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奈良 法華寺 絶世の美仏が春の公開_国宝 十一面観音 3/20から

2019年03月05日 | お寺・神社・特別公開

尼寺らしい優しい趣の境内で知られる奈良・法華寺(ほっけじ)で、国宝の十一面観音の春の公開が間もなく始まります。女性的な美しさでは日本有数の美仏です。

  • 奈良時代に全国に設けられた国分尼寺の総本山、光明皇后ゆかり
  • 門跡尼寺の伝統があり、境内の雰囲気はとても女性的
  • 十一面観音のほか維摩居士坐像も国宝、伝わる文化財の質は高い
  • 奈良市では数少ない江戸初期の名勝庭園も春に限って公開


東大寺や興福寺と比べ観光客は少ないため、落ち着いて1300年続く空間を味わうことができます。天平の名残を体感するには、法華寺は欠かせません。


シンプルな境内にほのかな桜が合う

法華寺の境内は隣接する海龍王寺と共に、光明(こうみょう)皇后の父・藤原不比等の邸宅でした。745(天平17)年に光明皇后が寺にした後、総国分尼寺となり、奈良時代には大伽藍が形成されます。平安京に遷都後は、他の奈良の寺院と同様、衰退していきます。南都焼討の後、東大寺を復興した重源や西大寺を中興した叡尊によって復興されますが、戦国時代に再び戦火で焼失します。

現在の本堂は1601(慶長6)年に豊臣秀頼と淀殿によって再建されたものです。名勝庭園が作庭されたのは、江戸時代初めに後水尾天皇の皇女が入寺し、尼門跡寺院となった頃と考えられています。


浴室

境内の堂宇はいずれもコンパクトで、女性的な趣を感じさせます。浴室(からぶろ)は江戸時代半ばの建築ですが、光明皇后が庶民に沐浴(もくよく)を推奨し、病気治療に努めたという伝説があります。光明皇后は、貧者を救済する悲田院(ひでんいん)や、薬草を施す施薬院(やくいん)を設立しています。大阪・四天王寺に同様の施設を設けた聖徳太子と並んで、日本の社会福祉の第一人者と言えます。


本堂

【奈良県観光公式サイトの画像】法華寺 十一面観音

本尊の十一面観音は、光明皇后の姿を彫り上げたという伝説がありますが、お顔に密教的な表現があります。実際の制作は平安時代初期と考えられます。絶世の美女にも美少年にも見えるお姿は、究極の中性的な造形として絶品です。一部の彩色を除いてカヤの木肌の美しさを強調する素地仕上げであることも、仏様の印象を一層神秘的に感じさせます。

細い枝の先にハスのつぼみと葉だけが付けられた珍しい光背は、天竺を思わせるエキゾチックなお顔とも絶妙に調和しています。像高1mの小振りな立像ですが、美しく洗練された存在感があります。素晴らしい国宝です。江戸時代初期の本堂再建時に、本尊とされたようです。特別公開時以外は、本物のビャクダンで造られた御分身像を拝むことができます。こちらも必見です。

本堂には2017年に国宝になった維摩居士(ゆいまこじ)坐像も安置されており、こちらは通年公開です。奈良時代末期の造立で、釈迦の弟子の姿を表したものです。口を開けて話し出す瞬間を写真のように見事に表現しています。天平時代の肖像彫刻の傑作です。


名勝庭園

名勝庭園は、毎年4月1日から6月上旬の期間だけの公開です。5月のカキツバタがよく知られていますが、4月も新緑を楽しむことができます。木々の密度が濃いことがこの庭園の特徴で、池の周囲を回遊しながら緑の豊かさをより味わうことができます。



法華寺は平城宮跡の東隣にあります。東院庭園や海龍王寺とセットにした散策がおすすめです。奈良の大きな青空は、春にはことさら明るく感じられます。

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



聖武天皇以上に存在感のあった皇后の実像に迫る

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法華寺
十一面観音 特別開扉 春季
【奈良県観光公式サイト】

会場:本堂
会期:2019年3月20日(水)~2019年4月7日(日)
原則休館日:なし
入館(拝観)受付時間:9:00~16:30

※この特別公開は、毎年ほぼ同日程で行われています。秋季(10/25頃~11/10頃)にも公開されます。
※この寺は観光目的で常時公開されています。

国史跡名勝庭園 特別公開
【奈良県観光公式サイト】

会期:毎年4月1日~6月10日頃
入館(拝観)受付時間:9:00~16:30

法華寺
【公式サイト】http://www.hokkeji-nara.jp/

原則休館日:なし
入館(拝観)受付時間:9:00~16:30

※公開期間が限られている仏像や建物・美術品があります。



◆おすすめ交通機関◆

近鉄奈良線「新大宮」駅下車、徒歩20分

JR大阪駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:1時間10分
JR大阪駅→JR環状線→鶴橋駅→近鉄奈良線→新大宮駅

【公式サイト】 アクセス案内

※この施設には無料の駐車場があります。


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