私の大好きな火村&有栖シリーズ文庫化の最新作。京都に行った時読破したので感想を。
読み終わった時に、思ったことがある。
文庫版にも必ずある著者・有栖川有栖氏の解説を読むと『若さを物語に織り込むことで、作品集を淡く彩色した』感じと書いてあるように、4つの短編集は、世界の内側・外側から若さをテーマにしてある。
作中の探偵・火村も有栖も年齢は34歳のまま、永久に歳をとらない。
けれど作家は歳を重ねる。読者も歳を重ねる。
ある感慨というのは、有栖川有栖氏も歳を重ねたんだなということ。当然のことだけど(笑)それは作品の傾向というのかなぁ、ここ数年新作を読むと感じていた違和感、それが作家が年を重ねたから、という理由にあるのでは?私は気が付いた。
年を重ねないと書けない内容になっている。この作品集には、それが特に強く出ている感じがるする。
「探偵・青の時代」は文学的。ミステリというより、青春小説のよう。(これはこれで面白い)。
私はどちらかというと、初期作品ミステリのほうが、好みで美しい本格推理だと思っている。有栖や火村の過去よりも、火村の美しいロジックがどう導き出されるかのほうに興味があったけれど、作品の傾向が変わるのは長く続いたシリーズものでは避けられない宿命かと思う。
火村は年をとらない。それは火村・有栖には不幸なことじゃないかな~二人ともどんどん老成してしまう。
人は年を重ねた方が、やりやすいこともある、結婚もしたほうがいいに決まっている(?) ワトソンも家庭をもったのだから、歳を重ねてもいいかなぁと思う。歳を重ねないと分からない感覚が、火村にはすでにある。悩ましい力かも。状況が変われば逃げ道もあるけれど、逃げ道もなく永遠の34歳は、謎解きに没頭し、見たくないものを見続けなくてはいけない。
火村はサイコパスではない。若い時は誰かを殺したいほど憎むことがあってもおかしくないと思うし。悪夢にうなされることもある、
私は火村が好きだし有栖も好きだ。だから、たまには年を取らせてあげて欲しい。精神だけ老成し、肉体が若いままの火村の憂鬱も歳を重ねれば、解決するだろうから。