1安打完封と力投した鹿町工のエース今村=佐世保野球場
【1回戦、鹿町工-上五島】
九回1死。完全試合という大記録まであと2人。だが、鹿町工のエース今村が投げたスライダーは、上五島の坂口に痛打され、左前に落ちた。目前で指の間をすり抜けていった大記録。ただ、今村は表情一つ変えなかった。後続をきっちり打ち取った。
兄は昨春、県勢初の全国制覇を成し遂げた清峰の元エース、今村猛(現広島カープ)。偉大すぎる1歳違いの兄と比べられるのは本意ではない。
それでも、感情を表に出さず、打者一人一人に集中する姿、そして、切れのいいスライダーで三振を奪う投球術はどこか兄と重なる。
当の本人は「誰の弟とかではなく、自分は自分。バックを信じて集中して投げただけ」。完全試合を逃したことについても、「特に意識はしていなかった。打たれたのは力がないから。特に悔しさはない」と言い切る。
その兄から、2週間前にグラブが届いた。突然のことで、「何だろう」と思ったが、「悔いを残すな」という意味の言葉が書かれていた。
初戦の大事なマウンドには、その真新しいグラブをつけて臨んだ。これまでずっと兄を意識しないようにしてきた。ただ、仲間たちと一緒に「悔いのない夏にしたい」とは強く思っている。
2010年7月12日長崎新聞掲載
【1回戦、鹿町工-上五島】
九回1死。完全試合という大記録まであと2人。だが、鹿町工のエース今村が投げたスライダーは、上五島の坂口に痛打され、左前に落ちた。目前で指の間をすり抜けていった大記録。ただ、今村は表情一つ変えなかった。後続をきっちり打ち取った。
兄は昨春、県勢初の全国制覇を成し遂げた清峰の元エース、今村猛(現広島カープ)。偉大すぎる1歳違いの兄と比べられるのは本意ではない。
それでも、感情を表に出さず、打者一人一人に集中する姿、そして、切れのいいスライダーで三振を奪う投球術はどこか兄と重なる。
当の本人は「誰の弟とかではなく、自分は自分。バックを信じて集中して投げただけ」。完全試合を逃したことについても、「特に意識はしていなかった。打たれたのは力がないから。特に悔しさはない」と言い切る。
その兄から、2週間前にグラブが届いた。突然のことで、「何だろう」と思ったが、「悔いを残すな」という意味の言葉が書かれていた。
初戦の大事なマウンドには、その真新しいグラブをつけて臨んだ。これまでずっと兄を意識しないようにしてきた。ただ、仲間たちと一緒に「悔いのない夏にしたい」とは強く思っている。
2010年7月12日長崎新聞掲載