魚鳥木、申すか?申さぬか?

ぎょ・ちょう・もく、申すか?申さぬか?
申す!申す! 魚⇒ニシキゴイ。鳥⇒ニホンキジ。木⇒制定無し、花は桜と菊

『臨湖亭奇譚』 倉橋由美子著⑤

2017年07月19日 | 読んだ本
『臨湖亭奇譚』 倉科由美子著④からの続き

演奏者の女性については、
正体を中々現さない仕草に関連性は見受けられるが、
「琵琶行」での表現は、落ちぶれてやつれ果て
世間のあちらこちらを渡り歩く自身の姿を
隠すものであり、「臨湖亭奇譚」では、
顕世(うつしよ)の存在ではなく、
幽世(かくりよ)の世界からの訪問者としての
夢幻の世界を表現している。

また、「琵琶行」では、女性の語った言葉を
聴くによって、ふいに自身の流浪の悲しみに襲われ、
苦しみを自覚することで、長句の歌を作って
彼女に贈り、この歌行を『琵琶の行』と命名するに
至る重要なものであるが、「臨湖亭奇譚」では、
女性自身からお酒を所望する言葉を発することで、
お酒に対して印象を深くするものであった。

「酒宴を通じた影響」については、「琵琶行」では、
酒宴に付属する、音楽が無いことを表現するための
道具でしかないが、「臨湖亭奇譚」では、
「陶酔」と言う、酒呑みの人の理想である、
一日中とろとろと夢と現実の境目を漂うみたいに
酔い続け歓を尽くす事を、
芸術的で夢幻能的な表現で表しているのである。

「Cocktail story酔郷譚」はジェンダーとか
セクシャリティのレベルを遥かに超え、
性を描きながら性にまったく囚われていない、
生の躍動感と死の官能性に満ちあふれ、
そこに酒の愉みを加えた大人の読み物に
仕上がっている、著者の本領が遺憾なく
発揮された芸術作品なのである。

                   以上。


参考文献・資料
発行人:若林繁男 
『KAWADE道の手帖 倉橋由美子』 
発行所:河出書房新社

著者:倉橋由美子
『よもつひらさか往還(講談社文庫)』 
発行所:講談社

著者:倉橋由美子『酔郷譚』 
発行所:河出書房新社

編集:明治大学中央図書館ギャラリー企画運営WG
第14回明治大学中央図書館企画展示 
明治大学特別功労賞受賞記念
倉橋由美子展 パンフレット

私家版 楽器事典 ホームページ
 ・ヴィーナ (Saraswati veena)
 ・ムリダンガム (Mridangam)

YouTube(ヴィーナとムリダンガムの演奏)

九鬼氏とは-kotobank

綾部の文化財を守る会ホームページ(綾部九鬼藩資料 - 綾部の文化財)



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『臨湖亭奇譚』 倉橋由美子著④ | トップ | 「中世神話」と民俗信仰のか... »

コメントを投稿

読んだ本」カテゴリの最新記事