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京都御苑に現存する閑院宮邸_御所とは異なる上質さが魅力_

2019年02月01日 | 城・屋敷・歴史遺産

京都御苑に江戸時代まであった皇族の屋敷の遺構が、案外知られていませんが、のこされています。御苑の南西隅にある閑院宮(かんいんのみや)邸です。

  • 幕末の敷地から移築されずに建物が現存する貴重な遺構
  • 明治10年まで屋敷として使用されており、江戸時代の皇族の生活や文化を垣間見ることができる
  • 皇族好みの建物の趣と庭園の造りが調和しており、寺の庭園にはない優雅な空間が魅力


平安時代の復古様式で建てられた御所の紫宸殿とは、かなり異なる趣です。京都御所とぜひ見比べてみてください。



閑院宮家は、江戸時代に四家あった世襲親王家(せしゅうしんのうけ)の一つです。親王とはわかりやすく言えば、皇位継承資格がある男子皇族のことです。代々親王宣下を受けることで、天皇の直系男子が不在の時に皇位継承者を出した最高格の皇族です。徳川幕府にとっての御三家のような存在です。

他の三家は伏見宮/桂宮/有栖川宮で、いずれも名前をお聞きになったことも多いでしょう。四家の中では現在、戦後すぐに皇籍離脱していますが伏見宮家だけが継続しています。

閑院宮家は江戸時代の半ば、1710(宝永7)年に創設されました。創建時の屋敷は1788年の天明の大火で焼失し、現在の建物はその後に再建されたものですが、再建時期はわかっていません。

閑院宮家が東京に移転した後は、裁判所や宮内省、環境省の施設として使用されてきました。2006年に復元改修工事を行い、一般に公開されるようになりました。


玄関

皇族の邸宅は概して天井が高いのが特徴です。現代より平均身長が低かった江戸時代には、かなりのゆとりを感じさせたと推測できます。廊下の幅が広いことも特徴です。そんな大きな室内空間ですが、意匠はいたってシンプルです。豪勢な飾りつけなどは一切なく、かえって素材の上質感が目立ちます。江戸時代の皇族がシンプルさを良しとしていたことがうかがえます。

建物の所々で障子が開放されており、緑の芝生が美しい庭園を見ることができます。木造の建物の絶妙な質感を示す茶色が、芝生の緑にとてもよく調和しています。



和風の建物は4棟あり中庭を囲む構造になっています。日本の上流階級の和風邸宅では、中庭はまずありません。建物の配置に中国やヨーロッパの様式を考慮した可能性があります。建築時期が判明すれば建物設計の事情がもう少し見えてくるような気がします。

和風建築で囲まれた一定の大きさのある中庭の光景はめったに見ることができないこともあり、実に乙なものです。家族や客人を招いて憩う場としてとても魅力的な空間と感じました。



4棟の内1棟が展示室になっています。京都御苑の歴史と自然がパネル解説され、発掘調査の出土品も展示されています。

建物の南と西側に広がる庭園は散策できるようになっています。庭園も非常にシンプルな印象を受けます。花はほとんど見かけません。自然の植生を大切に活かしているのでしょう。庭から眺める建物の風情もとても上質です。政治経済的な権威ではなく、身分や文化の権威をより尊重した皇族らしい、無駄のない凛とした空間になっています。


拾翠亭

閑院宮邸の東隣は公家の九条家の屋敷跡で、茶室・拾翠亭(しゅうすいてい)と庭園が現存しています。こちらも公開されており、2Fから眺める池の風景がとても雅(みやび)です。

【国民公園協会】 京都御所 拾翠亭 利用案内

御所の北側は桂宮邸跡で、桂離宮を造営した初代の智仁親王が手掛けた庭園と池がのこされています。きわめて貴重です。現在は宮内庁職員の宿舎として使われているため一般公開されていません。こちらも閑院宮邸と同じく公開されることを強く望むところです。

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



皇族や華族の息吹が伝わってくるような写真にくぎ付け

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閑院宮邸 展示室
【公式サイト】 https://kan-in-nomiya-teiato.jp/

原則休館日:月曜日、年末年始
入館(拝観)受付時間:9:00~16:00

※庭園は月曜日も見学できます。



◆おすすめ交通機関◆

地下鉄烏丸線「丸太町」駅下車、1番出口から徒歩5分

JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:20分
京都駅→地下鉄烏丸線→丸太町駅

【公式サイト】 アクセス案内

※この施設には有料の駐車場があります。
※駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。


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