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京都では七五三より十三まいり_嵐山 虚空蔵法輪寺 3/13から

2019年03月03日 | 祭・行事・季節の花

京都・嵐山の渡月橋の南にある虚空蔵法輪寺(こくうぞうほうりんじ)は、知恵の神様・虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)でよく知られています。数え年で13歳になった子供が知恵を授かりにお参りする、京都の春の風物詩・十三(じゅうさん)まいりがまもなく始まります。

  • 京都では七五三よりはるかに古い子供の成長に合わせた行事
  • 参拝後の帰り、渡月橋を渡り終えるまでに後ろを振り向くと授かった知恵を失うという習俗でも有名
  • 中学校に入学する春にお参りするのが一般的で、春休みの渡月橋は晴れ着姿でとても華やか
  • 境内にある電気・電波の神を祀る電電宮も隠れた人気


境内は少し高台にあって、嵐山や嵯峨野の絶景も楽しめます。普段は関心の向かない渡月橋の南側に、訪れると元気になれる寺があります。


十三まいりで華やぐ境内

法輪寺は京都に複数あり、奈良にもあります。嵐山にある法輪寺は「虚空蔵法輪寺」と呼ぶことが一般的です。

虚空蔵法輪寺は、奈良時代に行基が創建したとする伝承があるようですが、史実として確認できるのは平安時代の始めです。空海の弟子・道昌(どうしょう)が寺に入り、虚空蔵菩薩を安置して868(貞観10)年に法輪寺として中興しました。道昌は渡月橋を始めた架けた人物としても知られています。

十三まいりは平安時代に貴族の儀式として行われていたようですが、庶民に一般的になったのは江戸時代からのようです。なぜ数え年で13歳(満12歳)にお参りするのかは諸説あるようですが、大人の仲間入りをする儀式という意味では一貫しているようです。

江戸時代までは旧暦の3月13日に行われてきたこともあり、現在は旧暦と季節感が同じになる4月13日を中心に行事を行う寺が中心です。虚空蔵法輪寺では4月13日を中心にした前後1か月間に加え秋にも行っています。13日は虚空蔵の縁日とされる日付です。


舞台からのぞむ嵯峨野

満12歳ともなれば、成長が早い女子は大人の体格です。十三まいりは初めて大人サイズの晴れ着を着る機会になることが一般的です。男子も袴やスーツ姿が目立ちます。学校の制服でのお参りも少なくありません。本堂の横にある舞台からは嵯峨野の絶景がのぞめます。絶好の記念撮影スポットになっています。

お参りすると、願いを込めた漢字一字を書いた紙を供えて祈祷を受けます。虚空蔵菩薩から知恵を授かり、立派な大人として生きていく儀式になります。参拝後に後ろを振り向くと知恵を失うという習俗も、「もう子供には戻れない」という決意を子供にさせる意味があると考えられています。

とは言え現代の京都では、中学校入学時の一大エンタメ・イベントと化しています。親は事前に「絶対に渡月橋で後ろを振り返ったらあかん」と子供に諭しますが、当日はありとあらゆる誘惑の言葉を投げかけて子供が振り返らないか試そうとします。親としては「大人は誘惑に耐えねばならない」という大義名分があります。子供もそれを承知で警戒しているので、速足で渡月橋を渡ろうとする子がたくさんいます。

結構笑える光景です。なおすべての親子がこんなことをしているわけではありません。



境内にある電電宮(でんでんみや)は、雷の神をまつる法輪寺の鎮守です。永らく荒廃していたものを、1956(昭和31)年に関西の電機業界関係者が集まって再興しました。電気の神様はとても珍しいこともあり、境内に掲げられている電電宮の護持会の会員企業名には、関西のみならず全国の電気・IT・通信・放送に関わる有力企業の名前がずらりと並んでいます。

傑作なのは、電電宮のお守りとして虚空蔵法輪寺で売られているmicroSDカードです。本物のメモリーとしてスマホやPCで使用できます。IT業界で名を揚げようとする人にはたまらないお守りです。カードには本尊・虚空蔵菩薩の画像ファイルが入っていることも気が利いています。

虚空蔵法輪寺はこの他、針供養や漆供養でも知られます。特定のジャンルに絞った参拝で存在感を発揮する、マーケティング上手なお寺のようです。


法輪寺の南側入口

十三まいりは特に京都で著名な行事で、関西全域で知名度が高いわけではありません。この行事を知らない関西人の中には「じゅうそうまいり」と読んでしまう人がいます。阪急電車の駅名の方が圧倒的に有名だからです。私も以前そうでした。

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



初めての晴れ着のお供に扇子

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虚空蔵法輪寺
十三まいり
【寺による行事公式サイト】

会期:毎年3月13日~5月13日、10月1日~11月30日(日付で固定)
原則休館日:なし
入館(拝観)受付時間:9:00~16:00

※この寺は観光目的で常時公開されています。
※公開されていない仏像や建物・美術品があります。



◆おすすめ交通機関◆

阪急嵐山線「嵐山」駅下車、徒歩5分
京福電鉄嵐山線「嵐山」駅下車、徒歩8分
JR嵯峨野線「嵯峨嵐山」駅下車、徒歩18分

JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:40分
京都駅→JR嵯峨野線→嵯峨嵐山駅

※この施設には駐車場はありません。
※道路の狭さ、渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。


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