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滋賀・甲賀・櫟野寺 ~東博で話題の美仏が12/9まで開帳

2018年10月12日 | お寺・神社・特別公開

櫟野寺(らくやじ)は滋賀県の甲賀地方の天台宗の中心寺院で、中世に大きな寺勢を誇ったことをうかがわせる美仏がたくさんのこされています。今年2018年の秋、2年以上に渡った本堂の改修工事を終え、甲賀地方を代表する美仏である本尊・十一面観音が開帳されます。2016年秋の東京国立博物館の展覧会で話題になった、あの美仏が里帰りされたのです。

滋賀県は彫刻の国宝・重要文化財指定件数が全国3位で、美仏がとても多い県です。京都から少し足を伸ばすだけで、喧騒を離れて静かに仏様にお会いすることができます。



滋賀県南部、京都府と三重県に接する甲賀地方は、古くから寺社建築に適した巨木の産地として知られていました。平安時代の初め、天台宗の開祖・最澄が比叡山の根本中堂建立のための巨木を求めてこの地にたどり着き、櫟(イチイ)の木に十一面観音像を自ら彫ったのが寺の始まりと寺伝は伝えています。櫟野寺は地元では櫟野(いちいの)観音と呼ばれていますが、この最澄伝説に由来する名前なのでしょう。

まもなくしてこの地を訪れた征夷大将軍・坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)が堂宇を整備し自ら、毘沙門天像を彫ったとも伝わっています。最澄と坂上田村麻呂という二人の神格化されたスーパースターの縁起が、観音信仰の寺として櫟野寺を永らく栄えさせることになります。

信長の焼討にあい荒廃が進んだ時期もあったようですが、20体にも及ぶ平安仏は都度大切に守られてきました。像高3mを超し、重要文化財の坐像としては日本最大の本尊をどうやって守ってきたのかは不思議でもありますが、それだけ地域で大切にされてきた証でもあります。

【公式サイトの画像】 東京国立博物館「平安の秘仏―滋賀・櫟野寺」展

本尊の重文・十一面観音坐像は、保存状態が良く、地肌が美しいことが最大の魅力です。落ち着いた穏やかな表情をしたお顔であることから、最澄の生きた時代から1cほど後の平安時代半ばの制作と考えられています。大阪・観心寺の小悪魔的にも見える如意輪観音が、齢を重ねて円熟を増したようなお顔に見えます。巨体にもかかわらず、頭部や光背、衣の造形はとても繊細で丁寧に造られています。

中世にこの仏様の輝きを見た人たちは、さぞかし心が洗われたことでしょう。そんな包容力のオーラが現在も体全体からあふれています。

本尊は永らく33年に一度開帳されるだけの秘仏でした。このことが保存状態のよさには大きく貢献していると考えられます。近年になって年4回公開されるようになりましたが、ここ2年は本堂の改修工事でお会いすることはできませんでした。東博での出開帳もこの機会を活かしたものです。



2018年10月から始まる本尊開帳は、綺麗になった本堂に本尊がお戻りする最初の開帳ですが、ちょうど以前の33年毎の開帳の周期にもあたります。

坂上田村麻呂伝説で信奉を集める重文・毘沙門天立像は、ぽっちゃりしていて愛嬌のあるお顔が印象に残ります。平安時代半ばの作ですが、仏法の守護神としていかめしい表情ではないお顔に造形された初期の例でしょう。

同じ頃に製作された重要文化財・観音菩薩立像は、切れ目のお顔とスリムなボディが特徴で、中性的なモデルのようにスタイリッシュに見えます。とても美しく造形されています。

少し時代が下って平安時代末期の作である重要文化財・薬師如来坐像は、ふくよかで穏やかな定朝様式のお顔をしています。櫟野寺の末寺の本尊でしたが、平安時代の天台宗寺院の面影を伝える名品です。櫟野寺の中世の繁栄ぶりがよく伝わってきます。



櫟野寺は甲賀の里にあります。なので忍者もちゃんといます。信楽焼とともに甲賀路をお楽しみください。

こんなところがあります。
ここにしかない「美」があります。



天台寺門宗住職の著者が観音信仰の”秘訣”を紹介


櫟野寺
御本尊大開帳
【寺による公式サイト】

会期:2018年10月8日(土)~12月9日(日)
原則休館日:なし
入館(拝観)受付時間:9:00~16:00

櫟野寺
【公式サイト】http://www.rakuyaji.jp/

原則休館日:12/17-1/1
入館(拝観)受付時間:9:00~16:00

※公開期間が限られている仏像や建物・美術品があります。
※本尊の公開は毎年、新年・春・盆・秋にも行われています。



◆おすすめ交通機関◆

JR草津線「甲賀」駅下車、北口から町内巡回バス「櫟野観音前」バス停下車、徒歩すぐ
JR草津線「甲賀」駅から車で10分
新名神高速「甲賀土山」ICから車で15分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:2時間
京都駅→JR琵琶湖線→草津駅→JR草津線→甲賀駅→町内巡回バス→櫟野観音前

【公式サイト】 アクセス案内

※大開帳期間中のみ甲賀駅からの臨時バスも運行されます。
※鉄道やバスは本数が少ないため、事前にダイヤを確認の上、利用されることを強くおすすめします。
※この施設には無料の駐車場があります。
※現地付近のタクシー利用は事前予約を強くおすすめします。


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