本が読みたい!

子育ての合間に少しずつ読んでいる本の感想や、
3人の子ども達に読み聞かせる絵本の紹介など、本にまつわるお話です。

関ヶ原

2006-08-25 | 司馬遼太郎
文庫本も出ているらしいけど 私が読んだのはA5版で厚さが5cmくらいある本です。重かった~。

主人公は石田三成です。
まだ三成が少年の頃の、秀吉との出会い「三杯の茶」のエピソードや、「葦の運上金」のお話など、他の武士と比べて 頭の良さを示すお話から始まります。

関ヶ原の西軍の敗戦原因は 三成が真面目で頭が良過ぎたことであったらしい。



秀吉存命時代、三成は、有能で真面目な事務方でした。「朝鮮在陣の緒将の作戦を監督せよ」という命を受けて 朝鮮へ行きますが、そこできちんと働きすぎました。 融通が利かず、いろいろな事情を考慮せず、ただ事実のみを秀吉へ報告し、大名達、黒田如水や加藤清正らの無用な恨みを買います。

不正や怠慢が許せず、糾弾すること病的なぐらい、物言いも人に対して気を使わずに、正当なことしか言わない。周りから横柄者と嫌われようと、職務を全うする三成。秀吉の信任は厚かったけど 人気はなかったのです。

秀吉が亡くなった後、大名達へのご機嫌取りなど、味方作りに動き出した家康の魂胆を見抜いた三成は 家康阻止すべく、そして秀頼を守るべき立ちあがるのだけど・・・
「義」の為に動く光成と「利」で誘う家康。

人望のない三成は、言っていることは立派で間違っているわけでもないのに 味方が現れません。現れても、裏では家康と内通しているものばっかり。

関ヶ原は 人数も作戦も 西軍の勝利を予想できるものだったけど・・・蓋を開けてみれば・・・裏切りにつぐ裏切り。 裏切らないまでも 西軍とは名ばかりで、戦わず動かない。三成は はがゆかったでしょうね。 みんなが作戦通り動いていれば、勝利できるのに 動かない。戦わない。

西軍は、石田隊、大谷隊、宇喜多隊が死力を尽くして戦っているのに 残りの3分の2、毛利、吉川、安国寺、長束、長宗我部、小早川、島津などが動かなかった。島津以外は裏切りでした。島津は 裏切りする気じゃなかったのだけど、それまでの三成とのやり取りで 三成に味方する気が失せてしまったのでした。 本当に人に嫌われやすい三成。

そして天下分け目の関ヶ原の決戦は 朝始まって夕方には終わってしまいました。家康の人心掌握作戦の勝利でしょう。

前半は 三成の人となりをじっくり説明しながら、対比するように家康が皆の心をつかんでいく巧みな戦術が書かれ、後半は それぞれの大名達の動きをわかりやすく書いています。そして最後の集大成として関ヶ原の長い1日が書かれます。

三成がもう少し 人の気持ちを汲む人だったら 関ヶ原の戦いは違ったものになっていたのでしょう。

途中少し中だるみしてしまいましたが、なぜ三成が負けたのか、なぜ家康が勝ったのか がよくわかりました。 「勝負は時の運」と言いますが、関ヶ原に関しては「運」じゃないです。家康が勝つべくして勝ったのだと思いました。

「関ヶ原」
司馬遼太郎
新潮社