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京都・大徳寺・真珠庵 ~マンガの襖絵が今だけ見れます

2018年09月09日 | お寺・神社・特別公開

京都・大徳寺の広大な境内は、常に上質な静寂と緑に包まれています。室町時代から江戸時代にかけて茶の湯文化のサロンのような場所となり、本坊や塔頭には襖絵や庭など、数多くの文化財を今に伝えています。

真珠庵(しんじゅあん)は、大徳寺の塔頭の中でも特に文化財が多く伝わることで知られています。長谷川等伯らの障壁画が修復作業に入ったのを機に、現代のイラストレーターや漫画家に依頼して襖絵を新調しました。とても意外な依頼に思えますが、現代プロたちが手掛けた個性の強いそれぞれの作品は、古刹に見事にマッチしています。

新調襖絵は12月までの公開です。普段は非公開の寺ですので、庭などを鑑賞できる絶好の機会にもなります。



真珠庵は室町時代半ばの永享年間(1429~1441)に、とんちで有名な一休宗純(いっきゅうそうじゅん)が開きました。応仁の乱で焼失しますが、一休に参禅していた堺の豪商・尾和宗臨(おわそうりん)によって1491(延徳3)年に現在地に再興されます。尾和宗臨は一休による戦国時代の大徳寺伽藍の復興を資金面で支えたことで、安土桃山時代の大徳寺の隆盛に大きく貢献する人物です。

重要文化財の現在の方丈は、江戸時代初め1638(寛永15)年に建て替えられたものです。この時期は同じく宗臨が再建していた大徳寺本坊の方丈・法堂も建て替えられており、大徳寺開山の大燈国師300年忌にあわせた新調だったと伝わっています。

【京都春秋サイトの画像】 方丈東庭「七五三庭」

方丈東側の史跡&名勝「七五三の庭」は、一休に参禅していた侘茶の祖・村田珠光(むらたじゅこう)による作庭と伝わります。方丈と敷地境界の細長く狭いスペースに合うよう、15個の石を7,5,3個ずつ配し、築地塀を低くすることで空間にゆとりを設けています。江戸時代には比叡山が借景に望めたといいます。

江戸時代初めに正親町天皇の女御の屋敷を移築した通僊院(つうせんいん)は、高貴な女性にふさわしい気品にあふれた重要文化財の書院です。土佐光起らの襖絵も見ものです。

他にも一休宗純の肖像など多くの重要文化財が公開されています。

【京都春秋サイトの画像】 室中 北見けんいち「楽園」

方丈の襖絵新調には6人のアーティストが参加しています。方丈の中心・仏間に向かう部屋・室中には「釣りバカ日誌」の作者・北見けんいちによるカラフルな作品が飾られています。与論島で人々が楽しく集う様子を描いており、観る者をとても明るい気分にさせてくれます。方丈の時間を積み重ねた床や白壁にも絶妙にも絶妙にマッチしているところがプロの仕事だと感じます。

ゲーム「ファイナルファンタジー」のアートディレクターや、アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の制作会社社長らも制作に参加しています。戦闘機やカラオケする一休さんを描いた作品もあります。Web上でも鑑賞できますが、襖絵は空間で楽しんでこそ、よさが伝わってきます。ぜひお出かけください。


大徳寺本坊の北側にあります、お隣は大仙院

一休に参禅していた画家・曾我蛇足(そがじゃそく)や長谷川等伯の作品と伝わる障壁画の修復費用を、真珠庵ではクラウドファンディングで集めています。新調襖絵特別公開の収入も充てるようです。実在の人物としての一休さんも、僧にはご法度だった飲酒・肉食を行うなど突飛な行動で知られていますが、当時の仏教や世相を風刺した行動と理解されています。

寺の襖絵はマンガ。一見突飛な行動かもしれませんが、その時代を一世風靡した芸術作品を遺すことは昔から寺の大切な役割でもあります。一休さんの伝統に基づいたのでしょうか、チャレンジングな行動にエールを送りたいと思います。300年後に国宝になっているかもしれません。


大徳寺境内はいつ見ても綺麗(山門)

こんなところがあります。
ここにしかない「美」があります。



別冊太陽ならではの、一休宗純への深い切込み


大徳寺 真珠庵 特別公開
「現代作家が描く襖絵公開」
【京都春秋 特別公開サイト】

会期:2018年9月1日(土)~12月16日(日)
原則休館日:10/19-21
入館(拝観)受付時間:9:30~16:00
※靴を脱いで室内を見学します。床汚れ防止のため、裸足の場合は靴下を持参しましょう。

大徳寺 真珠庵
【京都市観光協会サイト】

※公開されていない仏像や建物・美術品があります。
※この寺は観光目的では常時公開されていません。次の公開時期は未定です。



おすすめ交通機関:
京都市バス「大徳寺前」バス停下車、徒歩10分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:35分
京都駅→地下鉄烏丸線→北大路駅→北大路バスターミナル「青」のりば→市バス1/101/102/204/205/206/北8系統→大徳寺前

【京都春秋 特別公開サイト】 アクセス案内

※京都駅から直行するバスもありますが、地下鉄とバスを乗り継ぐ方が、時間が早くて正確です。
※この施設には有料の駐車場があります。
※駐車場不足により、クルマでの訪問は非現実的です。


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