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【特別寄稿】安倍さんの思い出   国民党政権下の台湾で受けた待遇とは…

2022-07-15 05:30:00 | アンソニー・トゥー(杜祖健)

【特別寄稿】安倍さんの思い出

国民党政権下の台湾で受けた待遇とは…

アンソニー・トゥー博士(コロラド州立大学名誉教授/台湾名=杜祖健)

▲アンソニー・トゥー(杜祖健)博士

 

 安倍晋三元首相が亡くなられた。日本にとって大きな損失である。それにしても、なんという非業の死だろうか。あまりにも突然な死、それも銃撃で亡くなられたというから、もう言葉もない。

 私は安倍さんには、二度ほどお目にかかったことがある。最初の出会いは倉敷だった。加計学園が経営している大学に新しい学科が新設されるというので、その祝賀会に来賓としてアメリカから招かれたときである。
 祝賀会には安倍さんも来賓として招かれており、祝辞を述べられていた。私と同じテーブルにいた人が、安倍さんと知り合いらしく、「安倍さんにお会いしたことがありますか?」と聞く。「いいえ」と答えると、安倍さんに紹介してくれたのです。
 そのときが初対面だったので、「台湾からアメリカに移住したアメリカの大学教授で、千葉科学大学の客員教授です」と自己紹介すると、安倍さんは前日、台湾から帰ってきたばかりとおっしゃるではないか。そのときの誠実そうな表情が今でも思い浮かぶ。

 ところで、私は台湾や日本、そして世界の情勢を知るためにインターネットでニュースを検索するのを日課としている。その中で今でも記憶に残る情報があった。安倍さんに関する興味深い情報である。一体どんな話だったのか。

 2006年9月に第一次安倍内閣が発足した。ところが翌年8月、安倍さんは健康上の理由で首相を辞任する。ネットに載っていたのは、首相の座を退いた安倍さん一行が台湾に訪問したときのエピソードだ。

▲総統府で馬英九総統(当時)と会見する安倍さん

▲李登輝元総統とも親交が深かった

▲タクシーを拾ったという国賓大飯店

 

 2010年のことである。台湾を訪れていた安倍さん一行は馬英九総統と会談した他、李登輝元総統や当時は野党の民進党主席、蔡英文(現総統)などとも会っている。日本の元首相なので、台湾外交部(外務省)が手配した車で移動することになっていた。

 ある日、安倍さんは台北の国賓大飯店(Ambassador Hotel)で開かれた民進党幹部との食事会に出席する。当日、その会合が終わり、安倍さんは友人(蔡英文現総統)に会うために待ち合わせ場所に向かおうとしたのだが、ホテルの外で待機しているはずの車がいない。いくら待っても車がやってこないので、仕方なくタクシーを呼んで向かったという。

 当時、この情報がテレビで流れると、ネットで「きわめて失礼だ」「安倍元首相を辱めた」「中国には媚びるのに、日本の元首相は侮辱するのか」といった馬英九総統の国民党政権を激しく非難する投稿が相次ぐ。あまりにも国民の怒りが強かったので、呉敦義行政院長(首相)が「もし事実なら失礼なこと」と政府側の不手際を認めざるを得なかった。

▲テレビでもそのエピソードを報道。蔡英文(現総統)と安倍さん

 

 馬総統は外省人(蒋介石と一緒に大陸から台湾にやって来た中国人とその子孫)である。政府内の要人も外省人がほとんどだった。それに安倍さんは首相を退いた政治家である。国民党の馬政権にしてみれば、まさか安倍さんが再び首相に帰り咲くとは思ってみなかったことだろう。しかし、安倍さんは庶民的な政治家である。タクシーを使おうが、別に何とも思っていなかったに違いない。

 さて、2年前に訪日したときのことだ。ちょうど新型コロナが流行り始めた頃である。私は首相だった安倍さんと国会内で面談することになっていたのだが、安倍さんは国会答弁で多忙を極めていた。結局、側近の国会議員や秘書の方が代わりに私と会うことになった次第である。
 その面談で私は、新型コロナに対処するには「病院船」を活用すべきだと提案した。そうすれば、完全に隔離ができる上、患者は船中でテレビを見たりして、船の中で楽しく過ごすことが出来るではないか。後でインターネットで知ったが、日本政府は病院船の予算を請求したそうである。しかし、その後どうなったのか。

 安倍さんには何度もお会いしていないが、もっとも印象に残っているリーダーである。日本は惜しい人を失くしたものだ。残念でならない。台湾人の多くも同じ気持ちだろう。そして、世界も。改めて安倍さんのご冥福をお祈りしたい。

 

【アンソニー・トゥー(杜祖健)博士のプロフィール】1930年に台湾・台北市で生まれる。父親は「台湾医療界の父」と呼ばれた薬理学者の杜聡明氏。1953年に渡米し、ノートルダム大学、スタンフォード大学、エール大学で化学と生化学を研修する。ヘビ毒が専門だった。1957年に日系アメリカ人と結婚し、5人の子供(娘3人、息子2人)に恵まれる。ユタ州立大学、コロラド州立大学で教鞭をとる。1998年からコロラド州立大学名誉教授。趣味はピアノ演奏。現在、カリフォルニア州サン・マテオの自宅を拠点に世界中を講演して回る。

 


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