トレス

『なつぞら』を観てたら、なつがアニメーターの描いた絵を何枚も何枚もトレスさせられてる。

僕はあれが苦手だった。

やる意味が分からない。

しかし、トレスして清書しないと納品できないからな。

高校の先輩と作った自主製作のアニメも、トレスは全部先輩がやってくれた。

若かった僕はこの苦手な作業を、どうやったらやらずに済むかと考えていた。

なつのように、みんなが見てる前で何枚もトレスをやらされたら、もう次の日は会社にいないかもしれない。　

線による表現力もなんにもないのに、トレスの意味を考えてしまってたから苦しいだけなのよ。

なつは素直だよ。

きっといいアニメーターになるよ。


アニメーターといっても淡白なのもいれば、匂ってきそうなぐらい濃い絵を描くのもいる。

僕は好きなものだけ濃くなる。

他は淡白。

そのこだわりというものが、トレスを邪魔してるところもあった。　

アニメーターから回ってきた絵を見て、そうじゃないだろうと思って書き直してしまう。

もちろん使ってくれない。

求められていたのは生き生きとした線であり、温かみまで伝わるような線の表現力だ。


そんなことは解るわけがない。



最近解ったんだから。





今日も来ていただいて、ありがとうございます。