本が読みたい!

子育ての合間に少しずつ読んでいる本の感想や、
3人の子ども達に読み聞かせる絵本の紹介など、本にまつわるお話です。

「日本人論」の中の日本人 上

2007-03-03 | 
副題 ザビエルから幕末まで

この本は 大きく時代を3つに分けて考えています。 鎖国前、鎖国中、鎖国後。当時、日本を訪れていた外国人たちが書いた記録の「日本人」の部分を抜き出し 上記時代別に並べて どのように日本人観が変化していったかわかりやすくならべてあります。

そう、並べてあるんです。だから、この作者 築島健三という方が、これらの文章を使って何かの考えを導き出すとか、何か主張しているとか まとめているとか、そういうことはないんです。

当時の外国人たちが どのように書き、どのように見たのかをわかりやすく解説してくれています。 余計な考えが吹きこまれないので 私は読みやすかったです。

この上巻には たくさんの外国人が登場します。よく知られている人も 全然知らなかった人もいました。

始めは 宣教師フランシスコ・ザビエルです。この方は 有名ですねー。
「この国の人は礼節を重んじ、一般に善良にして悪心を抱かず、何より名誉を大切とするは驚くべきことなり・・・・・続く・・」と言っています。

昔、室町時代の人の事とはいえ 同じ日本人をこのように誉めてくれるとやっぱり嬉しいです。

1563年肥前に上陸したルイス・フロイスが興味あることを書いていました。日本人の子どものことです。
「我々の間では普通鞭で打って息子を懲罰する。日本ではそういうことは滅多に行なわれない。ただ(言葉?)によって譴責(けんせき)するだけである。」

他にも「我々の間では 4歳の子どもでも自分の手を使って食べる事を知らない。日本の子どもは 3歳で箸を使って自分で食べる」とか、「我々の子どもは その立居振舞に落着きがなく優雅を重んじない。日本の子どもは その点非常に完全で賞賛に値する」などなど。

なぜか? 武士は何よりも名誉を重んじる。名誉を失う事は恥とされ侮蔑されたら名誉回復の為死をかけて行動する。仇討ちなど。
徹底して名誉を重んじ、恥を避ける教育を受けている当時の子どもたちは鞭で打たれないでも 自らを制し修めていく雰囲気があった・・・と、築島さんさんはよんでます。

子どもの事は 1619年オランダ東印度会社の料理助手として来日したカロンも書いています。
「彼らは子どもを注意深くまた柔和に養育する。たとえ終夜喧しく泣いたり叫んだりしても打擲することはほとんど、あるいは決して無い。~中略~7・8・9・10・11及び12歳の子どもが 賢しく(さかしく)かつ温和であるのは驚くべきほどで、彼らの知識・言語・応対は(老人の如く)、和蘭(オランダ)ではほとんど見られない。~中略~常に名誉欲を植えつけ名誉に関しては他に勝るべしと激励し短時間に多くを学び、これによって本人及び一族の名誉を高めた他の子どもの実例を上げる。この方法により、彼らは鞭撻の苦痛がもたらすよりも、更に多くを学ぶのである。日本人は 強情な国民で鞭撻を持って迫るべきものではない。」などなど。



日本人の私には今でも容易に理解できる事でも 外国の人には奇異に思える事がたくさんあるようで 読んでいておもしろいです。

1799年 鎖国している時にオランダ出島商館の書記として来日したゾーフが述べているには 当時の日本人の間にオランダ風の名前をつけてもらって喜ぶ風潮があったのだそう。通訳の青年馬場佐十郎はアブラハム、その友人高橋三平にはヨハネス・グロビウス、中津候のある藩士にはピーテル・ファン・デル・ストルプ、その藩士の主君である藩侯自らも願い出たので フレデリック・ヘンドリックの名を差し上げた とある。

後のシーボルトにもそういう記載があるのだそう。築島さんは
「当時のこの風潮の底に働く心理は、全く同じではないが、今日の外来語反乱の現象を支える心理と一脈通じる物があるように思われる。ひとつの歴史的連続の民族心理といえようか」
と言っています。私もそう思う(笑)日本人だから?当時の風潮理解できます。

引用文が多くそのほとんど全てに解説をつけてくれているので読みやすい本でした。


「日本人論」の中の日本人 上 ~ザビエルから幕末まで~
築島健三
講談社学術文庫


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