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京都文化博物館「オットー・ネーベル展」 ~こんな画家がいたのか

2018年05月06日 | 美術館・展覧会

カンディンスキーやパウル・クレーの名前は知っていても、オットー・ネーベルという画家の名前をご存知の方は日本では少ないでしょう。

三人には一堂に会していた場がありました。20世紀のアート・デザイン・建築に大きな影響を与えたドイツの芸術学校「バウハウス」です。両大戦間のわずかな期間しか存続しませんでしたが、デザインの世界では現代も神格化された存在です。


バウハウス(デッサウ)

そのバウハウスが来年2019年に創設100年目を迎えます。京都文化博物館で始まった「オットー・ネーベル展」では、100年前に輝いていたバウハウスに集った芸術家としてネーベルを主役に抜擢します。

ネーベルの作品は、現代にも通ずる洗練されたデザインが印象に残ります。日本ではあまり知られていない20世紀の画家を“発見”できる絶好の展覧会です。



ベルリンに生まれたネーベルは、第一次大戦従軍後にワイマールに開設されたばかりのバウハウスで、彼の創作活動に大きな影響を与える画家たちと出会います。

【Googleの画像検索結果】 パウル・クレー

ネーベルより13歳年上のパウル・クレーはスイスのベルン出身で、ネーベルとは生涯にわたって親交が続きます。人物や動物、風景をモチーフにした洞窟壁画や埴輪の造形を彷彿とさせる彼の表現はとても個性的です。

「具象とも抽象とも言えない」とよく評されるように、見れば見るほど様々な見え方が浮かんでは消え、何の絵かよくわからなくなるのが彼の最大の魅力でもあります。それだけ観る者を惹きつけるオーラを発する画家です。

【Googleの画像検索結果】 ワシリー・カンディンスキー

ネーベルより26歳年上のワシリー・カンディンスキーはモスクワ出身のロシア人ですが、創作活動の大半をドイツとフランスで行っています。オランダ人のモンドリアンと並んで「抽象絵画の創始者」とよく評されるように、幾何学的な形状や線と色面だけで表現する作品が著名です。

何を表現しようとしているかは全く分かりません。しかし制作から100年経過した今見ても、デザイン的にとてもキレ味が良いのです。彼の代表作「コンポジション」シリーズがまさにその切れ味を見せてくれます。

【公式サイトの画像】 ご紹介した作品の画像が掲載されています

ネーベルの作品を見ていると、二人の個性を上手に学習していることがよくわかります。クレーのように実在のモノを極度に抽象化し、カンディンスキーのように色面の組み合わせを上手に使います。幾何学的な線だけに頼らず、フリーハンドな線表現も多用します。

一方、音楽記号や古代ゲルマン人が使用していたルーン文字を使って、表現にリズム感を醸成するのはネーベルの個性です。「ドッピオ・モヴィメント(二倍の速さで)」はリズム感を表現した秀作です。仮にダンススクールのレッスン場に掲げられているとすると、上達が早くなりそうです。

「輝く黄色の出来事」は、ネーベルの抽象絵画の傑作の一つでしょう。和風住宅の砂壁を思わせる黄色い背景面に、実に優雅に抽象モチーフが浮かんでいます。抽象モチーフは今にも動き出しそうに見えるところが見る者を惹きつけます。

「満月のもとのルーン文字」はとても幻想的な作品です。月明りだけが照らす古代の森の中にいるような気分にさせてくれます。ルーン文字のモチーフは、中近東の文字や街並みをモチーフにした「近東シリーズ」に発展していったようです。「近東シリーズ」もとても幻想的です。

1931年のイタリア旅行の際に製作した「カラーアトラス」は、底抜けに明るいイタリアの都市を幾何学的な色彩模様だけで表現しようとしたスケッチブックです。ナポリとポンペイの2作品が展示されています。

ネーベルの画風が“一皮むけた“と感じさせる記念碑的な作品です。展覧順序のほぼ中間に展示されていますので、その前後で作風を見比べてください、とても興味深いですよ。



西洋の美術館が持つ西洋絵画作品の展覧会では、徐々に「写真撮影OK」が広がっています。京都文化博物館の「オットー・ネーベル展」でも、写真のように一部の区画の展示作品が撮影できます。

ただし撮影した写真は私的に楽しむためのものです。鑑賞の妨げにならないために、マナーを守って撮影しましょう。

  • 撮影OKマーク表示を確認してから撮影する
  • 自動でフラッシュが作動しないよう事前に設定する
  • カメラのシャッター音を出さないようにする
  • 撮影後に写真を見て歓声を上げない
  • 撮影した写真は個人のSNSにUpするのはOK、仕事の製作物に使うのはNG


こんなところがあるのです。
ここにしかない「美」があるのです。


京都文化博物館
色彩の画家 オットー・ネーベル展 シャガール、カンディンスキー、クレーとともに
http://www.bunpaku.or.jp/exhi_special_post/otto_nebel_2018/
主催:京都府、京都文化博物館、産経新聞社、関西テレビ放送
会期:2018年4月28日(土)〜6月24日(日)
原則休館日:月曜日
※5/27までの前期展示、5/29以降の後期展示で一部展示作品が入れ替えされます。
※この展覧会は、東京・Bunkamura ザ・ミュージアムで2017年12月まで開催、から巡回してきたものです。
※この展覧会は、今後の他会場への巡回はありません。


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