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京都 龍安寺に帰還した金碧の襖絵は石庭に妙に合う_6/10まで公開

2019年01月28日 | お寺・神社・特別公開

京都・龍安寺(りょうあんじ)は、何といっても石庭(せきてい)が世界的に有名です。その石庭ぬ向き合う方丈(ほうじょう)の襖絵は戦後に描かれたものですが、明治までは狩野派による襖絵がありました。廃仏毀釈の混乱で散逸したのです。龍安寺は近年、その襖絵を買い戻すことで寺への帰還を実現させています。

  • 昨年2018年に龍安寺が新たに買戻した襖絵の一部が、9年前に買い戻した作品と共に公開される
  • 石庭のシンプルさと、金碧の豪勢な襖絵が、両極端ながらも空間の雰囲気に妙に調和している
  • 葉の大きさが特徴のバショウを、武家の城の松のようにとても雄大に描いている構図が面白い


禅寺は庭が売り物のことが多いので、背後にある方丈の障壁画を案外見落としがちです。振り返って見てみると、方丈と一体となった庭の空間の豊かな表情が見えてきます。


受付から石庭と方丈へ進む

龍安寺は、応仁の乱で東軍の総大将となった実力者・細川勝元(ほそかわかつもと)によって1450(宝徳2)年に創建されました。足利義満が築いた金閣のある北山殿も近く、一帯は古来より上流階級の別荘地のようなところでした。

安土桃山時代にも信長や秀吉がたびたび訪れており、境内にある鏡容池(きょうようち)を楽しんでいたようです。山門付近から鏡容池をのぞむと、現代でも中国の山水画に出てくるような趣を感じます。


鏡容池

鏡容池は、江戸時代の旅行ガイド・都名所図会(みやこめいしょずえ)でもオシドリの名所として紹介されています。江戸時代は、石庭はさほど有名ではなかった可能性も指摘されています。龍安寺の石庭は、1975(昭和50)年のイギリスのエリザベス女王拝観のニュースがきっかけとなって、国内外で有名になったとされています。大きなきっかけがないと、誰も価値に気付かないケースは少なくありません。

石庭は創建時、もしくは応仁の乱で焼失した方丈が勝元の子・政元(まさもと)によって1499(明応8)年に再建された時、いずれかの作庭と考えるのが最も自然ですが、作者や作庭の意図と共によくわかっていません。

しかしながら時の最高クラスの政治権力者が創建・再建していることから、トップクラスの作庭家が携わっていたことは間違いないでしょう。方丈・土壁との空間バランスを配慮した石組みのデザインの素晴らしさが、石庭のミステリーを一人歩きさせている感もあります。


鏡容池から石庭入口の庫裏に至る石段が美しい

現在の方丈は、1499年再建の方丈が1797(寛政9)年に焼失した際に、塔頭・西源院から移築したものです。1606(慶長11)年に織田信長の弟によって建立され、重要文化財です。この移築された方丈の上間一の間(じょうかんいちのま)に明治まであった襖絵の一部が、今回特別公開されている芭蕉図9面です。

【メトロポリタン美術館公式サイトの画像】 琴棋書画図4面
【メトロポリタン美術館公式サイトの画像】 群仙図(列子図)4面

方丈の襖絵は、明治半ばに一旦福岡県の炭鉱王・伊藤伝右衛門の手に渡ります。昭和26年ごろには行方不明になっていましたが、一部がニューヨークのメトロポリタン美術館やシアトル美術館に所蔵されているのが確認されました。龍安寺に帰還した2010年の6面と今回公開される9面は、いずれもオークション会社を通じてコレクターから買い戻したものです。

それでも全71面中、所在がわかっているのは27面に過ぎません。まとまって存在していた美術品が一旦散逸すると、このような憂き目にあうことは避けらえません。

【龍安寺公式サイトの画像】 今回公開される芭蕉図9面
【龍安寺公式サイトの画像】 今回公開される琴棋書画図4面
【龍安寺公式サイトの画像】 今回公開される群仙図2面

展示されている作品は、いずれも金碧の彩色がよく残っており、往時の趣をしのぶことができます。芭蕉図は連続する9枚が途切れていないため、見応えがあります。はめられていた上間一の間は方丈の入口から最も奥にあり、大切な客人を通していた部屋と考えられます。生命力の強さを感じさせる豊かな描写と、究極にシンプルな石庭との対比がとても興味深く感じます。



方丈の襖絵は狩野派の制作と考えられていますが、芭蕉図は海北派による作との説もあるようです。ミステリーが人々の心をとらえて離さない龍安寺に、新たなミステリーが追加されました。これを機会に庭を見た後は、後ろを振り返るようにしていただければ幸いです。



こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



そろそろ単眼鏡デビューを

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龍安寺
ふすま絵(芭蕉図)特別公開
【寺による特別公開サイト】

会場:方丈
会期:2019年1月10日(木)~6月10日(月)
原則休館日:なし
入館(拝観)受付時間:8:30~16:30(3~11月は8:00~17:00)

※この特別公開では、方丈室内の撮影が可能です。
※この特別公開は定期的に行われるものではありません。
※この堂宇は観光目的で常時公開されています。

龍安寺
【公式サイト】 http://www.ryoanji.jp/



◆おすすめ交通機関◆

京都市バス「竜安寺前」バス停下車、徒歩1分
京福電鉄・北野線「龍安寺」駅下車 徒歩10分

JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:45分
京都駅→地下鉄烏丸線→今出川駅→烏丸今出川バス停→市バス59系統→竜安寺前

【公式サイト】 アクセス案内

※京都駅から直行するバスもありますが、地下鉄とバスを乗り継ぐ方が、時間が早くて正確です。
※この施設には無料の駐車場があります。(拝観者のみ1時間まで)
※道路の狭さ、渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。


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