアード」(日経不動産マーケット情報(ケンプラッツ))
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/nfm/news/20121126/592989/

注10)「DAオフィス投資法人 第3期(平成19年5月期)決算説明会資料」
http://www.daiwa-office.co.jp/site/file/tmp-kVnqV.pdf

注11)「ポートフォリオ一覧」(大和証券オフィス投資法人)
http://www.daiwa-office.co.jp/ja_cms/portfolio/port_list.html

注12)常和ホールディングス株式会社「当社連結子会社による固定資産の取得に関するお知らせ」
http://www.jowa-hd.co.jp/news/pdf/2012/20120724_1.pdf




補論01(途中稿)

2014-01-12 23:02:50 | CMBS論集用小ネタ
〔補論01 2010年問題〕

 裏付けローンとなるノンリコースローンの多くは、ローンの返済期限(満期)を約3年のタームに設定し、契約している。例えば、2011年4月1日にノンリコースローンを3年のタームで組んだ場合、返済期限は2014年3月31日となる。
 問題は、ノンリコースローンの発行額が契約年に増えれば増えるだけ、返済必要件数も数年後に増える事になるので、債務者がデフォルトを起こすリスクが高まる。
 リファイナンスする場合、金融機関がその地に止まっている事が、当たり前のようだが必須条件である。しかし、リーマン・ショックの余波で環境が一変し、外資系金融機関は日本国内から相次ぎ撤退した。他にリファイナンスを行う金融機関が見つかれば別に問題はない訳だが、その金融機関が見つからないからこそ問題となった。
 金融機関が見つからない要因として、当時(2007年頃迄)、CMBSのローンに、収益性の低い中・小型のビルや地方商業施設等を大量に組み込んだものを、高利回りの確保を目的に、当時の金融機関が出回らせた事にある。リーマン・ショックで「夢から覚めた(Awaked from an illusion)」金融機関は、「リファイナンスしたところで時間稼ぎにもならない様な物件(リファイナンスして、その3年で潰れる蓋然性が高いような物件)」が混じっていた場合、リファイナンスの要請を拒絶する。その事由が大きくリファイナンスの件数を減少させたと言えよう。
 リファイナンスの道が閉ざされた場合、残された道は2つある。一括で返済する資金を用意するか、デフォルトするか、である。デフォルトが発生した場合、ローンの発行体である金融機関やファンドは不良債権を抱え、CMBSの保有者である機関投資家や銀行も損失を被る事になる。
 2010年問題は、返済期限を迎えるローン残高が、約1兆2,000億円(注01)と飛び抜けて高い数字となった事からついた呼称である。だからと言って、その後が危機的な水準でなかったかと言われれば、そうではない。
 確かに急激に裏付けローン残高は減少しているものの、2010年から2012年に掛けて、ローン残高の合計額は約2兆7,000億円(2010年を抜いた場合約1兆5,000億円)に及ぶ。2013年、2014年以降のローン残高はそれぞれ約2,000億円、約1,000億円と激減しているのでそう問題になるとは考えにくい。約2兆7,000億円という数字が大きすぎてピンと来ない方もいるだろうが、これは三菱地所の年間ビル賃貸収入(約3,375億円)の約8年分である。
 まず、ローン債権がデフォルトとなった場合のシナリオを押さえておくと、専門の債権回収会社や弁護士が「スペシャル・サービサー(注02)」となり、担保に設定された不動産の状況を把握し、投資家(CMBS購入者)の資金回収に着手する事になる。
 その回収手段だが、主に3種類の選択肢がある。①ローンのリファイナンスの再申請②ローン債権そのものを売却してしまう③担保不動産の売却、となる。
 ①は原理的には可能だが、不動産価格が上昇(回復)しない限り担当者は首を横に振る(Decline the offer)だけだろう(注03)。②の場合、これは金融市場の趨勢にも拠る部分があるが、現在ではローン債権自体を売却するよりも担保不動産を売却した方が高く売れるケースが多い為、選択されにくい(勿論、金融市況が逆転すれば、話は変わってくる)。選択肢は自ずと③、つまりCMBSに指定された物件の売却と言う事になってくる訳だが、これも多少手間が掛かってくる。
 先程のリファイナンスされない事由に挙げた様に、CMBSは基本的には、「複数の不動産」を担保としたローン債権を複数用意して、それらを再び束ね、分割する手順を踏んでいる。ややこしい様だが、簡単に言うならば、「木の葉を隠すなら森の中(Where does a wise man hide a leaf? In the forest.)」(注04)である。
 例えば、A、B、Cの三種類の担保不動産があるとしよう。これらを一つに纏め、ローン債権αを作り出す。アルファベットが若い順に信用度の高い(クレディブルな)良好物件であると言う仮定を置く。同様に、D、E、Fの担保不動産でローン債権βを作り、G、H、Iの担保不動産でローン債権γを作る。ローン債権α、β、γを束ね、CMBS(ここではδと称する)を作る。CMBSδを切り餅(パイでもよい)の様に分割する(今回は、9つの担保不動産を使ったので、9つに分割する事とする)訳だが、クレディブルな物件とインクレディブルな物件が混ざると、クレディブルな物件を引き当てる確率もインクレディブルな物件を引き当てる確率も1/9(約11%)となる(注05)。リーマン・ショックで問題になったのは、この不透明性の強化で、どの切り餅に毒が入っているのかが分からなくなってしまった事に起因する訳である(注06)。
 ここで話を元に戻すが、重要な事は、CMBSを一つ紐解くと、大量の担保不動産に行き着くと言う事である。先程も書いた様に、物件はクレディブルな物件とインクレディブルな物件に分類出来る訳であり、クレディブルな物件(例えば東京都都心のオフィスビル)ならば、需要がそれなりに有るので買い手もそれなりにつくだろう。

 しかし、問題はインクレディブルな物件(例えば、地方郊外のオフィスビル)である。需要が薄く、買い手がなかなかつかないので、売却確定迄のタームが長くなる事は予想の範疇となるだろうが、現実では、事態の長期化が予想された場合、全物件の売却から回収額確定迄に1~2年のタームを要するとされている。
 このCMBS自体も、内部でランク付けが行われている事も押さえておきたい。鮪(tuna)の部位毎に名前や味、価格が違う(例えば一般に大トロと呼ばれる部位は美味しく、値段もそれなりに高い)様に、CMBSも投資リスクに依って階層を分ける事が出来る。
 これは、「信用補完」と言う措置によるもの(一般投資家に販売される証券化商品について、債務の弁済を担保し、商品の信用を高める為の措置)である。内部信用補完の、優先劣後構造と言うシステムが該当する。
 優先劣後構造とは、証券化商品を優先部分と劣後部分に分け、優先部分を保有する投資家は、劣後部分を保有する投資家より優先的に配当等を受け取る権利を持つ仕組みを指す。予測どおりに収益が生じなかった場合のリスクを劣後部分が吸収し、優先部分への配当等の確実性を高める。結果的には、優先部分は劣後部分に比べてリターンは低くなるものの、安定性が高く、劣後部分はハイリスク・ハイリターンとなる。ここで、優先劣後構造を設ける事を、トランチング(Tranching)と称し、各部分をトランシェ(Tranche)と称する。
 CMBSは主に、「シニア」、「メザニン」、「エクイティ(劣後)」に分類される。シニアに近づくほど、資金回収の優先度が高く、利回り(利息収入)は低い(資金回収優先度と利息収入がトレード・オフ関係にある)事になる(エクイティはシニアの対極であり、メザニンは中間の位置付けとなる)。
 「シニア(Senior)」は、通常の貸付と同じようなものであり、金銭商品貸借契約に従って、『いつ・いくら支払う』というものが契約上定められていて、 その契約上の取決めを破ると、債務不履行(デフォルト)になる。「メザニン(Mezzanine)」は「中二階」という意味だが、「シニア」と「エクイティ」の間にある事に由来する。このうち、劣後ローンは調達先から見れば「負債」だが、 通常はシニアの返済が問題ない水準でなければ、 劣後ローン等を返済不可能となるような契約となっているのが通例である。
 よく見かけるケースとしての例は、①シニアとメザニンにおける関係者間合意書(Inter Creditor Agreement)が締結され、 契約によって劣後の扱いを受けることを合意させる②償還期限がシニアよりも長く設定されている(期間劣後)③残余財産分配権に関する劣後条項(返済に関する劣後)④一定の財務比率をクリアしなければ、強制的に弁済が繰り延べられる条項⑤一定水準以上の現預金が存在する場合の、シニアの強制期限前弁済条項⑥優先株式(エクイティ)の場合は、法的な債務では無いため、法的債務(デット)にそもそも劣後する、等といった条項を契約に入れる事によって、シニアよりも返済順位を劣後させる事になる。返済条件等に関する優先順位(リスク)については、上述の通りだが、 経済条件(リターン)については、リスクが高いほど高くなるので(ハイリスク・ハイリターン)、 エクイティが最も高いリターンを要求する事になる(例えば、シニア:~5%、メザニン:5~15%、エクイティ:20%~、と設定する)。
 ここで話を戻すが、リスクが低く優先的に資金を回収可能であるシニアレイヤーの機関投資家は、スペシャル・サービサーに物件売却を急がせる戦術を採用するだろう(多少割安な売却価格でも、自身が投資した金額を全額回収出来る可能性がある為)。対照的に、メザニン以下のシニアレイヤーに劣後するレイヤーの場合、思惑が変化してくる。回収率を少しでも高める為に「待ち」の戦略を採用する事で、延長期間の利息収入を受領しつつより高値で売却する戦術を好む。
 しかし、スペシャル・サービサーは投資家の採用する戦術で動く為、両者の利害調整に時間を割くケースもある。基本的には、関係者間合意書内にシニアレイヤーの意向優先の契約条文が含まれている事が多いが、それが含まれていなかった場合に先程の状況に陥るケースが多い。

 基礎を押さえたところで本題に話を移すが、2010年問題で、苦境の様相をまず世に知らしめたのは、強気の価格付けで有名となった 「パシフィックセンチュリープレイス丸の内」の保有者である、「ダヴィンチ・ホールディングス」である。
 株式会社ダヴィンチ・ホールディングスは、東京都港区に本社を置く持株会社であり、傘下に不動産投資顧問事業や投資事業など を行う子会社を持っている企業である。設立も1998年と若く、新興不動産企業の中でも飛び抜けて運用資産が多く、1兆円以上の不動産を運用していた企業である。しかし、2010年6月に株価基準が上場基準を満たさなくなり、上場が廃止された経緯を持つ。他にも、同業者であったパシフィック・ホールディングスは2009年3月に経営破綻し、既に倒産している(注07)。
 ダヴィンチ・ホールディングス社は、2008年12月期決算期、金融収縮と不動産市況悪化の煽りを受け、179億円の巨額な純損失を出し、赤字に転落した。リファイナンスも上手く行かなくなり、監査法人から「継続疑義」(有価証券報告書等の決算書内にある「継続企業の前提に関する注記」の項目に「重大な疑義」という注意書きがある状態を指す。要するに「この会社は危ない」と監査法人が注意喚起している状況である)の注記が付される程に経営が暗礁に乗り上げている状況であった。179億円の赤字の中、当時連結ベース(運用している私募ファンドも含めた)の、ノンリコースローン返済額は3,888億円(三菱地所の年間ビル賃貸収入(約3,375億円)よりも多い)であった。
 なりふり構っていられなくなったのか、同社が保有する50件弱存在したオフィスビルの「全物件を売却する」と言う噂が立った。その噂を裏付けたのは、表に出てこない為、やや怪しさの残るものではあるが、「物件売却リスト」(〈資料 物件売却リスト〉)が出回ったのである。資料から、おおよそのリストに載っている、ダヴィンチ社が取得した当時の価格と実際の売却価格は分かると思われるが、大分乖離している。
 例えば、最高額の取得価格で有名となったダヴィンチ芝パークビル(通称:軍艦ビル(注08))は、ダヴィンチの運用する子会社であるカドベが1,430億円で落札した訳だが、後の市場価値は600億から800億円(2009年時点)程度とされており、取得時の約半分である。ちなみに金融機関(中央三井トラスト・ホールディングスやメリルリンチ等)は、この買収に対し、約1,150億円の融資を行い、一部は証券化されている。売却リストに上がったはいいが、結論としてはこの物件は売れなかった(と言うよりは、売らせなかった、と言うべきだろう)。
 ダヴィンチ社の金子修社長は、2009年の決算説明会で、物件の評価額が借入金に届かなかった場合の対応について、「デフォルトしかないだろう」と述べている。堂々と言ってのけられるのも、そもそものローンの仕組みにある。ノンリコースローンは、担保不動産を融資担当の金融機関に差し出せばそれ以上の返済は不要となる為、物件価値が大きく毀損した物件を売却し、赤字清算するよりかは、物件を手渡して清算する方が得策である事は確かである。
 だが、それはあくまでもダヴィンチ社側の論理であり、金融機関の論理は異なる。

〈補論01 脚注〉

注01)原典はムーディーズ・ジャパンによる。出所は「“CMBS爆弾”の恐怖 デフォルト続出で価格暴落も 不動産金融の『2010年問題』」(『週刊ダイヤモンド』、2009.06.06号、P75)。

注02)単純にサービサー(Servicer)とも言う。

資産の流動化・証券化に関するものと、債権管理回収業法(サービサー法。債権管理回収業に関する特別措置法 (平成十年十月十六日法律第百二十六号))上に基づくものの2つが存在するが、本件は後者を指している。
1999年2月に施行された、「債権管理回収業法」で法務省許可を受けたものが後者である。

以前は、事件性のある金銭債権の管理回収は、弁護士以外の者が取扱うことが禁じられていた(弁護士法72条、73条)。

しかし、弁護士法(昭和二十四年六月十日法律第二百五号)72条に記載されている様に、「別段の定め」となる、債権管理回収業法でその制約が解除され、許可を受けた会社には事件性のある金銭債権の取扱いが認められた。

2001年9月に業務範囲を拡大する改正法が施行され、取り扱えるノンバンク債権の範囲が拡大され、証券化に関連した金銭債権の扱いも可能となったが、本件で取り扱う事になる事例の時期は同法の改正後から、と言う事になる。

〔本稿で扱った法律の条文〕
【(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
「弁護士法第七十二条」
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。
ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。】

【(譲り受けた権利の実行を業とすることの禁止)
「第七十三条」
何人も、他人の権利を譲り受けて、訴訟、調停、和解その他の手段によつて、その権利の実行をすることを業とすることができない。】

(債権管理回収業法)
【第一条(目的)
この法律は、特定金銭債権の処理が喫緊の課題となっている状況にかんがみ、許可制度を実施することにより弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)の特例として債権回収会社が業として特定金銭債権の管理及び回収を行うことができるようにするとともに、債権回収会社について必要な規制を行うことによりその業務の適正な運営の確保を図り、もって国民経済の健全な発展に資することを目的とする。】

〈参考〉
「サービサー(証券投資用語辞典)」
http://secwords.com/%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%93%E3%82%B5%E3%83%BC.html

「弁護士法」
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S24/S24HO205.html#1000000000008000000004000000000000000000000000000000000000000000000000000000000

「債権管理回収業に関する特別措置法」
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H10/H10HO126.html

注03)しかし、後述する③の選択肢をスペシャル・サービサーが選択した場合、物件の叩き売り(Selling objects at discount prices)が発生しやすい。これが金融機関にとっては痛手となってしまう(担保物件価値も同時に押し下げる事になる為に、結果として金融機関自体の業績下押し要因となる)事から、やむなく自社のバランス・シートが棄損しない程度に、物件の選別を図りつつ、リファイナンスに応じる金融機関が多いそうである。頭の痛いところではあるが、リファイナンスも、先が改善しない限りは、問題の先送り(Postpone dealing with a problem)でしかなくなってしまうのである。

注04)「木の葉を隠すなら森の中(Where does a wise man hide a leaf? In the forest.)」とは、ギルバート・ケイス・チェスタトン(Gilbert Keith Chesterton)の推理小説である『ブラウン神父の童心(The Innocence of Father Brown)』の中の「折れた剣(The Sign of the Broken Sword)」に登場する名言である。しかし、実際には先の英文の和訳が変形し今の慣用句に変わったわけであるから、「The best place to hide a leaf is in a forest.」とした方が良いだろう。

注05)CMBSやRMBSはこの方式を採用する事で、大数の法則による統計信用度の上昇を図っている。大数の法則とは、「経験的確率と理論的確率が一致する」 と言う、素朴な意味での確率を意味付け、定義付ける法則であるが、本件での厳密的な法則は、ヤコブ・ベルヌーイ(Jakob Bernoulli)に依る大数の弱法則である。

注06)この問題は、トランプゲームのハーツに例える事が出来る。仕組み債(CMBS)に、「スペードのクイーン(12)」(ハーツでは、このカードを持っていると罰則点が一番大きい)が入っていると考えれば宜しいだろう。
 大数の法則を働かせる意味は、仕組み債が現債権ポートフォリオの数倍から数十倍迄、「バランス・シートに現れない形でレバレッジを拡大させる」作用を持っている為だ。リーマン・ショック以前にも誰がスペードのクイーンを持っているのか分からない状況で、リーマン・ショックが発生した状況下では、真相は闇の中と片付けられても何ら不思議ではない。
 その銀行のバランス・シートに関し、アンナ・シュウォーツの名言がある。

「FRBは危機の原因が流動性不足にあると考えているようだ。だが根本的な問題は、それではない。市場にとっての根本的な問題は、金融機関のバランスシートを信用してよいのか、不確実になったことである」

〈参考〉
Committee on the Global Finance System, “The Role of Valuation and Leverage in Procylicality”, Vox EU.org, c2009, April.
アンナ・シュウォーツ「ウォールストリート・ジャーナル紙の取材に応えて」(2008.10.18-19)

注07)「クローズアップ株式:パシフィックホールディングス、会社更生法申請(倒産)で上場廃止」
http://kabushiki-blog.com/s/article/115432157.html

上記のウェブサイトが引用した帝国データバンクの記事が参考になる(現在の帝国データバンクの本リンクは消滅して閲覧不可能)。

【私募不動産ファンド運用の持ち株会社 東証1部上場 パシフィックホールディングス株式会社など3社 会社更生法の適用を申請 負債3265億2200万円

「東京」 パシフィックホールディングス(株) (資本金196億3947万4550円、千代田区永田町2-11-1、代表織井渉氏ほか1名、 従業員171名)と子会社のパシフィックリアルティ (株)(資本金1億円、同所、代表秋澤昭一氏)、(有)パシフィック・プロパティーズ・インベストメント(資本金300万円、同所、秋澤昭一氏)の3社は、 3月10日に東京地裁へ会社更生法の適用を申請し、同日保全命令を受けた。】

【(中略)サブプライムローン問題に端を発した金融機関の融資姿勢の厳格化および不動産市況の急速の悪化に伴い保有不動産の売却が進まず資金繰りが悪化。また物件購入見合わせによる違約金の発生や物件売却に伴う損失計上を見込み、 2008年11月期では当期純損失約180億円に業績を下方修正。(中略)11月には第三者割当増資による資金調達を発表したが、優先株式による調達資金約468億円のうち、現物出資を予定していた社債約270億円の払い込みはなされなかった。その後、新たに470億円の優先株式発行による増資交渉を進めていたものの、2008年11月期に大幅な赤字決算となり債務超過に転落したことから、金融機関からの借り入れに関し財務制限条項に抵触、継続企業の前提に関する注記がなされるなどしたことでその後も増資交渉が難航。監査法人からは意見不表明を受けるなど動向が注目されていた。】

注08)ダヴィンチ芝パークビルは、延べ床面積が10.3万平米で、全長140メートル、奥行き 50メートルと言う威容さから、「軍艦ビル」と称されていた。




補論1用資料1

2014-01-12 23:00:37 | CMBS論集用小ネタ
(下記のネタは、新規に書き下ろしているCMBS論の補論に使われる予定の資料)

〔補論01資料 物件売却リスト〕

〈出典〉
「特集 ゼネコン 不動産 崖っ縁決算 不動産編 PART6」(『週刊ダイヤモンド』2009.06.06、P73)

「日経BP社プレスリリース」(2007.10.24)
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/NFM/NikkeiRealEstate1024Japanese1.pdf

〔当時出回ったダヴィンチ・ホールディングスの主な不動産と同社の希望売却価格〕

※印が付記された物件は、DAオフィス投資法人が保有している物件であり、価格は取得価格を示している。
Not Availableは不詳の内容。

パシフィックセンチュリープレイス(オフィス部分)(東京都千代田区)
占有面積:38,788平方メートル
希望売却価格:2,066億円
当社購入額:2,000億円(注1)
確定売却額:1,400億円(注2)
現在の所有者:セキュアード・キャピタル・ジャパン、東日本旅客鉄道(JR東日本)

ダヴィンチ芝パークビル(東京都港区)
占有面積:83,509平方メートル
希望売却価格:1,664億円
当社購入額:1,430億円(注3)
確定売却額:未売却
現在の所有者:ダヴィンチ・アドバイザーズ(ダヴィンチ・ホールディングス)

新宿マインズタワー(東京都渋谷区)
占有面積:97,979平方メートル
希望売却価格:1,338億円(※)
当社購入額:651億円(注4)
確定売却額:1,338億円(注5)
現在の所有者:大和証券オフィス投資法人

国際赤坂ビル(東京都港区)
占有面積:36,312平方メートル
希望売却価格:882億円
当社購入額:1,000億円(注6)
確定売却額:Not Available.
現在の所有者:ローン・スター・ファンド

カナルサイドビル(東京都品川区)
占有面積:24,042平方メートル
希望売却価格:222億円
当社購入額:222億円(注7)
確定売却額:Not Available.
現在の所有者:日本GE(ゼネラル・エレクトリック)(注8)

グラスシティ渋谷(東京都渋谷区)
占有面積:8,552平方メートル
希望売却価格:188億円
当社購入額:Not Available.
確定売却額:Not Available.
現在の所有者:Aviva Investors、セキュアード・キャピタル・インベストメント・マネジメント(注9)

ダヴィンチ銀座(現Daiwa銀座ビル)(東京都中央区)
占有面積:12,660平方メートル
希望売却価格:141億円(※)
当社購入額:141億円(注10)
確定売却額:141億円(注11)
現在の所有者:大和証券オフィス投資法人

ダヴィンチ御成門(現Daiwa御成門ビル)(東京都港区)
占有面積:13,805平方メートル
希望売却価格:138億円(※)
当社購入額:138億6,000万円(注10)
確定売却額:138億6,000万円(注11)
現在の所有者:大和証券オフィス投資法人

芝公園三丁目ビル(旧:ダヴィンチ芝公園)(東京都港区)
占有面積:7,687平方メートル
希望売却価格:134億円
当社購入額:Not Available.
確定売却額:Not Available.
現在の所有者:Not Available.

東京パークサイドビル(東京都江東区)
占有面積:12,878平方メートル
希望売却価格:133億円
当社購入額:Not Available.
確定売却額:Not Available.
現在の所有者:Not Available.

新堀留ビル(東京都中央区)
占有面積:8,557平方メートル
希望売却価格:112億円
当社購入額:Not Available.
確定売却額:56億円(注12)
現在の所有者:常和不動産株式会社(常和ホールディングス株式会社)(注12)

注1)「「不動産ローン破綻」が呼ぶ二番底」(『FACTA』2009年11月号)
http://www10.plala.or.jp/tika-infre/tore-09-11.html

注2)「米系不動産ファンド、東京駅近接のビルを1400億円で買収」(『日本経済新聞』2009 年12月15日)

注3)『日本経済新聞』2006年7月4日

注4)「DAオフィス投資法人が投資口の追加発行、物件取得及び売却、業績予想修正を発表」(2007.06.15)
http://morningstar.japan-reit.com/news/00396.html

注5)「J-REIT銘柄情報 8976 大和証券オフィス投資法人」
http://www.japan-reit.com/meigara/8976/portfolio/

注6)「ダヴィンチ、都内の大型オフィスビル3棟を売却へ=関係筋」(『Reuter』2009.03.03)
http://jp.reuters.com/article/fundsNews/idJPJAPAN-36776320090303
の数字から推定したもの。

注7)「J-REAT情報 モーニングスタージェイリート投資法人/ポートフォリオ」
http://morningstar.japan-reit.com/page/port3253.html

注8)松村徹「ニッセイ基礎研究所不動産投資レポート 不動産クォータリー・レビュー 2011年第3四半期 ようやく下げ止まった東京都心のオフィス賃料」(2011.10.28)
http://www.google.co.jp/url?sa=t&source=web&cd=5&ved=0CDUQFjAE&url=http%3A%2F%2Fwww.nli-research.co.jp%2Freport%2Freal_estate_report%2F2011%2Ffudo111028.pdf&ei=rYPSUsvlJsafkQWMiYDAAg&usg=AFQjCNGYhKcJbONg5rlUlCcNPQvGjyqW6Q

注9)「【売買】グラスシティ渋谷を取得、英Avivaとセキュアード」(日経不動産マーケット情報(ケンプラッツ))
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/nfm/news/20121126/592989/

注10)「DAオフィス投資法人 第3期(平成19年5月期)決算説明会資料」
http://www.google.co.jp/url?sa=t&source=web&cd=6&ved=0CEMQFjAF&url=http%3A%2F%2Fwww.daiwa-office.co.jp%2Fsite%2Ffile%2Ftmp-kVnqV.pdf&ei=7H7SUqjtNNGYlAWyxYGoDw&usg=AFQjCNHfwonMZqXvoh7lXh3ACH2bBX_1bw

注11)「ポートフォリオ一覧」(大和証券オフィス投資法人)
http://www.daiwa-office.co.jp/ja_cms/portfolio/port_list.html

注12)常和ホールディングス株式会社「当社連結子会社による固定資産の取得に関するお知らせ」
http://www.google.co.jp/url?sa=t&source=web&cd=1&ved=0CCoQFjAA&url=http%3A%2F%2Fwww.jowa-hd.co.jp%2Fnews%2Fpdf%2F2012%2F20120724_1.pdf&ei=25LSUtu3B4rdkgW124DgCA&usg=AFQjCNF-1p2QP1hJ25J3eY8lbajnp4qj5g