太極から八卦ができるまで
http://www.ekikyo.net/contents/dekirumade.htmlより
(転載開始)
易は宇宙間における一切の事物や事象の意味とその変化とを六十四卦に分けて説明しているのですが、それでは一体この六十四卦そのものは、どのような経路をとってできたのでしょうか。
十翼のひとつで易の本質を解説した『繋辞伝(けいじでん)』には、「易に太極有り。これ両儀を生ず。両儀は四象を生じ、四象は八卦を生ず。八卦は吉凶を定め、吉凶は大業を生ず」とあります。
つまり、易の根源は太極である。太極は両儀(陰陽)を生み、陰陽は四象(老陽、少陽、老陰、少陰)を生み、四象から八卦が生じた。八卦は吉凶を定め、吉凶の判断にもとづいて行動することによって、大きな業をなし遂げることができる、というのです。
ここに、易の成り立ちが説明されており、それを図示すると、つぎのようになります。
[太極図]
◆太極について
太極つまり極めて大きなもの。はじまりであり混沌、根元であるそれは、陰でもなく陽でもなくはっきりした象になる前の何ものか、あるいは無。かなり漠然としていますが、要するにこの世界のすべてであり、易の本体でもあります。この太極をぬきに易は語れません。また太極は、その根源性から数字の一としたり、北極星にたとえられたりもします。老子は太極の前に、無極があるとしました。
◆両儀について
さらに太極が両儀、つまり陰陽という相互対立的な活動を生んだと考えられました。陰陽というと古めかしく聞こえますが、要するに、陽とは積極的・剛強的なものを指し、陰とは消極的・柔弱的なものを指します。電気でいうとプラス(+)とマイナス(-)の関係であり、一般的な事象としては、男性と女性、表と裏、昼と夜、充実と空虚、勝利と敗北、動と静、進むと退く、奇数と偶数、夏と冬、太陽と月、天と地などです。世の中のすべてのものがこの陰陽から成り立っているとするのが易の考え方であり、この陰陽が易の基本となります。
[陰陽の例]
自然界
天と地、太陽と月、昼と夜、夏と冬、火と水
人間界
男と女、親と子、夫と妻、君子と小人、君と臣、主役と脇役
性質
剛と柔、明と暗、大と小、強と弱、善と悪、積極と消極、奇数と偶数
位置や動き
表と裏、上と下、内と外、開と閉、動と静、気と形、借方と貸方
易では、この陽と陰とを算木(さんぎ)の符号をもってあらわし、一本の切れていない算木 陽 を陽とし、一本の切れている算木 陰 を陰と呼びます。それにしてもこの奇妙な符号が、もともとどのようにして生まれたのか、今日まで論議の的でありましたがいまだに定説はありません。
学者の中には、連続と切断をあらわすという説、亀の甲を焼くときにできるひび割れ説、陽 は太陽、陰 は月とする説などがありますが、古代の生殖器崇拝から男女の生殖器を象徴したものとする説が有力です。
気は、易経より後の戦国時代に生まれた概念で、エネルギーの極小粒子(活動子)をいいます。これが陰陽説と結びつき、陰気、陽気という陰陽の働きを表すものとなりました。
たとえば、夏という季節は陽の代表的な季節ですが、真夏(夏至)には陰の気を内包しており、時間とともに陰の気が長じ、陽の気が減って秋から冬に変わっていきます。冬至は、純陰の季節ですが、一陽来復して春に向かうのです。
人でいえば、生まれた時は親の子として陰であり、結婚すると男は陽、女は陰、親になると子に対して陽となります。このように、場所、位置、時間などによって、陰陽は変化します。これを図式化したのが太極・陰陽の図です。
[太極・陰陽の図]
外の大きな環が太極、環の中の白が陽、黒が陰で、ウロボロス(自分の尾を食う蛇、再生の象徴)のように右回りに循環しながら、陽が増大したり減少したりしていくのです。
陽の中に黒点があるのに注意して下さい。季節のめぐりに置き換えれば、分かりやすいでしょう。
陰と陽は最初は等価値だったようですが、しだいに陽を上位に見るようになりました。陽尊陰卑(男尊女卑)の表れといえます。
◆四象について
単なる陰陽の対立的関係だけでは、一切の事物や事象の具体的な関係を把握するには十分ではありません。
例えば、男女の区分も、現実的には男性的な男性・女性的な男性・女性的な女性・男性的な女性などがいるように、陽にも陽の陽と陽の陰の二つがあり、同じく陰にも陰の陽と陰の陰があります。
つまり陰陽(両儀)が2本ずつ組み合わされ、老陽 老陽、少陽 少陽、少陰 少陰、老陰 老陰の4つに分かれると観念します。これを四象といいます。
象とは「すがた」であり「かたどる」を意味しますが、太極である根源もここまで解析していくと、かなり具体的な現象を示すことが可能となります。四象は時の流れも示し、老陽を夏、老陰を冬、少陽を春、少陰を秋とします。
◆八卦について
さらに四象それぞれに陰陽を加えて分け、その3本の象が八卦となります。これが易の説く、この世の森羅万象の基本的な八種である、乾・兌・離・震・巽・坎・艮・坤です。太極図はここに到ってようやく完結し、すべてが揃います。
八卦はいずれも三つの爻から成っていて、陰 陰の原理が支配するか、陽 陽の原理が支配するかのどちらかで、二者同一とか中性とかいうことはありません。例えば、震 震・坎 坎・艮 艮のように一陽爻と二陰爻の場合、一つの 陽 陽爻が支配すると考えます。したがって二陽爻と一陰爻 兌 兌・離 離・離 巽の場合は、陰 陰爻が支配し、中心となります。
八卦が3本の爻で成り立っているのは、天地(陰陽)に人(中庸・中正)の観念を付加することで、より精妙な実相を認織しようとしたのです。この天・人・地は三儀ともいいますが、両儀の陰陽と同様、天人地も易の骨格を形成する重要な要因です。
八卦は繋辞伝によれば、古代中国の帝王伏犠の作で、日・月・星辰の天象、山川の地形をみて天地自然万象を八卦の形相として表したとあります。
そこで、八卦に象徴されている意味を十分に理解することによって、天地万物の状態やその変化の成りゆきの様を、遠くかすかなものからはっきりとあらわれているものに至るまで残りなく、さらには鬼神の情状までをも隈なく知ることができるといっています。
八卦には 乾 乾(卦名)・天(正象)・剛健(卦徳)のようにそれぞれ卦名と正象と卦徳がついています。
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(転載開始)
易は宇宙間における一切の事物や事象の意味とその変化とを六十四卦に分けて説明しているのですが、それでは一体この六十四卦そのものは、どのような経路をとってできたのでしょうか。
十翼のひとつで易の本質を解説した『繋辞伝(けいじでん)』には、「易に太極有り。これ両儀を生ず。両儀は四象を生じ、四象は八卦を生ず。八卦は吉凶を定め、吉凶は大業を生ず」とあります。
つまり、易の根源は太極である。太極は両儀(陰陽)を生み、陰陽は四象(老陽、少陽、老陰、少陰)を生み、四象から八卦が生じた。八卦は吉凶を定め、吉凶の判断にもとづいて行動することによって、大きな業をなし遂げることができる、というのです。
ここに、易の成り立ちが説明されており、それを図示すると、つぎのようになります。
[太極図]
◆太極について
太極つまり極めて大きなもの。はじまりであり混沌、根元であるそれは、陰でもなく陽でもなくはっきりした象になる前の何ものか、あるいは無。かなり漠然としていますが、要するにこの世界のすべてであり、易の本体でもあります。この太極をぬきに易は語れません。また太極は、その根源性から数字の一としたり、北極星にたとえられたりもします。老子は太極の前に、無極があるとしました。
◆両儀について
さらに太極が両儀、つまり陰陽という相互対立的な活動を生んだと考えられました。陰陽というと古めかしく聞こえますが、要するに、陽とは積極的・剛強的なものを指し、陰とは消極的・柔弱的なものを指します。電気でいうとプラス(+)とマイナス(-)の関係であり、一般的な事象としては、男性と女性、表と裏、昼と夜、充実と空虚、勝利と敗北、動と静、進むと退く、奇数と偶数、夏と冬、太陽と月、天と地などです。世の中のすべてのものがこの陰陽から成り立っているとするのが易の考え方であり、この陰陽が易の基本となります。
[陰陽の例]
自然界
天と地、太陽と月、昼と夜、夏と冬、火と水
人間界
男と女、親と子、夫と妻、君子と小人、君と臣、主役と脇役
性質
剛と柔、明と暗、大と小、強と弱、善と悪、積極と消極、奇数と偶数
位置や動き
表と裏、上と下、内と外、開と閉、動と静、気と形、借方と貸方
易では、この陽と陰とを算木(さんぎ)の符号をもってあらわし、一本の切れていない算木 陽 を陽とし、一本の切れている算木 陰 を陰と呼びます。それにしてもこの奇妙な符号が、もともとどのようにして生まれたのか、今日まで論議の的でありましたがいまだに定説はありません。
学者の中には、連続と切断をあらわすという説、亀の甲を焼くときにできるひび割れ説、陽 は太陽、陰 は月とする説などがありますが、古代の生殖器崇拝から男女の生殖器を象徴したものとする説が有力です。
気は、易経より後の戦国時代に生まれた概念で、エネルギーの極小粒子(活動子)をいいます。これが陰陽説と結びつき、陰気、陽気という陰陽の働きを表すものとなりました。
たとえば、夏という季節は陽の代表的な季節ですが、真夏(夏至)には陰の気を内包しており、時間とともに陰の気が長じ、陽の気が減って秋から冬に変わっていきます。冬至は、純陰の季節ですが、一陽来復して春に向かうのです。
人でいえば、生まれた時は親の子として陰であり、結婚すると男は陽、女は陰、親になると子に対して陽となります。このように、場所、位置、時間などによって、陰陽は変化します。これを図式化したのが太極・陰陽の図です。
[太極・陰陽の図]
外の大きな環が太極、環の中の白が陽、黒が陰で、ウロボロス(自分の尾を食う蛇、再生の象徴)のように右回りに循環しながら、陽が増大したり減少したりしていくのです。
陽の中に黒点があるのに注意して下さい。季節のめぐりに置き換えれば、分かりやすいでしょう。
陰と陽は最初は等価値だったようですが、しだいに陽を上位に見るようになりました。陽尊陰卑(男尊女卑)の表れといえます。
◆四象について
単なる陰陽の対立的関係だけでは、一切の事物や事象の具体的な関係を把握するには十分ではありません。
例えば、男女の区分も、現実的には男性的な男性・女性的な男性・女性的な女性・男性的な女性などがいるように、陽にも陽の陽と陽の陰の二つがあり、同じく陰にも陰の陽と陰の陰があります。
つまり陰陽(両儀)が2本ずつ組み合わされ、老陽 老陽、少陽 少陽、少陰 少陰、老陰 老陰の4つに分かれると観念します。これを四象といいます。
象とは「すがた」であり「かたどる」を意味しますが、太極である根源もここまで解析していくと、かなり具体的な現象を示すことが可能となります。四象は時の流れも示し、老陽を夏、老陰を冬、少陽を春、少陰を秋とします。
◆八卦について
さらに四象それぞれに陰陽を加えて分け、その3本の象が八卦となります。これが易の説く、この世の森羅万象の基本的な八種である、乾・兌・離・震・巽・坎・艮・坤です。太極図はここに到ってようやく完結し、すべてが揃います。
八卦はいずれも三つの爻から成っていて、陰 陰の原理が支配するか、陽 陽の原理が支配するかのどちらかで、二者同一とか中性とかいうことはありません。例えば、震 震・坎 坎・艮 艮のように一陽爻と二陰爻の場合、一つの 陽 陽爻が支配すると考えます。したがって二陽爻と一陰爻 兌 兌・離 離・離 巽の場合は、陰 陰爻が支配し、中心となります。
八卦が3本の爻で成り立っているのは、天地(陰陽)に人(中庸・中正)の観念を付加することで、より精妙な実相を認織しようとしたのです。この天・人・地は三儀ともいいますが、両儀の陰陽と同様、天人地も易の骨格を形成する重要な要因です。
八卦は繋辞伝によれば、古代中国の帝王伏犠の作で、日・月・星辰の天象、山川の地形をみて天地自然万象を八卦の形相として表したとあります。
そこで、八卦に象徴されている意味を十分に理解することによって、天地万物の状態やその変化の成りゆきの様を、遠くかすかなものからはっきりとあらわれているものに至るまで残りなく、さらには鬼神の情状までをも隈なく知ることができるといっています。
八卦には 乾 乾(卦名)・天(正象)・剛健(卦徳)のようにそれぞれ卦名と正象と卦徳がついています。
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