パソコン上達日記2

日々の雑感を戯れに綴ります

「楽園」 もし家族が とんでもない、「ろくでなし」だったらどうしますか?

2017-02-10 21:46:33 | 読書感想

宮部みゆき氏が書く小説は面白いに決まっている。私にとって、面白さ保障つき安心して読める作家という感じ。これも上下巻700ページ以上ある作品だが、一気に読めてしまう。

でも評価するなら★が4つかな。模倣犯の様なピリッとした感じの硬質なほうが個人的な好みだから。この「楽園」は、全体的なトーンとしてとても優しい。刊行した当初から気になったけれど、サイコメトラーの少年「等」を登場させた部分、「好み」が分かれるところだろう。私は、「模倣犯」や「理由」といった世界感がすきなので、こういった少年を登場させた設定、どちらかというと好みではないけれど…ただ、それは決して面白くないという意味ではない。私の期待値に対して、この作品は期待値以上ではなかったというだけで、それでも十分なクオリティがある。これは「宮部みゆき」の他の作品群がどれも「面白いに決まっている」ために、期待値が高すぎることがあるかもしれない。この作品が無名の作家なら驚愕するほどの完成度だと思う。

トリッキーな完全犯罪型ミステリではなく、かなり文学的要素が濃い作品。またあとがきを読むと分かるが宮部みゆきという作家が 人としてとても優しい。これほど繊細な方が、ここまでしかもリアリティに満ちたあまりに残酷な物語を書くということ、まさに骨身を削るような作業ではないだろうか…。そう思うとよけいに小説にある一言 一言が印象深い。


 

小説世界だけでなく、現実的な問題としても家族が「いなくなったほうがいいくらいの、ろくでなし」だった場合。身内は、どうすればいいのか?という悲鳴のような嘆き悲しみ、苦しみが今もどこかにあるのだろうと感じさせる内容だった。

特に物語の結末部分 15歳の茜のとった行動、怪物となった茜がそれでも母親に甘え、そして母親がとった行動、泣けるほど臨場感がある、それまで茜という名前だけの存在で語られていた少女が、母親の告白でリアリティのある、しかも現実世界にも、どこかにおそらく存在しているだろう 誰かを想像させる部分は宮部みゆきという作家の筆力を思ってしまう。圧倒的で。

(欲を言えば、上巻での「等」がなぜ山荘での風景を描けたのか? という部分の「答え」が欲しかったなぁ(^_-)-☆直接的にこの物語の本題とは、無関係なので「答え」がなくても全く構わないのだけれど、。逆に私個人がそれほど模倣犯の事件とピースを忘れられないのかな。)

そして宮部みゆきの物語以上に、残酷でやるせない事件が現実として起こっている世界が、私が生きている世界でもある。


2017年1月にwaowaoでドラマ化されたらしいが、主人公は仲間由紀恵。ドラマ見たかったな。ドラマ化された宮部作品ではテレ東の「模倣犯」はかなり良かったので、またテレ東で同じキャスティング中谷美紀でドラマ化されればいいのにと思う。「模倣犯」も「楽園」も連続ドラマ化してもいいくらいの内容量だし、面白さ。

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