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ラオビアとラオラーオで夜が更けて 【連載】呑んで喰って、また呑んで⑱

2019-10-30 11:55:36 | 【連載】呑んで喰って、また呑んで

【連載】呑んで喰って、また呑んで⑱

ラオビアとラオラーオで夜が更けて

●ラオス・サワンナケート

山本徳造 (本ブログ編集人)  

 

 ラオス中南部にあるサワンナケートは、人口約9万人の小さな街である。タイから陸路ベトナムに行くための通過地点なので、タイ側のムクダーハーンから国際バスで国境を越えて、この国境の街にやって来たのだ。メコン川に架かる「第2タイ・ラオス友好橋」を渡って約1時間で着いた。
 このサワンナケートは、ひと昔前の東南アジアの田舎町といった感じで、気だるいというか、とにかくのんびりしている。いやに落ち着くではないか。いい雰囲気だ。私はすぐに気に入った。首都ビエンチャンに次ぐ第2の都市なのだが、名所旧跡なんて見どころもない。ベトナムのホーチミンに出発するまでの3日間、何をして過ごせばよいのか。
「ま、呑むしかないやろ」
 と兵庫県出身の旅の連れが嬉しそうにのたまう。
 シベリア鉄道でも一緒だった詩人のМ君である。吞兵衛と一緒なので、覚悟を決めた。安ホテルにチェックインして夕刻の街をぶらぶら散策していると、突然、雲行きが怪しくなった。その直後に大粒の雨が、まるで洪水のように降り注ぎ始めた。季節はまさに雨季のど真ん中である。そう、東南アジア名物のスコールだ。もう全身ずぶぬれである。
「あかん、どっかで雨宿りしよか」
 大阪出身の私がそう言って周囲を見渡すと、大衆食堂らしき店が眼に入った。その店に向かって二人が小走りで。
 まだ準備中だったようだが、勝手に小汚いテーブルに陣取った。小太りのおばちゃんが、さも面倒臭そうにメニューを持ってきたが、すべてラオス語の文字である。とりあえずビールだ。
「コー・ビアラオ」
 と私がタイ語で注文した。ラオスで最も愛されている「ビアラオ」というビールを頼んだのである。「コー」は「ちょうだい」という意味。ラオス語とタイ語は大阪弁と東京弁よりも近いので、だいたい通じるのだ。さあ、呑むぞ!
 運ばれてきたビアラオは、国内で99%を誇る人気のビール。ラオスのジャスミン米、ドイツの麦芽、そしてベルギーのホップをうまく配合してあるので、東南アジア料理だけではなく、日本料理にもよく合う。
 ラオ・ブリュワリー社が製造元なのだが、デンマークのカールスバーグ社が技術提供をしている。カールスバーグといえば、デンマーク王室御用達で、世界180カ国で販売されている。だから、美味い。
 ラープがつまみだった。みじん切りした肉を各種スパイスと一緒に炒めたラオスの伝統料理だ。肉なら豚、鶏、牛、アヒルなど、肉なら何でもかまわない。これに香草やハーブ類を混ぜ、魚醤とライムの汁で味付けするのだが、ビアラオを吞むにはぴったりの料理だろう。そんなわけで、ビアラオの空き瓶でテーブルが一杯になった。
 詩人というか歌人として高名なM君はビールをちびちびやっていたが、バッグからノートを取り出しテーブルに広げた。そして、腕を組んで目をつぶる。しばらくして、ノートに何やら書き始めた。短歌である。あっという間に3首ほど仕上げた。吞兵衛だが、ときたま真面目なことをする。いや、感心、感心。
 さて、スコールは1時間ほど続いた後、何事もなかったようにでおさまった。
「まだ早いな。どっかで呑み直そうか」
 とM君が赤い顔をさらに赤くさせた。
「そやな、腹も空いてるし」
 こうして、すっかり陽が落ちたサワンナケートをぶらぶらと歩き始めた。数分ほど歩くと、路上にテーブルを出した若い男女のグループが楽しそうに騒いでいる。みんな10代だろうか。酒の匂いがする。数人が手招きしたので、近寄ってみると、やはり酒らしき瓶が何本か置いてあった。
「ラオラーオ」
 そのうちの一人が瓶をつかんで、私たちに小さなグラスを差し出し、瓶の中身を注いだ。
「ラオラーオだよ」
 酒の名称を言っているのだろう。そして、身振り手振りで「呑め」と。あとで知ったが、米焼酎「ラオラーオ」はその昔、沖縄に伝わって泡盛になったという。アルコール度数は40度程度と、そんなに強くはないが、いや、強いか、ストレートで呑むと、しゃきっとする。
 結局、彼ら青少年と2時間は呑み続けただろうか。彼らは同じ町工場で働いているのだそうだ。10代に見えたけど、みんな20代らしい。それにしても、酒が入ると、誰とでも仲良くなれるものだ。ラオス万歳! 美味しいコメ焼酎「ラオラーオ」にも万歳!


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