私は夜ぐっすりと眠ることが大好きです。
そのためか、このブログではたびたび『眠り』をテーマとした記事を書いています。
月明かりと星空-美肌を照らす薄暗い光
朝の光は青い-メラノプシンの働き
朝の青い光を浴びて体内時計に朝を知らせて、夜は薄暗い月明かりの下でしっかりと眠る-こうすることで体内時計を規則正しく保って、健康な生活を送ることができることを文献を挙げて紹介してきました。
この中で、体内時計(概日リズム)を狂わせることで死亡率が上昇するねずみの実験も紹介しました。
シフトワーク(夜勤など)や不規則な生活などで長生きができないことを示唆するデータですが、そのメカニズムについて「ヒト」で調べた論文が発表されました。
Adverse metabolic and cardiovascular consequences of circadian misalignment.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2009 Mar 2.(出版前のウェブ上の発表)
男女5人ずつ、計10人の成人に、「28時間」サイクルの生活(睡眠・覚醒と食事)を10日間してもらい、血中のホルモンや生理機能などの変化を測定する実験です。
この結果、血中レプチンが減少、血糖値と血中インスリンが共に上昇、コルチゾールの分泌リズムの逆転、血圧の上昇、睡眠の質の低下などがみられました。
さらに、きちんと測定できた8人中の3人で、糖尿病の前段階でみられるようなパターンの食後血糖値の上昇反応が見られたということです。
ちなみに、レプチンの減少は肥満と高脂血症につながります。
また、血糖値とインスリンが共に上昇しているのは、糖尿病において重要な状態である『インスリン抵抗性』が示唆されます。
たったの10人・10日間で統計的にはっきりとした変化が捉えられるということは、よほどはっきりした現象なのでしょう。
たったの10日間28時間サイクルの生活をするだけで、肥満・高脂血症・糖尿病・高血圧という、心筋梗塞へと導く『死の四重奏』(death quartet)の音が聞こえ始めてしまう・・・すごい結果です。
体内時計の『夜』を司るメラトニンを冒頭であげた私のブログ記事でも紹介しましたが、今回紹介した論文で変化することが示されたレプチンやインスリンの分泌はこのメラトニンによる制御を受けます。
メラトニンはインスリンの分泌を抑制しレプチンの分泌を促進するので、不規則な生活でメラトニンの分泌が不十分になった可能性が考えられます(だからといってサプリメントとしてメラトニンを取れば良いというわけではないのですが)。
夜間の光が乳癌の発症リスクを高める因子になっているという研究(参考文献:Cancer causes control (2006) 17:515.)も以前に紹介しましたが、こう色々でてくると規則正しい生活の大切さをいっそう感じます。
医者は早死にが多いと言いますが、当直が多いのも関係あるのでしょうね-。
そういうわけで、みなさん、規則正しい生活を心がけるようにしましょう!