「You Are the Apple of My Eye」
おい急げよ!花嫁待ってるぞ!
”笑われる夢にこそ価値がある”
10年前、浩介は高校生だった。
天然パーマ証明書を全国に先駆けて広めたのはこの高校だった、らしい。
早瀬真愛。学校一の優等生。周囲一メートルを見えない壁で囲っているよう。
なのに気が付くとみんな、真愛を見ている。
けど、俺は苦手だ。
早瀬真愛は浩介の後ろの席だった。
早瀬真愛は浩介含む男子高校生の会話に「興味ない」「幼稚」と返す。
詩子は浩介のことをこう言う。あいつの中には芸術家と犯罪者がいて自分でも困っていると思う。
「Every time we say good bye, I die a little.」
「またか、」
「あなたにさよならを言うたび、私は少しだけ死ぬ」
「お前3歳の頃から1000回は言ってるけど、少しも死なないで育つ一方じゃん・・・じゃあまた明日な」
そう過ぎ去っていく浩介を見て、詩子は切なそうに笑った。
ある日教科書を忘れた早瀬真愛に浩介が教科書を貸した。
「・・・ Apple of My Eye・・・」先生の声が響く。
(目の林檎?)
浩介は思わず辞書を引いた。
「・・・ほかの何よりも好きな、人。」
それから早瀬真愛はボールペンで浩介の背中をつついた。
「わざわざそれでつつかなくてもいいじゃんかよ」
「数学のテスト作ってきたから明日までにやってきて」
「・・・遠回りは歓迎だよ」
「私は敵を倒したものより、自分に勝ったものを勇者とみる」
「尽くすねー!それ恋?それとも母性?」詩子が言った。
「んーシンパシーってやつかな!」真愛が返した。
そして卒業した。
前は幼稚なのが嫌いだったけど・・・今は・・・
町から真愛がいなくなってしまうため浩介はTシャツを渡した。
「・・・辞書調べて!You Are the Apple of My Eye!」
「林檎の意味、調べたよ」
浩介、本当に私のことが好き?
だって私のこと知らないでしょ?私ってものすごく平凡だよ。
あなたが好きになったのは想像の中の私かも
「あれだけ一緒にいたじゃないか。想像の中の人物じゃない」
「ねぇ教えて。どこが好きなの?」
「ただ好きだ」
「なにそれ、相変わらず幼稚!」
もしかして俺は振られたのか?
「なんて書いた?」
「人に見せたら叶わなくなるんだよ」
本当の願いが自分でもわからない。なのに茉菜がすらすらと書くので不安になった。真愛の心もわからない。答えが怖くて、大切な想いをずっとごまかしている俺。つくづく情けなかった。
「真愛、俺のことどう思ってる?」
「聞きたい?」
「あっ!いや!言わなくていい!今はやめてくれ。これからも好きでいさせてくれ。」
真愛が飛ばしたランタンにはどう書いてあっただろう?
近づいては離れ、すれちがっては合わさりあう青春がとても切なかったです。そして山田裕貴さんの得も言われぬ表情がたまりませんでした。