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彦根城博物館「彦根屏風」定例公開 ~江戸風俗画の最高傑作には春に会える

2018年04月09日 | 美術館・展覧会


井伊の殿様が見ていた庭の光景

彦根藩主・井伊家の伝来品を所蔵・公開する彦根城博物館で、「国宝・彦根屏風」の春の定例の特別公開が間もなく始まります。

この館の珠玉である彦根屏風は江戸初期の風俗画の最高傑作で、京都の町のスターだった遊女(歌舞伎演者も兼ねる)を描いたものです。やがて浮世絵として大輪を咲かせる役者・美人画の原点のような作品です。

この1点を見るためにわざわざ大阪や名古屋・東京から出かける価値が充分にあります。

【公式サイトの画像】 風俗図(彦根屏風)

彦根屏風は、幕末の大老・直弼(なおすけ)の兄で一代前の藩主・直亮(なおあき)が入手しました。長期間別々の絵として箱に入れて大切に保存されてきましたが、近年になって本来の屏風に表装されています。直亮は多彩な趣味を持つコレクター大名で、彦根城博物館に伝わる井伊家伝来品は多くは直亮の収集です。

彦根屏風というのは彦根藩に伝来したため呼ばれた通称で、国宝としての指定名称は単に「風俗図」です。六曲一隻の屏風で、描かれた人物が屏風の谷となる折り目で向かい合うように描かれています。

保存状態がとてもよく、着物の文様や人物の心理をも浮かび上がらせる表情、画中画の山水画など、きわめて精密な描写がのこっています。余計なものは一切ない空間と人物配置の構図は絶妙のバランスが取れています。

落款がなく作者はわかっていませんが、当時の上流階級のサロンに出入りできるようなトップクラスの絵師だったことは間違いないでしょう。

屏風右側の黒い着物の美少年は、刀で体を支えて実に艶めかしく腰をくびらせ、正面にいる遊女らしき女性を誘惑しているように見えます。そのそばでは、とてもあでやかで高級そうな柄の着物を身にまとった美少年がペットの犬を連れて、その誘惑の様子を見ています。

屏風左側では三味線を弾く、双六で遊ぶ、連歌を楽しむといった当時の上流階級の遊びが描かれています。まるで写真のように描写がリアルです。今にも動き出しそうに見えます。

当時の人も、まるで写真のように都の最新流行の娯楽の様子に目が釘付けになっていたように思えてなりません。

彦根城博物館は常設展示も充実しています。あわせて必ずご覧になることをおすすめします。彦根屏風の特別公開中も常設展示は行われています。

井伊家は幕末まで続いた大藩で、維新後も収集品を散逸させずに大切に守り続けてきました。そのため質の高い名品が多くあり、常設展示では入れ替わり展示されます。

“赤備え”で知られる井伊家の武具や軍旗は、とてもシンプルなデザインでとても目立ちます。戦場では強烈なオーラを出していたことがうかがえます。茶道具や書画にも家の格式相応の質の高さを感じさせます。

【公式サイト】 常設展‟ほんもの”との出会い、現在展示中の主な作品



ひこにゃん登場に黒山だかり

彦根城博物館は井伊家から寄贈された文化財の収蔵・展示施設として、1987年に彦根城の表御殿を忠実に再現して建設・開館しました。美術品の展示エリアの奥には、表御殿にあった茶室や藩主たちが過ごした部屋が再現されており、美しい庭園を望むことができます。まさに殿さまの目線で美術品や庭を楽しむことができます。

ゆるキャラではもうベテランになってしまった“ひこにゃん”も、時間を決めて登場します。相変わらずの大人気です。

新緑の美しい季節です。国宝の彦根城天守のほか、江戸時代の城下町の様子を再現した近隣の「夢京橋キャッスルロード」はぶらり歩きに最適で、グルメやカフェが存分に楽しめます。遠方からわざわざ訪れる魅力にあふれた観光地です。

こんなところがあったのか。
日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさん。



1976年発行の人気切手シート


彦根城博物館「国宝・彦根屏風」特別公開
http://hikone-castle-museum.jp/topics/5727.html

会期: 2018年4月13日(金)~5月8日(火)
会期中原則休館日:なし
※展示作品は、展示期間が限られているものがあります。


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