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中金堂300年ぶりのお披露目 ~奈良・興福寺に天平の空間が出現

2018年10月27日 | お寺・神社・特別公開

興福寺の悲願だった、寺の本尊をまつる最も大切な堂宇である中金堂の再建工事が2018年秋に完成し、完成を感謝する落慶法要を終えて10/20から一般公開が始まりました。

創建時の基壇の発掘調査から始め、20年がかりで奈良時代の姿に可能な限り忠実になるよう、工事が進められました。奈良時代らしい赤い柱の建造物は今まで興福寺にはありませんでした。瑞々しくもある赤い色は興福寺の境内を、薬師寺や平城京大極殿のように天平の空間を彷彿とさせる光景に変えています。

奈良の新名所をぜひご覧ください。



日本の寺は木造建築であり、幾度も焼失と再建を繰り返しているのが一般的です。中金堂も奈良時代初めの建立以来、7度も焼失の憂き目にあっています。最後の1717(享保2)年の後は、興福寺を永らく支えてきた藤原家にゆかりのある公家や幕府の援助も得られず、約100年後の1819(文政2)年に出開帳収入や市民の浄財により、とりあえずの仮堂として再建されるのがやっとでした。

この仮堂も昭和になると雨漏りなどの老朽化が深刻になります。1974(昭和49)年、薬師寺の現在の金堂再建の際に、今まで使われてきた旧金堂を譲ってもらい仮金堂としました。仮金堂は現在も中金堂の裏で、仮講堂と改称されひっそりと佇んでいます。1819年の仮堂は2000年に解体され、跡地で現・中金堂の再建工事が行われます。

今回の再建は、平成になって著名な歴史的寺院としての名声が確立し、拝観収入や勧進(寄付)が見込めるようになったからでしょう。再建費用は60億円、柱にする巨木は日本では手に入らないため世界中を探し回ったとのことです。

サイズは東西36m南北23m高さ21mで、東大寺大仏殿と薬師寺金堂の中間くらいの大きさです。安定感があり、センターとしての中金堂にふさわしいデザインがなされています。大きな青い空にもとてもよく映えています。


中金堂から五重塔をのぞむ

落慶法要は10/7から5日間連続で行われました。日本を代表する歴史的な寺の最重要堂宇の再建を祝う法要であり、近年まれにみるスケールです。西国観音札所や南都の有力寺院による法要に引き続き、延暦寺も法要を行っています。

中世に幾度も繰り返していた抗争を鑑みると隔世の感がありますが、意外なことに中世にも行われていたようです。1399(応永6)年の中金堂再建に延暦寺の僧が法要に参加した記録があることから興福寺が依頼、延暦寺も快諾しました。

仮講堂に安置されていた本尊・釈迦如来は今回の落慶に合わせて金箔を貼り直され、まばゆい輝きを放っています。興福寺の仏像は当たり前のように国宝・重要文化財のオンパレードですが、この釈迦如来は江戸時代の造立で国の文化財指定はされていません。大きすぎて火災の際に避難させることができなかった、興福寺の苦難の歴史を示しています。

【公式サイトの画像】 中金堂 釈迦如来坐像

本尊・脇侍の薬王・薬上(やくおう・やくじょう)菩薩は3.6mもあり、巨体の本尊の脇をがっちりと固めています。以前は鎌倉再興期の西金堂本尊の脇侍でした。重文です。須弥壇の四方では、落慶に伴って南円堂から移された四天王が本尊を護っています。こちらは国宝です。

【公式サイトの画像】 中金堂 薬王・薬上菩薩立像
【公式サイトの画像】 中金堂 四天王立像

柱には日本画家・畠中光享(はたなかこうきょう)による法相宗の教えを発展させた印度・中国・日本の14人の僧の姿が描かれています。中金堂のフレッシュな室内空間にとてもマッチしています。


北円堂

秋色に染まった北円堂も、中金堂一般公開スタートの日から、おおむね正倉院展の期間中に公開されています。

興福寺では引き続き、中金堂や北円堂を取り囲む回廊や南大門の再建工事を進めています。2020年完了予定の薬師寺東塔の解体修理が終わると、次は興福寺・五重塔が解体修理に入るという噂もあります。興福寺の境内に新しい魅力が次々と増えていくようです。

こんなところがあります。
ここにしかない「美」があります。



興福寺貫首が語る現代の寺の再建ばなし

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興福寺
【公式サイト】http://www.kohfukuji.com/

原則休館日:なし
入館(拝観)受付時間:9:00~16:45



◆おすすめ交通機関◆

近鉄奈良線「近鉄奈良」駅下車、東改札C出口から徒歩5分
JR大阪駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安: 1時間5分
JR大阪駅→JR環状線→鶴橋駅→近鉄奈良線→近鉄奈良駅

【公式サイト】 アクセス案内

※この施設には有料の駐車場があります。
※渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。


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