さえら

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ジキル博士とハイド氏(3)

2013-03-09 21:55:03 | 

 サディズムという言葉はサドによる小説「悪徳の栄え」に基づく。サドは「善悪の二項対立を逆転して極端まで推し進め、悪そのものを称揚した」(参考資料[3])のでありハイド氏の性格付けとしても一致する。以上のことから隠された心の問題とは「同性愛」のみならず「暴力(サディズム)」も含んでいることが理解できよう。

ここで気をつけたいことが一箇所ある。P52「あざやかな緋色」である。日本語にしてしまえば赤も緋色も大きな違いがないようにも思われがちであるが、訳者がここでなぜ「赤」ではなく「緋色」という言葉を用いたのかが気になるところである。この箇所は原文では「the imperial dye」となっていて「red」は使われていない、すなわち暴力性を含まない「緋色」と、血すなわち暴力性に繋がる「赤」とを、訳者が十分配慮して訳し分けしていることが認識できる。

一方、放送大学印刷教材「イギリス文学」(P160)「テニスン」(参考資料[4])の項によれば、桂冠詩人テニスンの詩「インメモリアム」に次のような詩句がある。「Nature, red in tooth and claw」これは「信仰を否定する科学の恐怖」のイメージである。すなわちred「赤い色」には反宗教、反信仰のイメージがあるのである。


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