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西洋神話

オリンポス12神「デメテル」

2023-11-03 12:29:00 | 西洋の神話

【農耕神デメテル】

 デメテルは、クロノスとレアの娘として生まれました。名前の由来は、デが「大地」で、メテルが「母」です。続けると「母なる大地」という意味になります。デメテルは、大地母神です。大地母神とは、大地の生産力を母性に例えた女神のことです。デメテルは、大地に種を蒔き、植物を実らせる農業の女神だとされています。特に穀物の守護者として、豊穣を願う農耕民族に崇拝されていました。通常、デメテルは、緑の衣装をまとった中年の高貴な婦人とされています。穀物の女神なので、麦の穂の冠を被り、手には鋤や麦の穂を持っていました。デメテルは、人間と神々に食物という恵みを与えてくれたので、ゼウスのお気に入りだったとされています。そのゼウスとの娘が、ペルセポネです。ペルセポネは、魔法の絵の具で、花に彩色を施したとされています。母娘は、二柱神として、よくセットで祭られました。

 デメテルの聖獣は、雌豚です。雌豚は、穀物の霊の化身だとされています。その他の動物も保護し、不要な殺生を戒めました。「馬」「猪」「蟻」「コウノトリ」「イルカ」「イタチ」などもデメテルの聖獣です。デメテルは、聖木を「ポプラ」、聖果を「ザクロ」としています。また、白がシンボルカラーで、銅がデメテルを象徴する鉱物でした。処女宮の女性は、デメテルがモデルだとされています。 

 【ペルセポネの略奪】 

 冥府の王ハデスは、ペルセポネを気に入り、自分の妃にするために拉致しました。デメテルは、その娘を見つけるために松明を手に世界中を探し回ったとされています。農耕神であるデメテルは、大地の植物を育成させることが仕事です。怒ったデメテルは、その仕事を放棄してしまいます。そのため、作物も実らず、人間は飢饉におちいりました。ハデスが誘拐した犯人だと知らせてくれたのは、太陽神ヘリオスです。その事実を知った、デメテルは、最高神ゼウスに訴えることにしました。 

 【冥府の掟】 

 ゼウスは、ハデスが自分の兄であり、裕福だったので、むしろ結婚を薦めました。しかし、デメテルは、断固それを拒否します。困ったゼウスは、ハデスにペルセポネを返すように説得しました。冥府の掟では、冥府の食べ物を口にした者は、そこの住人になるとされています。ペルセポネは、冥府に囚われている間、ハデスと口を聞かず、一切食事を取ろうとしませんでした。しかし、飢え渇きに耐えかね、ザクロを食べてしまいます。そのため、ペルセポネは、冥府から完全には戻ることができなくなりました。

 【ゼウスの妥協案】

 ただし、ゼウスの調停で、妥協案として、一年の三分の一を冥府で、三分の二を母のもとで暮らすことになりました。両者は、一応それに合意します。しかし、娘が冥府にいる間は、悲しみのためデメテルが仕事をしなかったので、植物が育ちませんでした。その期間を、冬と言います。ギリシャ神話では、それが四季が生まれた原因とされました。この神話は、冬「仮の死」から、春になって植物が「再生」される過程を表現したものだとされています。

 【トリプトレモス】 

 デメテルが娘を探して放浪していた時、エレウシウス王は、親切にもてなしてくれました。そのエレウシウスの王子が、トリプトレモスです。デメテルは、歓待のお礼に、エレウシウスの王子トリプトレモスの乳母として働きました。トリプトレモスには、穀物栽培の技術を教えます。そして農業使節として、各地に農業技術を教えるために派遣しました。その時、トリプトレモスに与えたのが、翼を持つ竜がひく二輪の戦車です。また、デメテルは、農耕のため定住する者に法を布くことを教えました。デメテル信仰の中心は、そのエレウシスとされています。そこでは「テスモポリア祭」という有名な秘儀が行われました。テスモポリア祭は、アテナイ郊外で行われる、男子禁制の女性だけのお祭りです。