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旗の向き 【連載】腹ふくるるわざ㊳

2023-01-01 06:30:48 | 【連載】腹ふくるるわざ

【連載】腹ふくるるわざ㊳

旗の向き

桑原玉樹(まちづくり家) 

 

 


新年 あけまして おめでとうございます。

三苫の1ミリの日の丸

 サッカー・ワールドカップのスペイン戦で三苫薫選手の折り返しパスの際にラインぎりぎりだったことを日の丸に見立てたイラストのSNSが拡散していることはすでにこのブログで紹介した。
 卓越した発想力だと世界中で称賛され、私もそう思う。が、しかし、なんか違和感がある。線が細いこともあるが、線が右側にあることも原因に思える。旗は、旗竿が左側にあって、旗は右側にたなびいているものだ、という観念がある。それに反していることが違和感の原因ではないだろうか。
「はためく日の丸」で画像検索したところ、100枚の写真のうち左が73、右が27だった。やはり左に旗竿がある方が見慣れているようだ。
 旗と旗竿の関係について検索した結果、「へー」の連続だったのでご紹介したい。

▲ 三苫選手の1ミリと「Out Of Context Football」に掲載されたイラスト(右)

 

 検索した結果をザーッと言うと、こういうことだ。

●国旗のデザインは上下左右があるのが一般的。日の丸のように上下左右ひっくり返してもわからないのは少数。


●国旗のほとんどは、旗竿が左にあることを前提にデザインされている。なおアラビア語で書かれたデザインの場合は、旗竿が右になる。


●国旗の写真の多くは、正しいデザインが分かるように撮影されている。そのため旗竿が左になっていることが多く、これに見慣れている。


●国旗デザインと旗竿が正しく結束されていれば、裏返っても問題ない。また進行方向などの理由で国旗を裏向きにすることもある。


●日本人は日の丸が上下左右ひっくり返してもわからないことからか、国旗の向きに無頓着すぎる。国際問題になるから注意すべき。

旗竿が国旗の左に来るのは船の航行から

 国旗デザインと旗竿の位置関係は各国ごとに決まっており、「国旗デザインの左に旗竿」というのが一般的である。これはどうも船の航行に関係しているようだ。
 旗は海運における所属識別に用いられて発展した。そして国際的取り決めでは船は右側通行だ。なぜ右側通行になったかは、帆船時代には舵が右舷にあり、ぶつからないためとか、並走しながら風を受けたときに右側が操舵しにくいから右側が優先になってとか、これらが右側通行になった理由らしい。
 ヨットをやっている人にはわかるだろうが、私にはチンプンカンプンだ。とにかく船は右側通行だ。さて2隻の船が右側通行ですれ違うと、お互いの船からは相手の船の旗は旗竿が左に見える。このために旗は旗竿が左側にある場合を想定してデザインされているという。

▲船は右側通行だから旗竿は左

 


イスラム教国では旗竿が右も

 そんなわけで、旗竿が左にあるのが一般的だそうだ。しかし逆になっている例もあるらしい。例えば、サウジアラビア。国旗にアラビア語が書いてある。「アッラーの他に神はなく、ムハンマッドは神の預言者である」と聖句(シャハーダ)に書かれているのだそうだ。
 アラビア語の書き方は、右から左へ。だから、旗竿は右にあって、右から左に読む。イラン、イラクなどのイスラム教国家も同様である。
 ところで「風が反対から吹いてきたら裏文字になって読めないじゃないか」と思ったら、サウジアラビアの国旗は表裏どちらからでも読めるように、同じものを2枚縫い合わせていることのことだった。なるほど。

▲旗竿が右側になるアラビア語で書かれた国旗


逆向きの星条旗

 他の国でも国旗デザインは旗竿との位置関係を決めているだけなので、風で裏返しになっても構わないし、進行方向によっては意図的に逆向きにすることもある。
 米軍では兵士は常に前進せねばならず、着用したり、持つ国旗は常に前を向いていなければならない。米陸軍の規定では「US国旗のレプリカは、スターフィールドが前を向くように、またはフラッグ自身が前を
向くように着用しなければならない」と記されている。
 米国陸軍、空軍、海軍の戦闘服、作業服ではフラッグパッジを右肩に着用している。したがって前進する方向にスターフィールド(50の星)が来るようにするには逆向きでないといけない。これを「リバースパッチ」と称する。
 ネットのミリタリーショップで売っているが、その広告ではスターフィールドが左に来るように間違えた修正をしている例がある。これはユニフォームに限ったことではなく、例えば車体の右側に国旗をペイントするのであれば、同様に逆向きで描かなければならない。
 ネットで検索すると、スペースシャトルの右側面の星条旗も逆向きだった。左右対称の国旗である我々日本人にはない考えだが、左右非対称の国旗の国では、構図を考えた使用がされているのだ。

▲逆ではない。正常な星条旗

 

 外国からお客さんを迎えるとき、応接間にその国と日の丸の卓上旗を並べて置くことがある。お客国に敬意を表してその国の旗を右側(向かって左側)に置くのが国際プロトコールだ (しかし、国によっては自国を優先する場合もある)。例えば米国からのお客さんの場合は、お客さんから向かって左側に米国旗が来るが、ポールとの関係で旗は裏返しになっている。つまりスターフィールド(50の星)が右側になっている。失礼ではないかと思うが、実はこれが正しいとのこと。いや難しい。

▲卓上旗の正しい配置

 

さあどっち?


 アイルランドとコートジボアール国旗は次の図のように左右反対なだけで配色は同じだ。どちらの国の旗か判断するのは難しい。
 ここでクイズ。下側に並べた国旗はどちらの国の国旗だろう。答えはどちらも左がアイルランド、右がコートジボアールである。左側の比較では、旗の三色の配置はどちらも橙-白-緑だが、旗竿に近い側、つまり緑の方がアイルランドというわけだ。

 室内競技での国旗は上からつるすことが多いが、この時も旗竿に近い方、つまり緑が上に来ている左の旗がアイルランドである。

▲アイルランドとコートジボアールの国旗


グランドにはためく「白熊旗」

 旗といえば思い出すことがある。私は学生時代にホッケーをやっていた。アイスホッケーではなく、陸上ホッケー(グランドホッケー)で、当時は「泥ホッケー」と言っていた。
 昭和42(1967)年、私が大学3年の夏休みのときだった。6校による大学対抗戦があって鹿児島に遠征した。めでたく優勝したが、その夜に祝勝会で鹿児島の繁華街である天文館に繰り出した。
 しこたま飲んだ後、鹿児島名物の冷たいかき氷「白熊」を食べたはいいが、問題はそのあとだ。4年生を中心とする数人の部員が店頭にあった「白熊」の旗を失敬した、というか無断で持ち去ったのである。
 そして秋の関東大学リーグ戦を迎えた。当時の駒沢第2球場は昭和39(1964)年の東京オリンピックのホッケー会場として整備され、我々も時々そこで試合をしていた。
 秋のリーグ戦では、掲揚台に校旗の代わりに例の「白熊」の旗が燦然とはためいたものである。観戦者や学連関係者はプレーしか見ていないために気が付かないのか、何のおとがめもなかった。

▲駒沢第2球場に「白熊」の旗がはためいた

 

 今、「白熊 鹿児島」で検索すると「天文館むじゃき」というのが出てくる。この店だったか記憶は全くないが、今、店頭に旗はない。
 動物の白熊のはく製に化粧まわしのような旗があるが、持ち去ったのはこんな感じではなかった。持ち去った後に作ったのだろうか。
 55年も前のことなので既に時効を迎えている、とは思っているが、夏に鹿児島に行かれた方はぜひ「白熊」を味わっていただけたらと、同じ部員としてお詫びと懺悔の気持ちからお願いしたい。

▲「天文館むじゃき」の店頭と名物「白熊」

 

 

【桑原玉樹(くわはら たまき)さんのプロフィール】

昭和21(1946)年、熊本県生まれ。父親の転勤に伴って小学校7校、中学校3校を転々。東京大学工学部都市工学科卒業。日本住宅公団(現(独)UR都市機構)入社、都市開発やニュータウン開発に携わり、途中2年間JICA専門家としてマレーシアのクランバレー計画事務局に派遣される。関西学研都市事業本部長を最後に公団を退職後、㈱千葉ニュータウンセンターに。常務取締役・専務取締役・熱事業本部長などを歴任し、平成24(2012)年に退職。現在、印西市まちづくりファンド運営委員、社会福祉法人皐仁会評議員。


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