アジサイがきれいな季節だ。
雨の日のアジサイは特に美しい。
青、赤、ピンク、白、紫・・・
それぞれが微妙に混じり合う無限の配合は、見るひとを決して飽きさせない。
僕がとりわけ好きな色は、青を通り越した藍色に赤みの少しだけ混じった色だ。
一応ムラサキの範疇に入るだろうか・・
じっと見ていると、梅雨の湿度で上がった不快指数が、いくらか冷やされていくようだ。
「紫陽花」と書くように、アジサイの象徴ともいえる紫には、なにか特別な力が潜んでいるのだろうか・・
北京の故宮はもともと「紫禁城」といったし、日本の冠位十二階でも紫は最高位の色だったはずだ。
「紫」・・・読み方を表す「此(シ)」と「糸」から成る。「糸」は糸たばをねじった形。
最古の漢和辞典「説文解字」には「帛(キヌ)の青赤色なるものなり」と説明がある。
要するに生地を織る糸を紫の染料で染めたときの美しい色のことだ。
ところで去年秋の個展で、僕は春を待つ冬の姿を一枚描いた。
この絵に「冬日(とうじつ)」というタイトルをつけたが、たまたま気に入って買って下さった方から、続けて同じ大きさで「夏」をテーマに描いてくれないか?という依頼を受けた。
僕はこの話を受ける事にし、最近ようやく描き終わったが本当に夏が来てしまった・・
「急ぎではないから・・」という言葉に甘え、長いことお待たせした結果、すこしイライラさせてしまったようだ・・
お詫びとして、ぼくは大好きなアジサイの淡彩画を作品と一緒にプレゼントしようと思う。