迷惑な新化
2007-09-29 | 他
おもしろかった~。この本を知って良かった,なんて事まで思うおもしろさです。 もちろん、おなかを抱えて大笑いするようなものではないですよ。
全く知らない未知の世界を見せてもらう そういうおもしろさです。
著者シャロン・モアレムは 進化医学研究者だそう。そもそも進化とは 悪い遺伝子を無くし、良い遺伝子だけを残すはずなのに、何故 病気の遺伝子がこれほど多くの人に受け継がれているのか? とても難しい内容でDNAやヒトゲノムなど 普段の私には 全く縁の無い(予備知識無い)話なのに とてもわかりやすく,読みやすく,おもしろく書かれています。
40年後に必ず死ぬと決まっている薬をあなたが飲むとしたら その理由はなんですか?それは・・・・
ヘモクロマトーシスとは、体内の鉄代謝を乱す遺伝性の病気です。人間の体は通常、血液中に十分な鉄があると、食べ物から吸収する鉄量を減らす様にできている。サプリメントなどで採り過ぎても、必要無いと排出されるので、余分な鉄はたまらない。
しかし、ヘモクロマトーシスの人の体は 常に鉄が足りないと思いこみ,鉄を吸収しつづける。結果、鉄分多すぎて 関節や主要な臓器を傷つけ、肝不全,心不全,糖尿病、関節炎、他最悪の場合は死に至る。
非常に稀な病気だと思われていたけど、この症状を引き起こす主要遺伝子が じつは、西ヨーロッパ系の人々に受け継がれていて、祖先が西ヨーロッパ人なら、3人もしくは4人に1人の割合で この遺伝子を少なくても一つ保有しているという。ただ,浸透度が低い為発現していない。(※その遺伝子を持っていれば必ず発現するものは”浸透度”が高い。遺伝子を持っていても 発現する人が少なければ”浸透度”が低い、と、遺伝学では言うらしい)
なぜこんな致死的な病気が人の遺伝子情報に組み込まれてしまったのか?ヘモクロマトーシスは 感染症でも生活習慣病でもウィルス性の病気でもない。子孫に遺伝するものだ。
そして、それは特定の人口集団に広まっている。
原因は遺伝子変異。 この変異遺伝子を最初に保有をしていたのはスカンジナビアの海賊バイキングだとわかっているのだそう。(すごい!)苛酷な環境で栄養不充分な民族が 体内の鉄不足を補おうと進化したのかもしれない。ヘモクロマトーシスの女性は 月経や妊娠による貧血にもなりにくかったから 健康な子どもをたくさん産み、その遺伝子を多く子孫に伝えたのかも。
その遺伝子を持ったバイキングの一部がヨーロッパの海岸部に定住。変異遺伝子は保たれつつ、十四世紀の史上最悪のペスト流行を迎える。ヨーロッパの人口の1/3から1/4にあたる2500万人以上の命を奪った腺ペスト。 でも、ヘモクロマトーシスの変異を受け継いだ人は ペストに強かった。(理由は本書で)
進化とは「自身の生存と種の保存に役立つ遺伝形質を好む」もので、大流行のペストを生き抜いたヘモクロマトーシス保有者の子孫を増やしていき、その後 数十年おきに何度か繰り返されたペストの流行も そのたびに被害が縮小していったのは この遺伝子を持つ人口の割合が増えていったからだとも考えられる。
最初の質問 「40年後に必ず死ぬと決まっている薬をあなたが飲むとしたら その理由はなんですか?」
その答えは「あなたが明日死ぬのを止めてくれる薬だから」です。
それとヘモクロマトーシスも同じだったのです。こんな恐ろしい遺伝子も、祖先が生き延びる為に必要とした遺伝子だったのですねー。
メディカルミステリーツアー なんて表紙の裏には書かれていましたが、こんな感じで 人類の歴史からみた遺伝子変異の話しなど いくつも出ていて本当におもしろいです。
他にも「糖尿病は 氷河期の生き残り?」とか「酒が飲めない遺伝子」「人類の歴史と高血圧」「老化のプログラミング」「出産はなぜ苦しい」などなど。
話は 難しいはずなのに とても読みやすい。共著のジョナサン・プリンスが クリントンが大統領だった時のスピーチライターだったと知って納得。読者の心を掴んでます。
お薦めです。
迷惑な進化~病気の遺伝子はどこから来たのか~
シャロン・モアレム
ジョナサン・プリンス
矢野真知子(訳)
NHK出版
全く知らない未知の世界を見せてもらう そういうおもしろさです。
著者シャロン・モアレムは 進化医学研究者だそう。そもそも進化とは 悪い遺伝子を無くし、良い遺伝子だけを残すはずなのに、何故 病気の遺伝子がこれほど多くの人に受け継がれているのか? とても難しい内容でDNAやヒトゲノムなど 普段の私には 全く縁の無い(予備知識無い)話なのに とてもわかりやすく,読みやすく,おもしろく書かれています。
40年後に必ず死ぬと決まっている薬をあなたが飲むとしたら その理由はなんですか?それは・・・・
ヘモクロマトーシスとは、体内の鉄代謝を乱す遺伝性の病気です。人間の体は通常、血液中に十分な鉄があると、食べ物から吸収する鉄量を減らす様にできている。サプリメントなどで採り過ぎても、必要無いと排出されるので、余分な鉄はたまらない。
しかし、ヘモクロマトーシスの人の体は 常に鉄が足りないと思いこみ,鉄を吸収しつづける。結果、鉄分多すぎて 関節や主要な臓器を傷つけ、肝不全,心不全,糖尿病、関節炎、他最悪の場合は死に至る。
非常に稀な病気だと思われていたけど、この症状を引き起こす主要遺伝子が じつは、西ヨーロッパ系の人々に受け継がれていて、祖先が西ヨーロッパ人なら、3人もしくは4人に1人の割合で この遺伝子を少なくても一つ保有しているという。ただ,浸透度が低い為発現していない。(※その遺伝子を持っていれば必ず発現するものは”浸透度”が高い。遺伝子を持っていても 発現する人が少なければ”浸透度”が低い、と、遺伝学では言うらしい)
なぜこんな致死的な病気が人の遺伝子情報に組み込まれてしまったのか?ヘモクロマトーシスは 感染症でも生活習慣病でもウィルス性の病気でもない。子孫に遺伝するものだ。
そして、それは特定の人口集団に広まっている。
原因は遺伝子変異。 この変異遺伝子を最初に保有をしていたのはスカンジナビアの海賊バイキングだとわかっているのだそう。(すごい!)苛酷な環境で栄養不充分な民族が 体内の鉄不足を補おうと進化したのかもしれない。ヘモクロマトーシスの女性は 月経や妊娠による貧血にもなりにくかったから 健康な子どもをたくさん産み、その遺伝子を多く子孫に伝えたのかも。
その遺伝子を持ったバイキングの一部がヨーロッパの海岸部に定住。変異遺伝子は保たれつつ、十四世紀の史上最悪のペスト流行を迎える。ヨーロッパの人口の1/3から1/4にあたる2500万人以上の命を奪った腺ペスト。 でも、ヘモクロマトーシスの変異を受け継いだ人は ペストに強かった。(理由は本書で)
進化とは「自身の生存と種の保存に役立つ遺伝形質を好む」もので、大流行のペストを生き抜いたヘモクロマトーシス保有者の子孫を増やしていき、その後 数十年おきに何度か繰り返されたペストの流行も そのたびに被害が縮小していったのは この遺伝子を持つ人口の割合が増えていったからだとも考えられる。
最初の質問 「40年後に必ず死ぬと決まっている薬をあなたが飲むとしたら その理由はなんですか?」
その答えは「あなたが明日死ぬのを止めてくれる薬だから」です。
それとヘモクロマトーシスも同じだったのです。こんな恐ろしい遺伝子も、祖先が生き延びる為に必要とした遺伝子だったのですねー。
メディカルミステリーツアー なんて表紙の裏には書かれていましたが、こんな感じで 人類の歴史からみた遺伝子変異の話しなど いくつも出ていて本当におもしろいです。
他にも「糖尿病は 氷河期の生き残り?」とか「酒が飲めない遺伝子」「人類の歴史と高血圧」「老化のプログラミング」「出産はなぜ苦しい」などなど。
話は 難しいはずなのに とても読みやすい。共著のジョナサン・プリンスが クリントンが大統領だった時のスピーチライターだったと知って納得。読者の心を掴んでます。
お薦めです。
迷惑な進化~病気の遺伝子はどこから来たのか~
シャロン・モアレム
ジョナサン・プリンス
矢野真知子(訳)
NHK出版