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ハコ 終

2006-05-29 03:15:07 | いやん


幾日たったかわからなくなったころ、

大家さんは相変わらず勢いよく部屋のドアを叩いていた。

私は ウルサイネェ と苦笑いをした。

横にいる酒井さんも苦笑い。



私、いや私たちは段ボールの中にいる。

ここは暖かくてお腹も空かなくて、色んな人がいて退屈しない。

中で私は酒井さんと、


「私はあなたほどお家賃滞納してなかったわよ?」

「あら!お互い様でしょー!失礼しちゃう!」


なんて言って笑いながらじゃれあって遊んでいた。

もう外の事はどうでも良かった。


危なくて汚くて混沌とした外よりも、
こっちにいた方がずっと良い。



だから私たちは、外にいる人を助けてあげるために、
また誰かの部屋に行かなければならない。


「今度はどこにいこうか?」


そう皆で相談して、
















 アナタの家に決めた。









               待っててね☆










ハコ5

2006-05-29 03:05:34 | いやん
ズルズルッ ズルズルッ ズルッ

ズルズルッ ズルズルッ ズルッ

ズルズルッ ズルズルッ ズルッ



段ボールは床を這って、確実に私に近づいてきた。

私は口を魚のようにパクパクさせながら叫んだ。


ギィヤァァッッッッァァアアアアーーーーーーー!!!





ズルズルッ ズルズルッ ズルッ

ズルズルッ ズルズルッ ズルッ

ズルズルッ ズルズルッ ズルッ





ズルズルッ ズルズルッ ズルッ

ズルズルッ ズルズルッ ズルッ

ズルズルッ ズルズルッ ズルッ






つづく


ハコ4

2006-05-29 02:39:09 | いやん

「変なデマを信じないように!!」


といわれても、目の前にあるあの段ボールをどう見ればいい!?

私は動悸と冷や汗が止まらなく、とにかくこの場から離れようと後ずさった。

けれど電気が思うようにつかないので、カーペットに足を取られて、大きく尻もちをついた。


ハァーハァーハァーハァー
ハァーハァーハァーハァー……


私は狼狽して、息を荒げながらも少しづつ後ずさった。

点滅する電気の向こうにある段ボールは動かない。

動かないのだからそんなに恐いことはないのかもしれない、

少し落ち着こう、少し落ち着こう、私、落ち着け、深呼吸深呼吸……



目を閉じて意識を集中した。

「変なデマを信じないように!!」
「変なデマを信じないように!!」
「変なデマを信じないように!!」

これはきっと何かの幻覚か、たちの悪いトリック、

それか、あの中に強盗か何かが潜んでいすのかもしれない、

後ろにキッチンがある、まずはそこから包丁を取ってこよう……



そう思って目を開けた時、

段 ボ ー ル が 微 妙 に 動 い た 。



ズルズルッ ズルズルッ ズルッ




何かを引きずるような音をたて、
段ボールがこっちに向かって動いてきた。

段ボールの蓋がすこしづつ開く。

私は既に動けなくなってしまって、冷や汗も動悸も抑えられず、

ただのでく人形のように大口を開けて、その段ボールから出るソレを見るしかなかった。







 



ハコ3

2006-05-29 02:22:20 | いやん
また幾日かたって、いつものように部屋に帰った。

いつも電気を消して出てくるのに、今日は消し忘れたのかな? 部屋が明るい。

いけないいけない、節電節電、私はスイッチを押すけれど、

電気はバチバチと、私の手と関係なくついたり消えたりを繰り返していた。


やだ、故障? 大家さんに文句いおうか、嫌だなぁ、恐いんだよなぁあのおばちゃん。


明るいんだか暗いんだかよく分からない、点滅した部屋の中に足を進めると、

いつもと違う一角に気づく。

電気が消えたりついたりするから良く見えない。

私は目を細めて良く見た。





!!!!!!!!!!


















置いた覚えのない段ボールがそこにあった。

誰が勝手に?

誰がなんのために?

何? 何? 何なの?



酒井さんの言ってた噂を思い出す。


「 ある日、自分の部屋の中に、頼んだ覚えのない段ボールが置いてある。

 その段ボールが置かれたら最後、二度とその部屋の住人の姿を見ることはない 」



そんなはずはない!
あれは全部夜逃げとか、駆け落ちとか、蒸発とか、そんなことでしょ!!
そんなはずない! そんなはずない!

私は忘れかけていたあの貼り紙を何度も思い出していた。


  「変なデマを信じないように!!」

  「変なデマを信じないように!!」

  「変なデマを信じないように!!」


つづく


ハコ2

2006-05-29 01:36:40 | いやん
彼女の話はこうだ。


「 ある日、自分の部屋の中に、頼んだ覚えのない段ボールが置いてある。

 その段ボールが置かれたら最後、二度とその部屋の住人の姿を見ることはない 」



私は、思わず笑ってしまった。


「それは、家賃踏み倒しの夜逃げですよ! 酒井さんってば、そんな噂信じてるんですかぁ?」


「やぁーね! 信じないんだ! いいわよ別に! 私はもう今月でここ越すことにしたから!」


「えっ? 酒井さんいなくなっちゃうんですか? うそー!」


「そうよ! じゃあね! アンタにかまってたせいで遅刻だわ!」


彼女は私が話を信じなかったからか、口を尖らせてエレベーターにドカドカと乗っていった。

笑っちゃ悪かったかなぁ、でも、そんな噂、大人が信じる方がどうかしてる。


エレベーターの貼り紙は相変わらず貼ってあったけれど、

私はあまり気にすることもなく幾日か過ごした。



ダンダンダンッ ダンダンダンッツ



昼前、ぐだぐだと眠っていた私は、突然の大きな音に目を覚ます。

どこかで工事でも始まったんだろうか……?それにしても近すぎる。

廊下かな? もう少し静かにしてもらえないか頼もうと、寝ぼけ眼のままドアを開けた。


そこには工事でもなく、ただ大家の強面のおばちゃんが、隣の酒井さんの部屋を叩いていた。


「アラ、おはよーう! ごめんねぇ騒がしくて! 酒井さん、アンタ知らない?
 家賃たまってるのよ! それで最近みないでしょ? もしかしたら逃げられたかと思ってさぁー!! 」


そういえば、越すって言ってたっけ。やだぁ、越すって、夜逃げってこと?

もっと、ちゃんとしてそうな人だと……思ってはいなかったけど。


「もしアンタんとこに連絡があったら教えてね!
 こっちだって生活があって部屋貸してんだから! 」


ピリピリした口調のおばちゃんが鼻息荒く迫ってきて、私の部屋の中を一瞥して帰って行った。

ああーいやだ。朝からとんだとばっちり。

酒井さんも酒井さんよ、夜逃げするなら教えてくれればいいのに。

東京って、やっぱり冷たいのね。ふーん。



やがて私は酒井さんのことも気にならなくなり、エレベーター貼り紙も、もう剥がれかけていた。


つづく