1958年1月15日公開の、いわば古い映画だ。
ツタヤレンタルで借りて観た。
撮影時の1957年は、私の生まれた年。
モノクロの画面に映し出される、今から63年前の日本の風景は、なぜかなつかしさにあふれていた。
私は、当時生まれたばっかりで、なつかしさもへったくれもないのだが(笑)
というか、ふ~ん、当時の日本人は、こんな生活だったのか・・・とか、妙な感慨を覚えた。
ラジオに聞きいる人々や、何十時間も列車に揺られて旅するひとたち。
昭和の風景だ。
私の父や母が若かりし頃のことだ。
いや、そこに映っているかもしれない・・・と、錯覚を覚えるほどだ。
ま、冗談だが。
古い映画なので、ネタバレもへったくれもないと思うが、東京で起きた凶悪事件を追って、20時間も汽車に揺られたどりついた、九州の旅館で張り込む刑事の、犯人逮捕までの物語。
ご存じ、松本清張の短編集が原作だとか。
原作ではデカはひとりなのだが、映画では先輩刑事と二人。
そこに、物語に深みを与えている。
暑い夏の日、何日もデカが張り込み、監視するのは平凡な家庭の平凡な女性。
その女性は後妻で20も年上のけちな銀行員と、先妻の子供たちと住んでいる。
実はその女、凶悪犯の元カノで、拳銃を所持して逃げ回っているが、必ずここに立ち寄るはずだと目星をつけて、張り込んでいるのだ。
真夏の暑い捜査本部で打ち合わせ、共犯者から聞き出した本籍地と、その女の住み家と2か所に分かれて張り込む刑事たち。
ごくろーさんなことだ。
・・・すいません。
現れた容疑者と、その女を追って、タクシーで徒歩で高原を林のなかを、ひたすら追いかけ、ふたりが潜む現場に遭遇。
何日も、監視していたその女性は、静かな生活をしていた。
が、元カレといっしょにいるその女は、同じ女かと思うほどまったく違うのだった。
で、容疑者を追い詰めた、デカ自身も自分の女性関係(←ちょっと、言い方がおかしいか?)で、悩んでいた。
長く付き合っていた(らしい)彼女は家庭に経済的な問題があるらしい。
刑事の月給は安い(のだそーな)
だから、結婚にふみ切れない(らしい)
そんなおり、上司に縁談を持ちかけられていた。
銭湯屋への婿入り。
「まぁ、刑事の身の上なんだし、この際・・・」と、上司の奥様。
デカも生身の人間だったのだ。
このあたりが、私の好み。
で、なんでこの映画を観ようかと思ったら、ようやく思い出した。
あの寅さん映画の監督山田洋二氏が、若い頃助監督(見習い?)として、この映画の作成に携わっていたという。
Wikipediaにあるように、たしかにクレジットには出てこないが、実際に参加し他の助監督から「君は監督に向かない」とか、けんもほろろにけなされていたらしい。
ま、詳しいことは資料を見ていただくとして、この映画の冒頭に子供たちが川で水浴びをするシーンがあって、若い頃の山田洋二監督がいろいろ勉強になったとか、80歳を越える現代になって語っているテレビ番組で、この映画の存在を知った。
・・・これ、なんで借りたんだっけ?状態で観始めたのだった。
失礼な!
で、容疑者とその女がいる、温泉旅館。
県警警察官隊と、そのデカが逮捕に成功する。
なにも知らないで、温泉場の廊下をやってくるその女に、そのデカはバス賃を渡しながら「もうすぐ、旦那さんが帰ってくる時間だ。その前に早く帰ったほうがいい」というのだった。
毎日、旦那さんからわずかなお金をもらって、買い物して掃除洗濯してミシンを踏む。
夫の世話をして、子供たちの面倒を見ている平凡なその生活にはもう戻らない!と元カレに言い放った、この女だったのだが。
しかし外の警官隊を見て事態を把握し、彼女は泣きながら身支度をするのだった。
「また、あのミシンを踏む生活に戻っていくのか・・・」
デカは、独り言ちるのだった。
捕まえた容疑者を護送する駅で、電報を打つ若い刑事。
あて先は、自身が付き合っていて、最近うまくいっていなかった女性。
結婚を決意する文面・・・だったかな?
護送する容疑者に「また、やり直すんだ・・・」と、励ましの声を掛けるデカだったが、自身への言葉でも、またあるのだった。
さ、観終わったら、私も風呂を沸かして、夕食を作りおふくろさんの世話をしなくっちゃ・・・