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国会議事堂 日本の現代史を体験できる稀有な空間_衆議院見学記

2019年02月04日 | 城・屋敷・歴史遺産

国会議事堂で衆議院を見学しました。国家を運営するルールとなる法律を作る神聖なところです。TVニュースで頻繁に目にしていた本会議場は、案外小さく見えました。

  • 国会は国家権力の最高機関、選ばれた者たちだけが立ち入ることができる
  • 明治期の計画から半世紀も経て竣工、日本の国力を象徴する建造物
  • 日本全国から最高級の石を集めた建築に、昭和大正モダニズムを垣間見る


歴史的にも文化的にも、近代日本の姿を今に伝える遺産でもあります。TVを通じてではなく、リアルに国家権力の空間を体験する価値は、日本という国家を体験する価値そのものです。


中央塔

国会議事堂は、1885(明治18)年に建設計画が始まり、幾度もの計画変更を経て、1936(昭和11)年に竣工しました。二度の仮議事堂の失火焼失や関東大震災、二・二六事件といった様々な苦難を乗り越えて建造されており、近代日本の歴史を象徴する建造物と言えます。

現在の国会議事堂の設計は1918(大正7)年に一般公募されましたが、一等になったのは宮内省の技師による作品です。このプランも、実際の設計を行った大蔵省の技師によって大きく変更されています。議事堂は完成まで半世紀もかかっており、国家権力の最高機関と位置付ける現代の民主主義国家ではありえない感覚です。戦前は、国家主権が国民ではなく天皇にあった時代だったのです。

国会議事堂を象徴するピラミッド型の中央塔は高さ65mで竣工当時は日本一の高さのビルでした。国会議事堂付近は標高24mほどある高台です。1958(昭和33)年に東京タワーが完成するまでは、東京の方々から見えたランドマーク的な建造物でもありました。


敷地内正門から桜田門の警視庁が見える

国会議事堂内部の見学には二通りの方法があります。いずれも無条件で誰でも可能です。なお本会議場以外で行われる予算委員会など委員会も「傍聴」できますが、国会議員の紹介が必要です。

  1. 参観:国会が開かれていない時に、本会議場と周辺施設をツアー形式で見学できる
  2. 傍聴:国会が開かれている時に、本会議場で議事の様子を傍聴できる


観光目的での見学は、中央玄関など本会議場以外のところも見学できる「参観」の方がより充実しています。「傍聴」はあくまで議事の様子を見聞きすることが目的です。本会議場以外には立ち入ることができませんが、国会開催中に見学できるメリットがあります。

日本の国会は、毎年1月中に召集され会期150日の「通常国会」が6月まで必ず開催されます。「通常国会」以外には、二通りの不定期な国会が開催されます。

  1. 臨時国会:内閣による召集、衆参いずれかの議員の1/4以上の要求による召集、衆議院議員の任期満了による総選挙/参議院議員の通常選挙後の初めての召集、のいずれかで開催
  2. 特別国会:任期満了を除く衆議院議員の総選挙後初めての召集

いずれも会期の延長があり、スケジュールとしては毎年確定したものはありません。「参観」は国会閉会中と、会期中でも本会議が開催されていない時に限られます。政治の最前線の舞台であり、事前に予定を立てることが難しい社会科見学です。衆議院/参議院の公式サイトで直前に公表される議事予定を確認する以外に、スケジューリングはできません。

衆議院公式 YouTube 動画 国会施設案内(全編)


参観では本会議場以外に、中央広間や赤絨毯の廊下が見学できます。中央広間は議事堂の中央塔の真下にある玄関ホールにあたります。中央玄関は普段は閉ざされていますが、衆参議員選挙後の当選議員の初登院時や、天皇/外国元首を国会議事堂に迎える時のみ使用されます。

【衆議院公式サイトの画像】 中央広間

天井まで高さ32mもある巨大な吹き抜けは、国会議事堂を象徴する空間でもあります。全国から集められた石がはめられており、石の博物館とも呼ばれています。昭和大正モダニズムの意匠を体感できます。

広間四隅の内の三隅には、大日本国憲法発布50周年の1938(昭和13)年に設置された板垣退助/大隈重信/伊藤博文の銅像が威厳を見せています。いずれも日本の議会政治の確立に貢献した政治家です。広間の北東隅だけはなぜか銅像がありません。「偉大な政治家になってここに銅像を建てよ」と戒めているなど諸説ありますが、ない理由は謎に包まれています。

【衆議院公式サイトの画像】 御休所

中央広間から赤絨毯の階段を上ったところにある御休所(ごきゅうしょ)は、国会開会式の当日に天皇陛下が両院議長から挨拶を受ける部屋です。総ヒノキ造りで漆塗りの室内は、昭和初めの建築と意匠の粋を集めた空間です。戦前の皇居宮殿が第二次大戦末期に焼失して現存しない今、”Emperor”のための空間としてきわめて貴重な存在です。

【衆議院公式サイトの画像】 衆議院本会議場

随所に見られる赤絨毯の廊下は、国会議事堂が特別な空間であることを現しています。いくつかの赤絨毯を通って衆議院の本会議場に入ります。TVニュースで目にする空間は、実際には案外小さく感じられますがとても荘厳です。扇型の議員席のかなめにある議長席とその後ろの天皇傍聴席は木造で、日本らしい木の香りが漂っています。数々の歴史的な政治の舞台となってきたこの空間は、表現できないような厳粛な趣を感じさせます。


正門

お伝えした国会見学記は、議事堂正面に向かって左(南)側の衆議院によるものです。右(北)側の参議院の参観は、全く別物として行われます。衆参両院は、国家権力の中でもそれぞれ、独立した存在として位置づけられているためです。ちなみに国会議員は原則、自らが属する院内にしか立ち入ることはできません。

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



国会議事堂に戦前の建築芸術の粋が集めっていることがよくわかる

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国会議事堂 衆議院
【衆議院 公式サイト】 「参観」案内
【衆議院 公式サイト】 「傍聴」案内

原則参観休止日:なし
参観受付時間:平日8:00~16:00随時受付(スタート時間は不定)
       土日祝日9:30/10:30/11:30/13:00/14:00/15:00スタート、10分前受付終了

※9名以下の団体・個人は参観の参観の事前予約はできません、当日申し込みだけになります。
※運営上の都合で予告なく参観中止、時間・コースの変更が行われる場合があります。
※衆議院本会議開会1時間前から本会議散会後の参観準備が整うまでは参観できません。
※見学は係員による案内に限られます。自由見学はできません。所要約60分。
※院内の食堂・売店は利用できません。
※院内は原則写真撮影できません。
※参観前に手荷物検査を受ける必要があります。

参議院の見学・傍聴は別途手続きが必要です。
【参議院 公式サイト】 見学・傍聴 案内



◆おすすめ交通機関◆

東京メトロ丸の内線/千代田線「国会議事堂前」駅下車、1番出口から徒歩3分
東京メトロ有楽町線「永田町」駅下車、1番出口から徒歩5分
東京メトロ半蔵門線/南北線「永田町」駅下車、3番出口から徒歩10分

JR東京駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:15分
東京駅→東京メトロ丸の内線→国会議事堂前駅

※この施設には駐車場はありません。
※駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。


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