25no12 blog-美容医療の話題とネイチャーフォト

美容医療や医学一般の話題、野良猫や野鳥の写真など、とりとめもなく綴ります

ケミカルピーリングで皮膚癌予防!?

2011年09月09日 | 美容医療
肌を美しく再生するケミカルピーリング。
その原理は、傷んだ肌を薄皮一枚はがして、健康な肌の再生を促すというものです。

薄皮をはがすには、薬剤を用いて表面の細胞を痛めつけるわけです。ピーリング後は、しばらく肌が赤くなったりヒリヒリしたりしますが、これって肌に悪くないのかなと心配する方もいるかもしれません。

肌が赤くヒリヒリするのは皮膚の炎症です。そして、慢性の炎症が癌の発生に関与することはよく知られています。たとえば、膵炎は膵癌のリスク因子の一つですし、潰瘍性大腸炎では大腸炎の強さ、範囲、持続期間が大腸癌の発生とよく相関します。慢性肝炎と、肝炎によるダメージが蓄積した肝硬変からは、肝細胞癌が発生します。皮膚でも、炎症を繰り返している粉瘤の嚢胞壁に、まれではありますが皮膚癌が発生することがあります。

さて、ピーリングで繰り返し肌を痛めつけるのは大丈夫なのか。幸い、ピーリングで皮膚癌が増えるなどという報告はどこにも見当たりません。それどころか、逆に、ピーリングが皮膚癌の予防になるらしいという報告があるのです。

胃や腸でもそうなのですが、皮膚でも、深いところの細胞が分裂して表面に移動してきてそのうち脱落することで、表面の細胞は絶えず入れ替わっています。その過程で、ときどき何らかの、皮膚の場合は紫外線などの、ダメージを受けて前癌状態の細胞が生まれます。そうした細胞が胃腸の粘膜や皮膚にとどまり続ければ、それがやがて癌になるわけです。ピーリングでは、肌の表面を薄皮一枚はがすわけですから、ダメージを受けた細胞がはがれて皮膚癌ができにくくなるというわけです。

では、実際にピーリグで皮膚癌が減るのか。

Effect of chemical peeling on photocarcinogenesis.
J Dermatol (2010) 37:864.


日本のグループ(神戸大)からの論文です。はつかねずみ(マウス)を使って紫外線(UVB)を照射して発癌させるモデルで、ピーリングによる発癌抑制効果を調べています。グリコール酸、サリチル酸、トリクロロ酢酸の3種のピーリング剤のすべてで、皮膚癌の発生が抑制されました。さらに、癌のマーカーとも言えるp53と、発癌に関わる遺伝子であるCOX2の発現も減りました。こうした結果から、ピーリングが皮膚癌の予防になる可能性を論じています。

果たして人間でも同じ結果になるのか。疫学的データなどがでてきたら面白いですね。
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不規則な生活-死の四重奏へと導く不協和音

2009年03月09日 | 美容医療

私は夜ぐっすりと眠ることが大好きです。
そのためか、このブログではたびたび『眠り』をテーマとした記事を書いています。

月明かりと星空-美肌を照らす薄暗い光
朝の光は青い-メラノプシンの働き

朝の青い光を浴びて体内時計に朝を知らせて、夜は薄暗い月明かりの下でしっかりと眠る-こうすることで体内時計を規則正しく保って、健康な生活を送ることができることを文献を挙げて紹介してきました。

この中で、体内時計(概日リズム)を狂わせることで死亡率が上昇するねずみの実験も紹介しました。
シフトワーク(夜勤など)や不規則な生活などで長生きができないことを示唆するデータですが、そのメカニズムについて「ヒト」で調べた論文が発表されました。

Adverse metabolic and cardiovascular consequences of circadian misalignment.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2009 Mar 2.(出版前のウェブ上の発表)


男女5人ずつ、計10人の成人に、「28時間」サイクルの生活(睡眠・覚醒と食事)を10日間してもらい、血中のホルモンや生理機能などの変化を測定する実験です。
この結果、血中レプチンが減少、血糖値と血中インスリンが共に上昇、コルチゾールの分泌リズムの逆転、血圧の上昇、睡眠の質の低下などがみられました。
さらに、きちんと測定できた8人中の3人で、糖尿病の前段階でみられるようなパターンの食後血糖値の上昇反応が見られたということです。

ちなみに、レプチンの減少は肥満と高脂血症につながります。
また、血糖値とインスリンが共に上昇しているのは、糖尿病において重要な状態である『インスリン抵抗性』が示唆されます。

たったの10人・10日間で統計的にはっきりとした変化が捉えられるということは、よほどはっきりした現象なのでしょう。
たったの10日間28時間サイクルの生活をするだけで、肥満・高脂血症・糖尿病・高血圧という、心筋梗塞へと導く『死の四重奏』(death quartet)の音が聞こえ始めてしまう・・・すごい結果です。

体内時計の『夜』を司るメラトニンを冒頭であげた私のブログ記事でも紹介しましたが、今回紹介した論文で変化することが示されたレプチンやインスリンの分泌はこのメラトニンによる制御を受けます。
メラトニンはインスリンの分泌を抑制しレプチンの分泌を促進するので、不規則な生活でメラトニンの分泌が不十分になった可能性が考えられます(だからといってサプリメントとしてメラトニンを取れば良いというわけではないのですが)。

夜間の光が乳癌の発症リスクを高める因子になっているという研究(参考文献:Cancer causes control (2006) 17:515.)も以前に紹介しましたが、こう色々でてくると規則正しい生活の大切さをいっそう感じます。
医者は早死にが多いと言いますが、当直が多いのも関係あるのでしょうね-。

そういうわけで、みなさん、規則正しい生活を心がけるようにしましょう!



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睫毛(まつげ)が長く伸びる育毛剤

2009年03月08日 | 美容医療


「目は口ほどにものを語る」と言いますが、目は人の顔の中でもその人を印象付ける重要なパーツです。

それゆえ、できるだけ『魅力的な』目を手に入れるよう、アイシャドウ、マスカラなどのアイメイクや二重の埋没法手術に代表される目のまわりのプチ整形など、目の周りの美容は女性の関心の的だと思います。

中でも長くてくっきりとしたまつ毛は、女性を一際美しく見せる要素の一つだと思います。
それを手軽に「塗り薬」で手に入れる・・・・・・女性にとって、とても魅力的な薬が今年、アメリカで発売になりました。

発売されたのはラティッセという薬です。
もともと緑内障の治療薬『ルミガン』として点眼薬として用いられていたのですが、まつ毛が伸びてしまう副作用が見られたため、その副作用を『薬効』として新たにラティッセとして発売したわけです。

私が働いている美容医療科の顧問医がアメリカのビバリーヒルズで開業しているので、そのツテでラティッセのサンプル(実際にアメリカで処方されているもの)をいくつか手に入れました。
この薬を美容医療科(つまり国内)で処方することを考えていたのですが、残念ながらいろいろと制約があって実現しにくい状況です。

さて、ルミガン(一般名:ビマトプロスト)と同様に緑内障に用いられる点眼薬として、ラタノプロスト(商品名:キサラタン)という薬があって、これは国内でも緑内障治療薬として認可されて販売されています。
ラタノプロストも、ビマトプロストと同様にまつ毛が伸びてしまう副作用があり、眼科の医師に聞いているみると苦情も寄せられているそうです(男性の場合、あまりパッチリまつ毛になっても困るんですね)。
こちらであれば、国内でも医師の判断で「睫毛(まつげ)育毛剤」として「保険外処方」をすることはできそうです。

ただ、ラタノプロストでまつ毛が伸びること自体は副作用として論文などでも報告されていてはっきりしていますが、ビマトプロストと比較して効果がどうなのかとか、副作用(ラティッセは「安全」と強調されて販売されていますが、色素沈着や眼のトラブルなどの副作用はあります)が出やすいのか出にくいのかなど、不明な点も多く、今のままで処方するのは無責任だと思います。

そこで、院内で希望者を募って、ラタノプロストとビマトプロストのまつ毛育毛剤としての比較試験を始めました。
まつ毛が伸びる効果が出てくるまで1か月程度、結果が楽しみです♪



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DMAE - シワを改善する劇薬?

2009年03月02日 | 美容医療


先日、外勤先の美容クリニックで『イデバエ』なる施術を見てきました。
イデバエとは、イデベノン(idebenone)とジメチルアミノエタノール(DMAE)の合剤で、これを顔面に注射します。
これでシワやたるみや改善するというのです。

イデベノンは、コエンザイムQのアナログで、抗酸化剤として働きます。
抗酸化剤でたるみが取れるわけではないですが、肌の光老化を防ぐ役割が期待できます。

一方のDMAEは神経筋接合部の神経伝達物質アセチルコリンの前駆体なので、生体内でDMAEがアセチルコリンに変換されることで筋肉が収縮してたるみが引き締まるという理屈のように思いました。

実際、Googleなどでサーチすると、そのような説明が散見されます。
筋肉収縮といったって、持続的に筋肉を収縮させてるっていうのは違和感を感じましたが、アセチルコリンそのものではなくアセチルコリンの前駆体を注射するので、これがゆっくりと時間をかけてアセチルコリンになることで持続的な筋収縮効果が得られるのかなと考えました。
また、筋肉が収縮した状態が続いていればたるみの予防にはなるでしょうから、たるみの治療にDMAEというのも何となく理解できます。

こんな感じだろうと何となく思っていたのですが、もやもやとして気持ち悪いのできちんとPubMed(医学論文)サーチをして調べてみました。
すると・・・・・・「DMAEで筋肉が収縮してシワやたるみが改善する」という証拠は無いのです。
しかしながら、DMAEにシワを改善する効果があることは、きちんとした研究があって本当らしいことは分かりました。
しかも、DMAEによるシワ改善は、即効性で、なおかつ持続性もあると。

では、DMAEでなぜシワが改善するのか。
調べてみると、DMAEは線維芽細胞の増殖を抑えアポトーシスを誘導する作用があるとのこと。
線維芽細胞はコラーゲンを産生する細胞ですから、DMAEによって逆に肌のハリがなくなってたるみが助長されることになりそうです。
さらに、線維芽細胞だけでなく、ケラチノサイトとか他の皮膚の細胞に対しても細胞障害性があるとのこと。
疑問を持ちつつ調べ続けてみると、どうやら、皮膚の細胞が障害されて細胞質に空胞(vacuole)が形成されて細胞が膨張することでシワが改善するのだろうという推測がされていました。

ほんとかいな??

細胞が大きくなるからシワが改善する・・・・・・ちょうどヒアルロン酸注射などで組織を大きくしてシワを改善するのと似たメカニズムで、まあ、理解できなくもないです。

DMAEの長期効果に関する考察は今のところ見つかっていないですが、上記の細胞障害性を考えると、ピーリングとかアブレーションとかと同様のメカニズムで肌のハリがでてくると考えるのが良さそうに思います。

筋肉の収縮とは全然違いますが、考えてみれば、仮に筋肉の収縮によりハリが出るのだとしたら、筋肉を麻痺させてシワを改善させるボトックスのちょうど反対なわけで、かえってシワができそうに思えますから、筋肉収縮説ではなく、上記の細胞障害説の方がしっくりくるように思います。
実験結果もそれを裏付けているわけですし。

そうなると、DMAEは肌に塗布するだけでも効果があるので、わざわざ注射をする意味があるのかな?と、ちょっとだけ疑問が残ります。
まあ、『イデバエ』自体は論文にもなっていないような(idebenone + DMAEでヒットしない)ので、ちょっとだけ怪しさが漂っている感じがします。
そもそも合剤にすることにどれだけの意味があるのかも不明です。

ともあれ、DMAEにシワ改善効果があるのは本当のようですし、長期連用しても副作用はとくに見られていないようなので、『イデバエ』の施術を受ける価値はあると言えそうです。



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月明かりと星空-美肌を照らす薄暗い光

2009年02月28日 | 美容医療


規則正しい生活と良質な睡眠が、美容と健康のかなめであることは異論がないでしょう。

先日、明暗のサイクルを感知して体内時計をコントロールする物質メラノプシンを紹介しました。
朝の光は青い-メラノプシンの働き

朝の青い光を浴びて体内時計に朝を知らせて、夜は電気を消してしっかりと眠る-こうすることで体内時計を規則正しく保って、健康な生活を送ることができるわけです。

ところが、飛行機などに乗って海外旅行に行くと、この明暗のサイクルが崩れます。
いわゆる『時差ボケ』(jetlag)ですね。
時差ボケは不愉快ですし、ねずみの実験で死亡率の上昇も見られており、できれば避けたいものです。

時差ボケの治療にはメラトニンがよく用いられます。
メラトニンは体内時計の『夜』の時間帯に体内での分泌が増加するホルモンの一つで、催眠作用があります。
生体内で睡眠を誘発する物質(somnogen)なので、最も『自然』で『良質』な睡眠が得られる、すぐれた睡眠薬と言えます。
(私の恩師も「時差ボケにはメラトニンは良いんだ」と言い、海外出張などの際には愛用していたようです)
(ただし、メラトニンは国内では承認されておらず、国内では手に入りにくい物質です)

また、もともと明暗サイクルと体内時計のズレが時差ボケの原因ですから、明暗サイクルを上手くコントロールする(どういうプログラムが良いのか不明ですが)ことも、メラトニンと並んで時差ボケの解消に役立つようです。

さて、ここからが本題ですが・・・・・・明暗のサイクルというと、夜は『真っ暗』が良いのかと思ってましたが、実はそうではないかもしれないようです。

Dim nighttime illumination accelerates adjustment to timezone travel in an animal model.
この論文によると、「真っ暗」ではなく「月明かり程度の薄暗い明かり」の方が、時差ボケからの回復が早いという実験結果を得ています。
時差ボケからの回復を指標とした動物実験ですが、われわれの普段の生活にも当てはまるかもしれません。

Circadian entrainment and phase resetting differ markedly under dimly illuminated versus completely dark nights.
Circadian effects of light no brighter than moonlight.
さらに、「薄暗い明かり」と「完全な真っ暗」を比較する研究は他にもあって、体内時計にとっては両者がはっきりと違うものであることは確かなようです。

そういうわけで、夜は「雨戸を閉めて真っ暗」ではなくて「カーテンだけで月明かりが入ってくる程度」の方が体内リズムを調子良く保つのに良さそうです
考えてみれば、大昔の人間は月や星空の元で眠っていたわけですからね・・・・・・われわれの体もそのようにできているのが『自然』かもしれません。

こうして体内リズムをしっかりとつくることで、体内で自然とメラトニンが分泌されます。
メラトニンは、上記のように良質な睡眠に働く他、アンチエイジングの鍵である『抗酸化作用』もあり、また美白作用(そもそも美白剤の研究から発見された)も注目されます。

結論:
朝は黎明の光、昼は自然な太陽の光(ただし紫外線は避けて!)、夜間は星や月の薄暗い光を浴びて、体の内側から美肌を手に入れましょう!



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レーシックで感染症多発!?

2009年02月26日 | 美容医療


最近流行のレーシック。
メガネもコンタクトレンズも要らなくなる、夢の手術ですよね。
最近は機械の進歩で医師の技術のハードルがとても低くなっているようで、大手の美容外科でもレーシック専門クリニックを開設しているところも増えてきてます。
(別に美容外科系レーシッククリニックの医師の技術がどうこうというわけではありません。きちんと眼科専門医を募集して雇っているようです)

さて、そのレーシックで術後合併症多発のニュースです。

『銀座眼科』で、レーシック手術後の感染症が多発していたそうです。
昨年9月から今年1月まででレーシック手術を受けた639人のうち、67人で感染性角膜炎などの感染症を発症したとのこと。
同クリニックは保健所から診療禁止にされたそうです。

術後感染症なんて、もともと感染症で手術(感染巣を切断・摘出など)するとか、免疫不全などのハイリスク患者でも無い限り、めったに起きないもので、10%以上の症例で術後感染症が発症するのはいかにも多いです。

参考までに、私が勤める診療科では、昨年の手術症例が(日帰りの小さいのを含めて)900件程度ですが、ハイリスク患者を除けば術後感染症なんて一例も経験していません。
(他の医師が経験しているかもしれないけれど、もしあれば話題になっているだろうし、いずれにせよ相当少ないはずです)

『銀座眼科』の感染症発症例では、2例が入院、うち1例は失明のリスクもあるほどの重症というから、結果も重大です。
なんでこんなことになったのか?

保健所の立ち入り検査によると、滅菌器具(オートクレーブ)の不具合があり、滅菌に必要な温度に達していなかったそうです。
オートクレーブには温度計が付いていると思いますけど、一度も見ることが無かったのかな・・・?

私が学生(大学院)のときは安全上の理由で、温度と気圧が上昇した段階で蒸気漏れなど無いか必ず確認せよと教わったので、温度計が121℃に達するのは毎回見ていましたが・・・(機械の前に張り付いていたわけではなく、ときどき確認に行く)。

他にも手袋不着用とか、消毒液を適当に薄めていたとか(ヒビテンか?)、ずさんだったようです。

だいたい、こんなにたくさん感染症例が出る前に、「最近術後感染が多いな」とか気付かないものなのでしょうか。
術後フォローしてなかったのかな・・・。

こういう医師には診てもらいたくないですね-。

ちなみに私自身はメガネが気に入っているので、レーシック手術を受ける予定はありません。



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アダパレン(ディフェリン)-ニキビ治療と肌の若返り-トレチノインとの比較

2009年02月18日 | 美容医療


このところたびたびアダパレン(ディフェリン)の話題をこのブログで取り上げています。

アダパレン(ディフェリン)-にきび治療薬
アダパレン(ディフェリン)試用
アダパレン(ディフェリン)試用 - 続き (にきび治りました)

要約すると、欧米でニキビの第一選択薬として広く用いられているアダパレン(ディフェリン)が昨年から日本でも健康保険でも使えるようになったけれど、私が勤める病院でまだ採用されていないので、国内販売元の塩野義製薬の営業のお兄さんに病院にきてもらって、院内採用に向けて調整をしているところ。
その際にサンプルを持ってきてくれて、ちょうど私自身にニキビができていたので、自分自身で試用して効果(3日でほぼ治りました!)と副作用(幸いまだ出てません!)をレポートしました。

みなさん、ディフェリンの口コミ情報に関心があるのか、このブログへのアクセスがいくらか増えているようです。
ついでに写真を見ていって気に入っていただけるとうれしいのですけど・・・・・・見てくれてるかな・・・・・・。



さて、アダパレンと同じレチノイドのトレチノイン(こちらは国内未発売、レチノイドとして欧米では先発)は、患者さんへ自費でよく処方していて、ニキビや肌の若返りによく効くことは体感しています。
私自身は、アダパレンとトレチノインと比較してどうなのか?に興味があります。

そこで、再び塩野義の営業のお兄さんに資料を持ってきてもらいました。

まず、レチノイドの受容体RARは、α、β、γの3種類あるのですが、アダパレンはβとγ特異的、トレチノインは3種類全部と結合します。
受容体とのアフィニティ(結合親和性)はいずれのタイプの受容体に対してもトレチノインがアダパレンの数倍強力です。

実際の効果や副作用の比較は、同じ濃度での研究は稀で(PubMedサーチしたらありましたが)、アダパレン0.1%とトレチノイン0.025%がだいたい同等ということらしく、よく比較されています。
(ちょうど発売されている製剤のいちばん薄い濃度どうしの比較になってます)

結論を大雑把に言うと、副作用はアダパレン0.1%がトレチノイン0.025%の半分くらい(つまりアダパレンの方が副作用が少ない)。
効果は、使用開始1週間でアダパレン0.1%がトレチノイン0.025%より優れていて(1.5倍くらい)、長期間(12週間)継続使用後ではあまり変わらない(どちらでもニキビが著明に改善)、という内容でした。

すなわち、アダパレンの方がトレチノインよりも副作用が少なく、速やかに効果がでるということで、ニキビの治療目的では、アダパレンに軍配が上がりました。

美容目的ではどうか?
残念ながら、アダパレンは米国でもニキビ治療薬としてしか認可されておらず、アダパレンを美容目的で使用した研究報告は極めて限られています。
ある研究では、アダパレンとトレチノインの処方パターンを解析して、高齢者の肌の若返り目的では、アダパレンはほとんど用いられておらず、トレチノインが用いられていると結論づけています。
トレチノインは、シワの治療でFDAから認可されているので、FDAの認可通りに使われているということですね。

それでも注意深くPubMedサーチすると、アダパレンをシミ治療に用いたとか、アダパレンによるコラーゲン産生(肌のハリやシワの改善につながる)を調べた論文は見つかりました。
アダパレンによる肌の若返り効果はあるようです
トレチノインと比べて効果が高いか低いかまでは分からないのですが、副作用が少ない分、患者さんによってはアダパレンを使うのが良い場合もでてきそうです。

美容目的での使用は、少しずつ使ってみて患者さんの反応をみていくことになりそうですね-。

ちなみに、妻にも数回塗布しましたが、肌がボロボロ落ちてきて赤みがでてきて、休薬中です(本当はこれを乗り越えて使っていくのですけど)。



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トレチノイン - 副作用情報

2009年02月15日 | 美容医療


トレチノインは肌の若返りやニキビ(尋常性ざ瘡)の治療薬として広く用いられています。
私自身、美容医療科でトレチノイン0.05%のクリームをシミ(ハイドロキノンと併用で)やニキビ・ニキビ痕の治療や肌の若返り目的でよく処方しています。

トレチノインは胎児に対して催奇形性があるので、妊娠・授乳中の使用は局所塗布のみでも禁忌とされていますが、妊娠・授乳中を除けば全身への副作用は殆ど心配ないと考えられています。

全身への作用の面では、一部の白血病の治療に用いられるし、いくつかの癌に対する抗癌作用が実験で示されていて、むしろ「良い副作用」の方が期待できそうなくらいに思えます。
抗癌作用の点で、皮膚癌の予防にもなると期待されているくらいです。

ところが、トレチノイン0.1%クリームの局所療法で、高齢男性で死亡リスクが1.5倍くらいに上昇することが報告されました。
Topical tretinoin therapy and all-cause mortality.
Arch. Deramatol. 2009 Jan. 145:18-24.


具体的には、平均年齢71歳(95%が男性)の米国人を対象に、トレチノイン0.1%クリームを1日1~2回顔と耳に塗布、これを2~6年間継続するという内容の治験です。

皮膚癌の発生リスクがトレチノインで抑えられるかどうかを見るのが目的だったのですが、全く予想外に、トレチノイン塗布群で死亡率の増加(コントロール群で566人中76人が死亡、トレチノイン塗布群で565人中108人が死亡)が見られたために予定の半年前に治験が打ち切られました(死亡者が多いように感じるかもしれませんが、もともと『高齢』であることに留意して下さい)。

トレチノインの使用量(1日1回か2回か、通算で使用したチューブの本数など)と死亡率に相関関係は見られず、本当にトレチノインが『危険』なのか、今回の治験だけでは断定はできません(統計の『マジック』というのは結構あります)。
しかしながら、コトが生命に関することですし、注意を喚起すべきデータと言えるでしょう。

なお、トレチノインは何十年間も世界中で広く用いられていますが、これまで今回のように「死亡率が増加する」報告はありませんでした。
一つはっきり言えることは、世界中での高齢者へのトレチノインの処方は、殆どの場合は女性に対してされているのに対して、今回の治験では逆に大多数の治験参加者が男性だったこと。
少なくとも、トレチノイン0.1%クリームの高齢男性の長期使用は死亡リスクが増加する可能性があることを、医師と患者の双方がよく認識し(しっかりとインフォームド・コンセントして)、その上で患者がトレチノインを使いたいかどうか自身で判断すべきだといえるでしょう。



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アダパレン(ディフェリン)試用 - 続き (にきび治りました)

2009年02月10日 | 美容医療

先日、アダパレン(ディフェリンゲル0.1%)を、試用した記事を書きました。


今日で4日目になりますが、昨日くらいから、ニキビはほぼ治りました。
まだ色素沈着というか赤みは残ってますが、これが消えるのには時間がかかるのでしょうね。


妻にも塗ってますが、今朝になって鼻のあたりの皮が剥け始めたようです。
ちゃんと効果はあるようですね(当たり前ですが・・・)。
フォトフェイシャルと併用したいところですが、なかなか時間が合わずにできません・・・。



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アダパレン(ディフェリン)試用

2009年02月07日 | 美容医療


昨日、アダパレン(ディフェリン)の国内販売元、塩野義製薬の営業のお兄さんに病院に来てもらいました。
院内採用に向けて、製品情報を仕入れていろいろと調整をするためです。

製品サンプルも持ってきてくれて、ちょうど頬ににきび(30歳過ぎるとニキビとは呼ばないようですが・・・)があったので、試しに塗ってみました。
塗り心地は意外と良好・・・薄く伸ばしやすいし、べたつきなど不快感もなし。

家に帰って、妻の顔にも塗ってみました。
妻は、トレチノイン(0.05%)だと塗布した瞬間にヒリヒリする刺激症状が出るというのですが、ディフェリンではそういった症状は一切感じなかったようです。

室温保存で有効期限が2年以上あるのもいいですね。

さて、塗布しておよそ24時間経ったのですが、ニキビは明らかに改善しています!一回しか塗ってないのに、早っ!!
まだ完全に治癒はしていないですが、この調子ならもう数日で治りそうです。



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